【投稿日】 2018年5月11日 【最終更新日】 2021年10月21日

会社のお金の横領や着服は決して他人事ではなく、もしかしたら自社でもこのような横領が日常的に行われているかもしれません。

  • 売り場のレジ担当者が、レジからお金を持ち出していた。
  • 社員が経費を水増し請求して、水増し分を着服していた。
  • 銀行で預かっていた顧客の個人資産を、行員が持ち逃げした。
  • 倉庫の棚卸をしたところ、在庫が帳簿と一致しないことが判明した。
  • 社員が自社商品を横流ししていた。

自社で横領が発生していることがわかったら、被害を最小限に抑えるためにも早期対応が肝心です。

そこで、社内で横領が発覚した場合の証拠収集や立証方法を詳しく解説すると同時に、社内不正を明らかにする際に利用したい探偵の社内調査について、詳しく解説します。

横領・着服・経理担当の不正など、社内不正に企業はどう立ち向かうべきか

横領への対応や対策について考える際、横領という行為そのものや、横領によって生じる企業リスクを正しく理解することが重要です。

ここからは、横領罪と横領がどのように経営上のリスクとなり得るかをご紹介したうえで、企業が取るべき対応について考えてみましょう。

横領(着服)とはどういう行為か

横領とは、他人の所有物を故意に自分の物とする行為を指し、刑法では横領罪、業務上横領罪、遺失物横領罪に分類されます。

今回は社内での横領に深く関係する横領罪と業務上横領罪に焦点を当てます。まずは横領行為がどのようなものかを知り、横領と区別がつきにくい窃盗罪との違いをおさえましょう。

刑法では、横領を以下のように定義しています。

●横領罪(刑法第252条第1項・第2項)

  • 1.自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する。
  • 2.自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。

●業務上横領罪(刑法第253条)
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。
「自己の占有する」とは、他人の物を預かり、管理している状態を指します。


一方で窃盗罪も「他人の所有物を(盗んで)自分の物として使う行為」に与えられる刑事罰ですが、横領と窃盗の大きな違いは「管理責任の有無」です。窃盗は「他人の所有物に管理責任を持たない人物」が故意に、かつ無断で会社の物品・金銭を盗んだ場合に適用されます。

●窃盗罪(刑法第235条)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

※出典:刑法

横領も窃盗も「他人の物を自分の物にする」という意味では似ています。そこで、横領罪と窃盗罪を明確に区別するために、以下の表でわかりやすく整理しました。

<横領罪と窃盗罪の違い>

説明 事例 管理責任
横領罪 会社から管理を委託されている金品を、故意に自分の物とする行為 経理担当者が会社の預金口座から現金を不正に引き出して、そのお金を私的な用途で使い込んだ。 有 ※経理担当者は会社のお金を管理する責任がある。
窃盗罪 他人が所有する金品を故意に盗み取る行為 営業担当者が会社の金庫から現金を盗み出して、私的な用途で使い込んだ。 無 ※営業担当者には会社のお金を管理する明確な責任がない。

横領(着服)によって企業が負う損失やリスク

横領などの不正による損失は、横領された金品などの経済的損失に加え、社会的信用問題などの間接的な損失があります。これら以外にも、横領を刑事告訴する際や、横領犯に損害賠償を請求する際は、訴訟に時間もかけなければなりません。

横領は発覚しなければ長期に渡って行われることが多いのが特徴です。帳簿で収支が合わなかったり、棚卸し時に在庫が合わなかったりした時に初めて発覚して、発見した時には金品の被害が膨らんでしまっているケースが多いのが問題とされています。

着服された物が会社のお金だった場合、着服されたお金はギャンブル、買い物、借金の返済などに使い込まれて、横領犯自身による弁済が不可能、という状況が多く見られます。


社内で横領が顕在化した際は会社が警察に通報、あるいは被害届を提出して、警察の捜査から犯人逮捕に至ります。

横領犯の逮捕はこれ以上の被害拡大こそ防げても、刑事罰には犯人からの弁済義務はありません。また、横領に対する公的な救済制度などもないため、被害を受けた企業は横領犯に対して損害賠償請求する以外に、弁済してもらう手段を持ちません。

これら以外にも、報道によって企業イメージが損なわれ、収益を上げる機会損失にも繋がります。また、横領で取引先企業に損失が発生した場合、取引の停止をも招きかねません。

社員の横領行為は企業にとって、金銭・時間的損失を与えるだけでなく、信用リスクも伴う重大インシデントなのです。

横領発見時や告訴・訴訟時に必要な「証拠力」

横領が発覚したら、企業は被害拡大を防ぐ対策や、横領犯を訴えるための準備など、早期対応が求められます。

そのためには、横領の事実確認を最優先で行わなければなりません。事実確認と同時に、横領の確固たる証拠も押さえるべきです。なぜなら、実態解明のプロセスで横領犯に事情聴取をする際に証拠が不十分だと、言い逃れや協力者との示し合わせの機会を与えてしまうからです。

また、捜査機関への被害届・告訴状の準備や、横領犯に対して損害賠償を請求する場合、横領の決定的な証拠が必要です。横領の疑いが浮上したり、横領が発覚したりした場合は、直ちに調査体制を整えましょう。

横領の証拠収集に利用したいのが、探偵事務所の社内調査です。

社内不正の調査実績や経験が豊富な探偵事務所に依頼すれば、横領犯に言い逃れの余地を与えない証拠固めが可能であるだけでなく、訴訟時の裁判資料としても証拠能力の高い事実を調査することができます。

業務上横領に役立つ探偵の社内調査の紹介

横領の疑いが浮上、あるいは横領が発覚した時、最初に行うべきことは実態把握です。横領の調査によって判明した事実は、告訴・訴訟や横領犯の懲戒処分の際の重要証拠となります。

横領を調査する際、社内外で調査を行う必要があります。ところが会社が社員・従業員の業務外の行動を追跡するのは、プライバシーの観点から困難であるため、探偵事務所の社内調査や素行調査を利用することをおすすめします。

探偵事務所なら横領犯の社外での動向でも、当事者達に知られることなく情報収集することができるので、横領の決定的な証拠を押さえることが可能なのです。

ここからは、横領の社内調査において、探偵事務所がどのような調査を行うかを見ていきましょう。

防犯カメラや監視カメラの設置

社内の防犯カメラや監視カメラは、横領犯の特定や横領の決定的瞬間の撮影に大変有効な手段です。一度設置して録画を開始すれば、定期的に映像を回収して分析するだけで良いので、利便性も優れています。

防犯カメラの設置における探偵の役割は2つあります。

  • 設置に適した場所の調査
  • 機材の選定と提案

●設置に適した場所の調査

証拠押さえが目的で設置する防犯カメラは、横領犯はもちろん一般の社員に気づかれるのは厳禁です。目立たない場所でありながら、効果的な撮影ポイントとなる場所に設置しなければなりません。

探偵なら社内をくまなく調査して、撮影ポイントとして過不足なく、なおかつカメラに気づかれにくい場所を提案することが可能です。

●機材の選定と提案

防犯カメラは撮影目的や機能に応じて様々な種類があり、専門家でないと最適な機材選びは難しいものです。探偵は多種多様な防犯カメラの中から、自社に合った機材選びをお手伝いできます。

なお、防犯カメラ設置時に自治体から設置費用の一部を助成して貰えることがあります。防犯カメラの助成金の詳細については、会社や事業所所在地の役所などにお問い合わせください。

横領犯の特定

防犯カメラや監視カメラの記録映像以外にも、横領犯を特定する方法があります。社員や関係者に聞き込み調査をすることで、社内の金銭や物品の不審な動きや、不審な人物の洗い出しが可能です。

聞き込み以外にも探偵に任せたいのが、インターネット上での情報収集です。インターネット上の掲示板やSNSでは顔や名前の見えないやり取りが可能であることから、横領犯が匿名で書き込みをしている可能性があります。

最近はウェブサイトやSNS上での情報収集を行う「インターネット調査」を行う探偵事務所も増えているので、探偵事務所を選ぶ際の目安にしても良いかもしれません。

横領犯の素行調査

横領犯の特定後、直ぐさま本人への事情聴取をすれば良いわけではありません。

事情聴取の前に書面や写真・映像で証拠を固めておかないと、横領犯に言い逃れの余地を与えてしまうからです。本人や関係者への事情聴取を行う前に、横領を立証しておく必要があります。

社内での証拠収集は、防犯カメラの映像分析や社内帳簿の精査などで対応できます。一方、横領犯の社外やプライベートでの行動となると、プライバシーや調査にかけられる時間といった制約を受け、難航しがちです。

探偵事務所の素行調査なら、横領犯の業務外の行動も追跡できるので、社外の素行調査は探偵に任せることをおすすめします。

探偵事務所の素行調査では、調査員が複数人でチームを組み、尾行と張り込みを中心に横領犯を徹底調査します。調査中に不正行為の決定的瞬間があれば撮影も行われますが、充実した機材や撮影技術を用いることで、揺るがしようのない証拠を押さえることができます。

探偵の素行調査によって得られる横領の証拠には、次のようなものがあります。

●尾行・張り込み

  • 社外での行動パターンの把握
  • 会社が把握していない人物との接触の割り出し

●撮影

  • ATMでの振込・引出の瞬間を撮影
  • 協力者との品物や現金のやり取りの瞬間を撮影

潜入調査

横領犯の社外での行動に不審な点が見当たらず、素行調査だけでは証拠が十分と言えない時は、探偵が社内に潜入して調査することがあります。これは「潜入調査」と呼ばれ、主に社内での聞き込み調査を主体としています。

潜入調査を行う場合、調査員は正体を隠して依頼先企業の従業員として潜入します。調査方法としては、横領犯に直接接触して情報収集する以外に、横領犯と交流がある人物から日頃の素行や風評などを聞き出します。

潜入調査は極秘裏に行われるのが望ましく、調査員は身分を隠して違う人物に扮しつつ、社内で不審に思われないよう細心の注意を払う必要があります。そのため、依頼人にとっても探偵事務所にとっても、ハイリスクな調査方法なのです。

その反面、横領犯に直接接触して情報収集できる点が潜入調査の最大のメリットであるため、社内の不正調査にしばしば用いられます。

社内不正の再発防止のために探偵ができること

横領などの社内不正における探偵事務所の主な役割は調査ですが、調査以外にも探偵事務所が依頼人に提供できる解決策があります。

それは、豊富な調査経験や調査実績に基づいた、不正の再発防止に役立つノウハウの提供です。

監視カメラやダミーカメラの設置アドバイス

探偵事務所は防犯・監視目的のカメラ設置時、どんなカメラをどこに設置したら良いかをアドバイスすることができます。

防犯カメラの目的は以下の2通りがありますが、探偵なら目的・効果別に最適な機材と設置方法の助言が可能です。

<防犯カメラの設置目的と効果>

  • 行動を監視するため → 今後の不正の抑止力となる
  • 記録を残すため → 不正の証拠映像になる

人材採用時の身辺調査の提案・実施

探偵事務所が提案できるもう1つの再発防止策が、「人材採用時の身辺調査」です。

身辺調査は採用した人物が信用に足るかを確認する目的で行われ、対象者の素行だけでなく、学歴や職歴に至るあらゆる情報を、聞き込み・張り込み・尾行・インターネット調査を駆使して徹底的に調査します。

調査で判明することは以下からもわかるように、対象者の個人情報とプライバシーに関する情報すべて、と言っても過言ではありません。

<身辺調査で調査する内容>

  • 氏名
  • 住所
  • 家族構成
  • 生活状況
  • 性格
  • 趣味
  • 学歴や経歴
  • 資産状況
  • 収入
  • 健康状態
  • 交友関係
  • 近隣住民や交友関係からの風評
  • 宗教や思想
  • 反社会的組織との関わり
  • 賞罰など

採用時に身辺調査を行った結果、前科があったり、過去に金銭トラブルを抱えていたり、勤務先で不祥事や問題を起こしていたりした場合は、不正リスクを回避するために採用の保留や内定取り消しもやむを得ません。逆に新入社員がクリーンな人物であると判明すれば、安心して採用できるというメリットがあります。

まとめ

今回は探偵事務所の社内調査が、不正の証拠収集や実態解明においていかに役立つかをご紹介しました。

社内で横領などの不正が発覚したら、不正を犯した本人への処分や刑事告訴・損害賠償請求訴訟の手続きに入る前に、物的証拠と状況証拠を固めておくことが大変重要です。

また、探偵は事が起こった後の調査だけでなく、不正の予防対策面からも依頼先企業に貢献することが可能です。ここでご紹介した内容をもとに、社内不正対策に探偵事務所の調査ノウハウを活用することを、是非検討してみてください。

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