【投稿日】 2022年10月19日 【最終更新日】 2022年10月27日

本来、お金の貸し借りは未来に遺恨を残す可能性があるためしないほうが良いとされていますが、人間関係上どうしても避けられないことがあるかも知れません。

お金を貸す側にとっては、相手がいくら信頼できる人であっても自分のお金が本当に帰ってくるのか不安になります。この場合、借用書や金銭消費貸借契約書などの法的に有効な書類を作成することが必要です。

お金の貸し借りにおいては、あらかじめ知っておかないと損してしまうこと、最悪の場合泣き寝入りとなってしまうことがあるので、そうならないようにぜひ本記事を熟読ください。

借用書、金銭消費貸借契約書について知ろう!

借用書は、お金を借りる側が貸す側に渡す文書です。

本来、お金の貸し借りをする場合は借用書ではなく金銭消費貸借契約書を交わすべきです。

そこで本章では金銭消費貸借契約書の詳細について解説します。

金銭消費貸借契約書とは?借用書にはデメリットがある

お金の貸し借りが起こる際に借用書ではなく金銭消費貸借契約書を交わすべき理由は、貸す側と借りる側の双方が同一の内容のものを所持できるためです。

借用書は、借りる側だけが署名し、貸す側が一部だけ持って終わりです。つまり借用書はなくしてしまう可能性、改ざんの可能性が高く、デメリットといえます。

金銭消費貸借契約書は、お金の貸し借りについて、金額や返済日、その方法についてなど細かく記載した上でお互いが捺印して作られます。

つまり金銭の貸し借りがあったことを事実としてはっきり残し、返済の方法などについても明らかにしているため、将来的に返済が行われる可能性を高めることができるのです。

口約束にも一定の効力はあるが、書面でなければ金銭授受の場合は法的効果がない

口約束で金銭の貸し借り、返済について約束することはできません。口約束は本来、諾性的消費貸借契約と呼ばれ、その名の通り契約として一定の効力がありますが、内容の客観的な確からしさは保証されません。

このため、民法(第587条の2)では金銭授受が行われる契約は書面を交わさなければ成立しないとされています。この場合の書面は借用書や金銭消費貸借契約書といった指定がされているわけではありません。双方の貸す、借りる石が確認できればメールでも契約が成立します。

借用書がないと借りた側の「返済義務」がなくなってしまう

たとえ家族や友人間でのお金の貸し借りにおいても、金銭消費貸借契約書、借用書のように書面で実態を残すべきです。

その理由は前段落のように、金銭のやり取りが証拠として残されていなければ借りたお金を返す義務である返済義務がなくなってしまうためです。

借用書がない場合、借りた側が「お金なんて借りていない」という態度を示した時点でその借金が初めから存在しなかったことになってしまいます。こういった状況では、トラブルは避けて通れません。

金銭消費貸借契約書の作り方!用語についても解説

本章では金銭トラブルを避けるための借用書の書き方について解説します。

効力は借用書よりも金銭消費貸借契約書の方が高いため、今回は金銭消費貸借契約書の書き方についての説明です。

金銭消費貸借契約書に書くべき項目について

金銭消費貸借契約書に記載すべき項目について解説します。

まず、項目をざっと並べると以下の通りになります。

①題名(タイトル)
②日付(借入日、契約書作成日)
③貸主の名前
④借主の名前、住所、印鑑
⑤金額
⑥返済方法(一括払い、分割払いのどちらか/分割払いの場合は支払明細表も添付)
⑦返済期日

  • 連帯保証人(記載は必須でなく、当事者同士の交渉による)
  • 利息(記載は必須でなく、当事者同士の交渉による)
  • 遅延損害金(記載は必須でなく、当事者同士の交渉による/記載されなくても効力は発生する)
  • 返済期限の喪失条件/利益喪失条項(記載は必須でなく、当事者同士の交渉による)
  • 裁判管轄

①〜⑦の7項目は最低限の記載項目です。この7項目を記載することで法的に有効な借用書、金銭消費貸借契約書となります。

以下からは、各項目の詳細な書き方について、および「連帯保証人」以下の複雑な用語について解説します。

題名(タイトル)

まず金銭消費貸借契約書の冒頭には必ず「金銭消費貸借契約書」と表記します。これは記載がない場合に、「本書は何かしらの金額を載せただけの領収書、預り証といった別の文書である」という、第三者にとって都合の良い解釈をさせる余地を残さないために必要です。

日付・金銭消費貸借契約書作成日

金銭消費貸借契約書には何らかの「日付」をいくつか記載する必要があります。

まず作成日ですが、これは「お金を借りる側」が実際に金銭を受け取った日の日付です。

これにより、当該日付にお金の受け渡しが実際にあったという証拠を残すことができます。

日付・返済期日

一方、リスト上では少し飛んで返済期日ですが、こちらは「実際にお金を相手に渡し、返す日」を記載します。つまり「20XX年XX月XX日」という形です。

「書面作成日から◯日後」「◯ヶ月後」「◯年以内」といった書き方は根拠を薄めてしまうためやめましょう。

返済日の合意がなかった場合でも、貸した側は相当の期間を決め、返済するように催促することができます。

返済方法

返済方法について特別な方法を取る場合、項目にどのように返すかを詳細に記載しましょう。例えば利息(後述)や分割方法についてです。

本欄の記載がなければ、返済方法は手渡しでお金を返すことになると理解されます。

連帯保証人

連帯保証人とは以下のような役割を持つ人のことです。

  • お金を借りた人が返済できなくなった際、その当人に変わり、借りた金額を返済する義務を負う人
  • 借りる側の人が、あらかじめ「返済能力に乏しい」と懸念される場合の担保になる人
  • 個人間で金銭消費貸借契約書を交わす場合、連帯保証人を立てることは(お互いが納得していれば)必須ではない
  • 個人間の金銭消費貸借契約書上で連帯保証人を立てる場合は、お互いの話し合いで決める
【注意】連帯保証人になる場合は注意しよう!

連帯保証人になる場合は注意しましょう。それは「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」「分別の利益」というような「債権者への対抗手段」を持たないためです。

したがって連帯保証人となってしまった瞬間に、いつ債権者から貸したお金の返済を求められてもおかしくない状況となってしまいます。連帯保証人は、請求に対しては断る手段を持っていません。

利息

お金の貸し借りには、貸した額に応じた手数料のようなお金を利息として支払わなければならないといったイメージがあります。

しかしながら民法では、貸し借りの証拠となる契約書上に「利息を付ける特約」が記載されていなければ、貸した側は利息を請求する権利を持たないと決められています。

もし利息を付けるのであれば、当該項目を書面に記載しなければなりません。その際、利息には以下のように貸金に応じた限度額があり、そちらを上回る利息はつけられません。

貸した金額 利息の上限
10万円未満 年20%まで
10万円~100万円未満 年18%まで
100万円以上 年15%まで

仮に利息の上限を越えた額を請求し、支払われた場合は利息制限法違反となります。出資法では、年109.5%以下の金利は出資法違反とはしていません。

超えた分の利息は、借りた側の請求や過払い金返還請求訴訟により取り戻すことができます。

遅延損害金

遅延損害金とは、以下のような特徴を持っています。

  • 借りた側の返済が遅れた場合に発生する損害金
  • 金銭消費貸借契約書への記載は必須ではない
  • 仮に書面に遅延損害金についての記載がなかった場合でも、貸した側が借りた側へ遅延損害金の請求をした場合は支払い義務(金銭消費貸借契約上かならず発生する)が生じる(※利息との大きな違い)
  • 遅延損害金の利息は記載がない場合、民法の規定に従う(法定利息は年3%、3年ごとに見直し)
  • 返済の遅延による損害が実際に発生していなければ上記見直しは起こらず、損害が生じた当時と現在における利息の変化はない
  • 金銭消費貸借契約書の作成時に取り決めた利息があれば、3年ごとの見直しが起こらず利息が変動しない

金銭消費貸借契約書に遅延損害金の利息を記載する場合は、利息制限法の規定に従います。

利息制限法における利息の規定は以下の表の通りで、上限を越える利息分は無効となります。

利息制限法では、個人間における遅延損害金の利息は【利息】の項目における率の1.46倍までとされています。

金額 利息の上限
10万円未満 年29.2%まで
10万円~100万円未満 年26.28%まで
100万円以上 年21.9%まで

期限の利益喪失条項

借りた側にとっての「期限の利益」とは、返済期限が来るまで借りたお金を返さなくても良いということ(毎月何日、毎年何月何日までに何円返す…など)、その期限が来た時に何らかの理由で返済ができない場合に、「期限の利益」が「喪失」した状態になることを意味します。

また、「期限の利益喪失条項」とは、以下のような意味を持ちます。

  • 借りた側が、お金の支払いを渋る、破産したりといった場合などに、貸した側から借りた側に対して「残った債務のすべてを一括して返済する求め」ができる以下のような条項
  • 借りた側が返済を怠った時(回数の規定なし、当事者同士の相談に基づく)
  • 借りた側における競売・破産・民事再生手続きの申し立てがあった場合
  • 借りた側に租税の滞納処分があった場合
  • 借りた側が貸した側に知らせず住所を移転した場合

期限の利益喪失条項とは、貸した側にとってお金の返済を保証してくれるという意味があります。

期限の利益喪失条項は、書面に残すことが必須ではありません。このため、遅延損害金とは異なり期限の利益喪失条項が契約書に記載されていなければ、返済の保証となる借りた側に対しての残金返済等の一括請求ができません。

仮に100万円の貸付について、毎月10万円ずつ返済する契約だった場合に返済がストップした時、書面に期限の利益喪失条項について記載がないと、貸した側ができることは返済されていない残金の一括請求ではなく、毎月の返済額10万円の請求のみです。

借用書や金銭消費貸借契約書を交わす際の注意点

本章では、借用書や金銭消費貸借契約書を交わした際に気をつけるべきことについて解説します。

【注意1】お金の貸し借りには時効がある

お金の貸し借りには時効があります。これは借用書の有無に関わらず10年と決まっており、借りた側が10年経っても返済しておらず、貸した側が返させるための行動を起こしていないと時効となってしまいます。

金銭消費貸借契約書の場合、債権者が金銭の返還を請求できることを知った日から5年間、あるいは10年間のいずれか早い時期が時効です。

時効の成立には、借りた側が「時効を迎えたため、お金を返す意思がない」と内容証明による手続きによって宣言(時効の援用)する必要があります。

この内容証明による手続きが終わらない限り、貸している側が返済を求めることにより時効を中断させられます。時効の中断が成立すれば、時効のための期間はまた初めに戻って進行することになります。

民法では、「請求、差押え・仮差押え、承認」により時効の中断ができるとされています。お金の返済を求める請求は、裁判を介して正式な手続きを踏む必要があるため注意してください。

この際にも、借用書など証拠となる書面が存在することで時効の中断を申し立てやすくなります。

【注意2】債務承認弁済契約書を使うという手段がある

債務承認弁済契約書とは、既にお金を貸していたり、返済を受けている途中でも金銭消費貸借契約書を作成するために用いられる手段です。

書面を交わしておらず借りている側がきちんとお金を返すかどうか不安な場合や、金銭消費貸借契約書を作成していてさらに内容を変えたものを作りたい時に作成されます。

効力としては金銭消費貸借契約書と同じ内容になります。

【注意3】借りる額が10,000円を超す場合は印紙税が発生

金銭消費貸借契約書や借用書は課税文書であるため、一万円以上のお金の貸し借りをする場合には収入印紙を貼り付けます。一万円以下の場合は収入印紙を貼らなくてもOKです。

仮に収入印紙が貼り付けられなかった場合でも法的効力を持つことはできますが、後から印紙税法に照らし合わせて脱税の疑いをかけられてしまう可能性があります(印紙税の過怠税額は納付金額の3倍)。また、家族からお金を借りると贈与税の対象となることもあります。

借入金額に応じて必要な印紙額の対応表は以下の通りです。

借入金の額 必要な収入印紙の額
1万円未満 0円
1万円以上〜10万円以下 200円
10万円超え50万円以下 400円
50万円超え100万円以下 1千円
100万円超え500万円以下 2千円
500万円超え1千万円以下 1万円
1千万円超え5千万円以下 2万円
5千万円超え1億円以下 6万円
1億円超え5億円以下 10万円
5億円超え10億円以下 20万円
10億円超え50億円以下 40万円
50億円超 60万円
契約金額の記載のないもの 200円

金銭消費貸借契約書の場合、収入印紙を貼る必要があるのは貸す側、借りる側双方が署名・押印した書面です(双方が一部ずつ所有するのであればどちらにも貼る必要がある)。印紙代の金額を支払う義務を持つのは貸す側、借りる側のどちらでも良いです。

【注意4】借用書は何に書いても効果がある

借用書は書き方の章で解説した最低限の項目が記載されていれば、例えルーズリーフや広告の裏に書いても法的効力を発揮します。

弁護士にも作成依頼可能で、相場は10000円前後、さらに郵送費や印刷日が請求されることもあります。ただ、記載項目さえ間違えなければ個人で作成したほうが圧倒的にコスト安です。

【注意5】書面の正本を用意する(書面を2つ作る)

公文書は原本(作成名義人によるオリジナル)、謄本(原本の内容を全てコピーしたもの)、正本と区別されます。正本とは、公証権限がある人が作成した原本の写しです。

お金を貸す側、借りる側それぞれが内容を把握できるように、借用書や金銭消費貸借契約書は原本の他に正本を作り、お互いで所有しておくと良いでしょう。

【注意6】直筆の署名と捺印を用意する

署名欄はお金を貸す側、借りる側の双方とも記載する必要がある項目です。そこで本当にその名前を持つ人であることを確かにし、申請の意思をはっきりさせるためにも直筆での署名と捺印をしましょう。

もし書面があるにも関わらずトラブルへと発展してしまった場合には、直筆での署名は筆跡鑑定の材料とすることができます。

捺印は自治体に届け出て登録された実印が良いです。認印では改ざんの可能性があるためです。

連帯保証人がいる場合、その人の直筆署名や捺印も必要です。

情報サイトなどで借用書のテンプレートをダウンロードして印刷する方法もありますが、本項目や借入金額、返済期日といった数字が関わる項目は直筆で記入することがおすすめです。その理由は、数字は改ざんしやすくかつ重要な事項であり、当該書類に偽装の可能性があると疑われてしまうこともあるためです。

【注意7】数字を漢数字で表記する

借用書や金銭消費貸借契約書に記載される金額などの数字は、漢数字の中でも画数の多い漢字(壱、萬……等)を利用することが多いです。

この理由は、アラビア数字の1や、普通の漢数字「一」などを用いてしまうと、上から線や点などを付け足してしまうことで内容を書き換える(例:「一」→上下に棒を書き加えて→「二」「三」への書き換え)ことが容易となってしまうためです。

また「壱萬円」と記載する場合、その文字列の前後に別な文字が書き加えられてしまう可能性もあるため、「『金』壱萬円『也』」として前後にあらかじめ予防策を張る方法も取り入れてみてください。

ほか改ざんを防ぐ方法として、あらかじめ決まった書体が用いられたり、印字された書面を用いた不動文字を使う方法もあります。

【注意8】確実にトラブルを防ぐなら公正証書を利用する

お金の貸し借りに関するトラブルを確実に回避したいのであれば、公正証書がベストな方法といえます。

公正証書は、法務大臣が任命する公証人が作成できる文書です。お金の貸し借りについての証拠となる書面において公正証書の効果は一番高くなります。

さらに、執行認諾文付公正証書として作成された公正証書があれば、裁判を省いてお金を取り立てる(債権者による強制執行)ことができるようになります。

さらに、できあがった公正証書の原本は公証役場に保管されることになるため、紛失や改ざんの恐れがなくなるといえます。もちろん貸し借りの当人たちには写しが交付され、もしなくしても再発行してもらえるので安心してください。

法的に有効な借用書を作るなら金銭消費貸借契約書が最適!

法的に有効な借用書はどのように作成すべきかについて解説しました。

もしあなたがお金を貸す側であり、貸したお金がきちんと返済されるかどうか不安な場合は、書面を法的に有効にするための最低限の項目について記載した借用書を作成すべきです。

また借用書よりも金銭消費貸借契約書の方が法的効力が高まります。ややこしい場合は本記事の項目をぜひ参考にしてみてください。最低限、「お金の貸し借りは口約束で取り決めをしてはならない」という意識をつけておきましょう。

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