会社にとって大きな損害となる業務上横領は、気づいた時からすぐに行動を起こし、様々な機関に相談する必要があります。しかし、横領を行った社員を法的に裁くことは重大な責任が伴うため、業務上横領が行われたことを確実に立証する証拠が必要です。

では、もし業務上横領の証拠がない場合にはどのようなことをやるべきなのか、注意点も交えて詳しく解説していきます。

「業務上横領の証拠がない」社員を法的に裁くためには証拠が不可欠

まず最初に、業務上横領を立証するための証拠がなぜ必要なのか、その理由についてみていきましょう。業務上横領の一般的な解決方法には、横領を行った社員を逮捕して貰う刑事としての解決と、会社の損害を賠償して貰う民事としての解決の二種類があります。この二つは法律に定められた規則に従って判断されるため、間違った情報で動くことは大変危険です。

では、具体的に「どのような機関に相談するのか」「どのような証拠が必要となるのか」について、詳しく解説していきましょう。

警察に被害届を受理して貰うために必要な証拠とは

業務上横領は、刑法第253条に当てはまる犯罪です。従って、業務上横領を行なった者には、10年以下の懲役が科せられます。

警察に相談する一番の目的は、業務上横領を行った社員の逮捕・起訴です。

犯人である社員を逮捕・起訴するためには、

  1. 警察へ被害届を提出
  2. 受理後に捜査開始
  3. 事実関係を確認して犯人逮捕

という流れなりますが、この時に必要となるのが業務上横領が行われたという証拠です。

被害を受けた会社側にとって、業務上横領は絶対に許されない犯罪です。しかし、一人の人間に対して刑罰が下されるということは、その人の人生を大きく揺るがすことになります。もし間違った情報で全く関係がない人を逮捕してしまった場合、逆にその人から訴えられたり、社会的責任を追及される結果にもなりかねません。

これは公的機関である警察も同様で、刑法という法律を適用して犯人を逮捕・起訴するのであれば、それに見合った責任を負うことになります。そのため、誤認逮捕とならないように慎重に調査し、確実な証拠が集まった時に初めて犯人を逮捕するのです。

ただし、被害届は必ず受理されるというわけではなく、まずは相談から始まるのが一般的です。この時、犯人が誰かわかっていなかったとしても、次のような証拠があれば相談をしやすくなります。

  • 辻褄が合わない帳簿の記載
  • 会社の金品が不自然になくなっているという証拠
  • 会社関係者からの密告を録音したデータ
  • 会社の銀行口座からお金が引き出された記帳記録
  • パソコン内にある改ざんされたデータ

相談実績を積み重ねることで警察にも認識されやすくなるというメリットもありますので、現段階で上記のような証拠がある場合には、警察へ出向いて相談してみるのも一つの方法です。

弁護士に依頼を受けて貰うために必要な証拠とは

業務上横領で受けた損害は、犯人に損害賠償請求をすることが出来ます。これは民事事件としての解決になり、多くの場合は会社側の代理人として弁護士に業務を依頼することになります。依頼された弁護士が行うのは、概ね以下のような内容です。

  • 犯人に対し損害賠償請求する
  • 犯人との示談交渉などを取りまとめ公正証書を作成する
  • 犯人が応じない場合には訴訟を起こす

この例からもうお判りかと思いますが、弁護士に依頼するためには訴える先である犯人が確実にわかっていることが前提となります。

ドラマなどの影響でよく誤解されるのですが、弁護士に捜査権はありません。業務を遂行する上で確認のために書類などを取り寄せる程度なら可能ですが、警察のように大々的な調査を行うことはないのです。

つまり、確実に犯人である証拠を掴んでから相談する必要があります。具体的な例としては、以下のようなものになります。

  • 会社の銀行口座から振り込まれた先が記載されている通帳
  • 金品を勝手に売却したという領収書などの証拠品
  • 取引先との契約を勝手に個人契約して利益を横取りしたという証拠
  • 預かっているお金を着服して失くしたと嘘をついた証拠や証言
  • 会社の金品を横領する現場を録画してある防犯カメラのデータなど

業務上横領で弁護士に相談する一番の目的は、受けた被害を金銭的に償って貰うことです。
そのためには訴える先である犯人がはっきりしていなければならず、疑いがあるというだけでは弁護士も動くことが出来ません。弁護士に依頼をする時には、はっきりとした証拠を集めてから相談するようにしましょう。

証拠集めのために探偵に依頼する選択もある

警察・弁護士のどちらにも必要となる確実な証拠ですが、業務上横領を行う社員の多くは必ずと言っていいほど証拠隠滅を試みます。最悪な場合は、証拠隠滅したまま行方不明となり、いざ訴えようと思った時には手遅れとなるケースも少なくありません。

業務上横領で受けた被害を確実に解決するためには、以下の項目が不可欠です。

  • 疑いのある社員に証拠隠滅の時間を与えない
  • 疑いのある社員を逃がさない
  • 確実な証拠をおさえてスムーズに話し合える準備を整える

しかし、実際にこれらの項目を実践しようと思っても、日常生活を送りながら経験のない人が行うのは不可能です。そこで、業務上横領を解決した人の多くが、まず探偵事務所に相談するという選択を行なっています。

探偵事務所に相談する最大のメリットは、「確実な証拠がない場合でも相談して業務を依頼することが出来る」という点です。確実性のある証拠を得てから動かなければならない警察や弁護士と異なり、探偵事務所の一番の目的は「確実な証拠を押さえること」にあります。

したがって、以下のような状況であっても相談を請け負い、必要な証拠集めや逃げた社員を探し出すことが可能となります。

下記の記事では、探偵が行う調査内容について更に詳しく解説しています。

もし現段階で警察にも弁護士にも相談することが難しいと感じた時には、すぐに探偵事務所に相談してみるようにしましょう。

業務上横領を立証する証拠集めを社内で行う時に注意するべきポイント

業務上横領を立証するために必要な証拠集めですが、証拠隠滅や疑いのある社員の逃走を防ぐためには、いくつか注意をしなければならないことがあります。では、具体的にどのようなことに注意するべきなのか、その内容について詳しくみていきましょう。

疑いのある社員に気づかれないようにする

業務上横領の証拠集めで一番重要なのは、疑いのある社員に気づかれないようにすることです。そのためには、調査をする側も横領に気づいてない状態を保持しなければなりません。疑いのある社員に気づかれないようにするためにはどのようにするべきか、具体的な例を挙げて解説していきます。

社内で大々的に調査を行わない

業務上横領の疑いが出た時に、焦るあまり社内で大々的な調査を行うことは危険な行為です。一人一人社員を呼び出しての聞き込み調査やゴミを漁って証拠を探すなどの行為は、理由を話していなくても社員全員が不安を抱き、犯人が逃走する可能性が高くなります。突然至る所に防犯カメラを仕掛ける行為も同様です。

可能な限り社内の人間に相談しない

業務上横領に気づいた人の多くは、誰かに相談したいという気持ちになります。しかし、横領が複数人で行われている場合、誰がどの社員と繋がっているかわかりません。たとえ口止めをしたとしても、友人や同僚・恋人などの気安さからうっかり疑いのある社員に話してしまう可能性がありますので、可能な限り社内の人間には相談しない方が懸命です。

冷静さを保ち普段通りに生活する

業務上横領に気づいた人の多くは、不安を抱えたことで普段とは違う行動を取ることがあります。

特に経営者や会社の上層部に所属している人が、いきなり普段は訪れない現場に現れたり、不自然に話しかけて個人的な情報を聞き出すなどの行為を行った場合、多くの社員が何か問題があるのではと詮索するようになります。業務上横領は会社にとって大きな問題ではありますが、表向きは冷静さを保って普段通りに仕事することが大切です。

疑いのある社員から目を離さないようにする

業務上横領を解決するためには、疑いのある社員を逃がさないようにしなければなりません。そのためには、疑いのある社員から目を離さず行動を把握することが重要です。仕事内容によっては難しいかも知れませんが、部署を変えたり複数人体制で必ず人の目がある状態を整えておき、証拠隠滅や逃走などといった行動を抑制することも視野に入れておきましょう。

証拠隠滅を防ぐために時間を置かない

業務上横領の証拠集めは時間との戦いです。横領の発生から時間を置いてしまうデメリットの具体例としては、次のようなものが挙げられます。

  • 隠し持っていた証拠を処分されてしまう。
  • 横領した金品を売却されて取り返すことが出来なくなってしまう。
  • 証言を取ろうにも記憶が薄れて曖昧になり信憑性が薄くなってしまう。
  • 調査の足がかりとなる情報が古くて役に立たなくなってしまう。
  • 証拠となるデータを消去されて復旧出来なくなってしまう。

また、証拠隠滅とまではいかなかったとしても、時間を置くことで結果的に証拠がなくなってしまうこともあります。例えば、業者用のゴミ箱に横領した金品を入れておいたところ、回収するまえにゴミと一緒に持ち去られてしまうなどのケースがこれに当たります。こうなってしまうと、更に時間を掛けて調査を行わなければなりません。場合によっては、証拠も疑いのある社員も確保出来ない可能性も出てくるのです。

業務上横領という重大な問題に対し、どうしても悩んでしまう経営者は少なくありません。特に昔ながらの人情味がある経営者の場合、疑いのある社員に対して温情を掛け、悩んでいるうちに時間が経ってしまうこともあります。

しかし、問題自体をはっきりさせて解決するためには、証拠隠滅を防いで事実を明らかにすることは不可欠です。証拠集めをする時には自身の持つ感情を一旦脇に置いておき、時間をおかずに証拠集めをするよう注意しましょう。

気づいた瞬間から小さな証拠集めを開始する

業務上横領に気がついたということは、そのきっかけとなる出来事が既にあるということです。そして、そのきっかけとなった出来事が、次の重要な証拠集めの足がかりになることがあります。具体例としては、次のような内容です。

  • 一緒に仕事をしていたAさんから、会社の情報を売ってお金を得ていることを自慢されたが横領なのではないか、という密告を受けた。
  • 社内のゴミを集めていたら、気になる内容の書類や領収書を発見した。
  • 先日会社から預かったお金を盗まれたというBさんが、同金額の高級時計を購入していた。
  • Cさんがレジに入った後に限ってレジの精算が合わないことが多い。
  • 防犯カメラの映像をチェックしていたら、Dさんが背中を向けて何かをゴソゴソしているのだけは確認出来たが、実際に横領したのかどうかは判別がつかない。

このような例は、証拠としては確証が持てないけれども疑いを持つには十分な内容です。そして、こうした情報を足がかりにして調査を行うことで、より確実な証拠を集めることが出来るのです。

ここで注意をして欲しいのが、これは必要ないだろうという自己判断をしないことです。例えば警察や探偵などに相談をした場合、こうした小さな証拠は多ければ多い程調査の方向性を決めやすくなるため、どんな情報が役に立つのかわからないのです。

特に業務上横領の確かな証拠が何もない時には、どれだけ小さな証拠でも必要となる時がありますので、詳細にメモを取ったり証言を録音するなどの行為を積み重ね、警察や探偵に相談するようにしましょう。

早い段階から探偵事務所に調査を依頼する

証拠の有る無しにかかわらず、業務上横領に気づいた経営者にとって早期解決は一番望ましい結果です。しかし、横領を立証出来るだけの証拠がなければ、警察も弁護士も動くことが出来ません。

証拠もなく、かといって何も出来ないことにも焦りを感じる場合、次のような流れで行動することも一つの方法です。

  1. 小さな証拠を集めて早い段階で探偵事務所に調査を依頼する。
  2. 調査内容を報告書にまとめて貰う。
  3. 疑いのある社員を逮捕・起訴する場合には、調査報告書を持って警察署に出向き被害届を提出する。
  4. 疑いのある社員に損害賠償請求や示談を申し入れる場合には、調査報告書を持って弁護士事務所に出向き訴訟や示談に向けた業務を依頼する。
  5. 疑いのある社員が逃げている場合には探偵に居場所を探して貰い、確実に訴えることが出来るようにする。

実はこうした流れで業務上横領を解決するケースは非常に多く、相談する時期が早ければ早い程良い結果に繋がっています。また、多くの探偵事務所では無料相談やアフターケアまで含めたアドバイスも行なっており、守秘義務が守られるため安心して話をすることが可能です。

証拠がない状態で次の行動を決めるのは、経営者にとって大きな負担となります。証拠隠滅や疑いのある社員を逃さないためにも、早い段階から探偵事務所に相談するようにしましょう。

まとめ

業務上横領の証拠がない時にやるべきことや注意点について、詳しく解説してきましたがいかがでしたでしょうか。最後にもう一度内容を振り返り、簡単にまとめてみましょう。

  • 業務上横領は刑法で定められた犯罪となるため、信憑性の高い証拠がなければ警察も弁護士も動くことが難しくなる。
  • 探偵事務所は信憑性の高い証拠を集めること自体が目的となるので、証拠が無い場合でも相談することが可能である。
  • 証拠集めをする時には、疑いがある社員に気づかれないよう十分に注意を払う。
  • 気づいた段階からどのような小さな証言・証拠であっても出来るだけ多く集めておく。
  • 証拠隠滅や疑いのある社員の逃亡を防ぐため、出来るだけ早い段階で探偵事務所に相談し、証拠を集めて警察や弁護士に連絡する。

業務上横領の証拠がない場合でも、何も出来ないわけではありません。自己判断をせずどのような些細な証拠・情報であってもしっかり集めておき、早い段階から探偵事務所に相談す
るよう心掛けてみましょう。