【投稿日】 2020年2月22日 【最終更新日】 2021年10月21日
裁判を起こすのに、あるいは内容証明郵便を送るのに相手の住所がわからないという場合、どうすればいいのでしょうか。
訴える相手が会社の上司や同僚であっても、意外に住所がわからないということは多いはずです。最近では個人情報保護の観点から、会社も簡単に住所を教えてくれません。しかも最近ではインターネット経由で知り合った相手とのトラブルも多いです。
相手の住所が特定できなくても裁判は起こせるのか、相手の住所を特定するにはどんな方法があるのかなどを解説します。
SAT探偵事務所 京都本部の代表取締役社長。
浮気調査や人探しといった個人向けのメジャーな調査はもちろん、他所では受任できない難度の企業向けの調査(信用調査、与信調査、M&A時等におけるDD 等)や経営コンサルティング業務にも従事している。
民事訴訟(裁判)・内容証明郵便には、相手の現住所を特定することが必須
ここでいう裁判とは、有罪・無罪や量刑を決める刑事裁判ではなく、慰謝料請求などの民事裁判のことです。刑事裁判なら警察が捜査してくれますが、民事裁判では自分で相手を調査し、証拠を集めなくてはなりません。これは示談・民事調停でも同じです。
そして民事裁判を起こすのに、相手の住所の特定は必須です。
裁判を起こすにはまず相手に訴状を送達します。訴状には相手の住所・氏名・電話番号などの情報を記載しますし、相手が訴状を受け取らないと裁判を始められません。
つまり住民票や本籍地の住所ではなく、相手が実際に住んでいる場所の住所が必要です。そしてもちろん警察は、それを調べてくれません。
また裁判でなくても、示談やその他の法的手続きをとるために、内容証明郵便を送る場合でも同じです。相手がこちらの送った書面を受け取ったという確認が必要なので、送り先は相手の現住所でなくてはなりません。
トラブルの相手の顔や名前を知っていても、現住所はわからないというケースは意外にあります。
住所がわからない相手の例
- セクハラ・パワハラを行う上司や教師など
- 夫・妻の不倫相手
- 学校帰りや通りがかりのイタズラ
- 離婚裁判から逃げている配偶者
- 借金を返さないまま逃げられた
- ネット上での誹謗中傷
ではこういったケースで、どのように相手の居場所を特定すればいいのでしょうか。
「民事訴訟(裁判)・内容証明」相手の住所を自分で特定する方法
相手の名前や勤務先を知っていれば、自分で調べられるケースもあります。
相手が自分の配偶者や親族であるケース
相手が自分の親族であれば、役所で相手の住民票や戸籍を取り寄せることで少なくとも公的に登録されている住所がわかります。
しかし登録されている住所が現住所とは限りません。裁判沙汰になるようなトラブルから逃げるために、住所の変更届を出していない可能性は充分あります。とはいえ相手が普通に社会生活を送っているなら、住民票・戸籍の付表に記載された住所と現住所が一致する可能性は高いです。
それでもこの方法は、親族以外の相手にはほぼ使えません。個人が他人の住民票などを閲覧するには、それを必要とする充分な理由が必要だからです。
相手の尾行・聞き込みをする
相手の勤務先や学校、その他確実に立ち寄る場所がわかっていれば、尾行や聞き込みで現住所を特定することは不可能ではありません。しかし相手にばれると逆にこちらが訴えられることもある、極めてリスクの高い方法です。
素人が望んだ結果を得るのは難しいので、やめておくのが無難です。それよりはまだ、本人に直接聞く方がいいです。
「民事訴訟(裁判)・内容証明」相手の住所を弁護士に依頼して特定する方法
弁護士は、依頼を受けた案件に関することのみ職務権限で開示請求することができます。これは裁判を起こしたり内容証明を送ったりする際に、弁護士に依頼するメリットの1つです。
住民票・戸籍の職務上請求
訴える相手が親族でなくても、弁護士なら職務権限で住民票・戸籍の開示請求ができます。これを職務上請求といいます。
これなら閲覧制限がかかっていても請求は可能ですし、自分で行うより確実です。住民票・戸籍に記載されている住所に相手が住んでいれば、100%特定できます。
関連記事:お金を貸した相手に逃げられたら?債務者を探して居場所を特定する方法
参考リンク:戸籍法 第10条の2
電話番号などからの弁護士会照会
弁護士個人では住民票・戸籍の開示請求くらいしかできませんが、弁護士会を通せば様々な企業・団体から情報を集めることも可能です。弁護士会とは弁護士たちの団体で、自治体ごとなどで集まって運営しています。
弁護士会を通して現住所を取得できるケース
- 相手の勤務先に照会
- 携帯電話番号から携帯電話会社に照会
- 銀行口座から銀行に照会
- ナンバープレートから陸運局・軽自動車検査協会に照会
- 生命保険会社に照会
- 外国人の場合は入国管理局に照会
- 子供がいた場合は学校に照会
弁護士会照会のデメリット
- 弁護士会が弁護士会照会の必要性なしと判断すれば照会自体不可能
- 請求先(勤務先や携帯電話会社など)が回答を拒否するケースもある
- 弁護士への報酬とは別に弁護士会に手数料が必要(1件あたり1万円ほど)
確実に相手の住所がわかるか、手数料が必要かどうかなどはケースバイケースです。依頼した弁護士に相談してください。
「民事訴訟(裁判)・内容証明」相手の住所を探偵に依頼して特定する方法
探偵は調査のプロなので、弁護士とは異なる様々な方法で個人の現住所を特定できます。弁護士に依頼して住所特定できないケースなど、依頼人それぞれのケースに応じた対応ができるのも特徴です。
探偵にできる住所特定の方法
探偵による主な住所調査の方法
- 尾行:対象者の後をつける
- 情報調査:対象者のSNSなどから情報を集める
- 張り込み・聞き込み:対象者の行動範囲・交友関係を調査する
尾行、張り込み、聞き込みはプロの技術があってこそ成功する調査方法です。素人が望む結果を得るのはまず無理なので、解決を望むなら決してやらないでください。
探偵に依頼するメリット
弁護士に依頼すれば弁護士費用がかかるように、探偵に依頼すれば調査費用がかかります。しかしそれでもプロに依頼するメリットはあります。
現住所の特定を探偵に依頼する主なメリット
- プロの技術で確実に結果が得られる(住所が特定できる・その他の証拠もつかめる)
- 探偵のネットワークを駆使して広範囲の調査ができる
- 自分で調査に失敗し、警察沙汰などのトラブルに発展するのを避けられる
- 自分の時間や労力を割かずに済む(調査中も普通の生活を送れる)
- 示談や裁判に必要な証拠も同時に集められる
もちろんこれらのメリットは、真っ当な探偵に依頼した場合のことです。悪徳業者を選んでしまわないよう、以下の関連記事を参考に慎重に考えてください。
探偵の調査にかかる費用は?
おそらく探偵の調査費用は、依頼する前に気になるポイントでしょう。探偵の調査費用は人件費です。よって調査前に相手に関する情報が多いほど、調査に費やす時間や手間が軽減され、調査費用も安くつく傾向にあります。
例えば相手が会社の上司である、よく立ち寄る場所がわかっているなどのケースは、数回の尾行で相手の現住所を特定できる可能性が高いです。このようなケースはあまり時間がかからないので、それだけ費用も抑えられます。
あるいは本人のSNSに住所が書いてあるケースであれば、人件費をある程度削減できるので安くなります。逆に費用が高くなるのは、インターネット経由で知り合って相手のハンドルネームしかしらないケースや、相手がトラブルを恐れて逃げてしまったケースなどです。
しかし難しいケースでも、探偵なら相手の住所の特定に至る可能性は充分あります。できるだけ多くの情報をまとめた上で、探偵にご相談ください。
「住所不明」相手の住所を調べても、どうしてもわからないときの手段
弁護士や探偵でも相手の住所がわからないというケースは、ゼロではありません。ではそういった場合はどうすればいいのでしょうか。相手の住所がわからなくても裁判を起こす方法はあるのでしょうか。
訴状を勤務先に送付する
民事訴訟法第103条1項には、個人を訴える場合、訴状は原則的に相手の住所に送達しなくてはならないと定められていますが、実は例外があります。
前項に定める場所が知れないとき、又はその場所において送達をするのに支障があるときは、送達は、送達を受けるべき者が雇用、委任その他の法律上の行為に基づき就業する他人の住所等(以下「就業場所」という。)においてすることができる。送達を受けるべき者(次条第一項に規定する者を除く。)が就業場所において送達を受ける旨の申述をしたときも、同様とする。
引用元: 民事訴訟法103条2項
住所を充分に調査した上で特定できなかった場合は、訴状を相手の職場に送達することが認められています。充分に調べたかどうかは裁判所が判断するので、そのためには弁護士会請求や探偵への調査依頼などの実績が必要です。これは内容証明でも同じです。
何の調査もせずに突然相手の職場に送ろうとしても、裁判所は受け付けてくれません。その他にも本人限定受取郵便の手続きなどが必要なので、弁護士への依頼は基本的に必須です。
意思表示の公示送達を利用する
相手の住所、あるいは名前すらわからない場合には、意思表示の公示送達という制度を利用できます。これは相手方に訴状を提出する代わりに裁判所の掲示板に申立書を掲示することで、相手に意思表示が到達したとみなすものです。
意思表示の公示送達を行うには裁判所の審議を経なくてはなりませんし、そのためには相手の調査を充分に行ったと示すものが必要です。
この方法は離婚裁判など裁判所の判決さえ下ればいいケースには有効ですが、慰謝料などの支払いを請求するケースなどでは勝訴しても意味がありません。やはり本当に解決するには、相手の現住所の特定が必須です。
参考リンク:裁判所|意思表示の公示送達
相手の現住所がわからなければ民事訴訟(裁判)・調停は難しい
裁判や調停といった法的解決を目指すには、原則的に相手の所在地に訴状あるいは内容証明を送達しなくてはなりません。勤務先への送付や意思表示の公示送達などの方法もありますが、限られたケースを除いて、トラブルの根本的な解決にはなりません。
相手に慰謝料を支払わせる、損害賠償を請求するといった場合は、やはり相手の現住所の特定が必須ですし、確たる証拠も必要です。弁護士と探偵に依頼して、正しい方法で解決を目指してください。
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