【投稿日】 2022年8月9日 【最終更新日】 2022年9月4日

創業からすぐの段階における会社経営や、事業の継続にあたってはその都度多くの資金が必要となります。

しかしながら、一言に資金調達といっても何もないところからお金が調達できるわけがなく、自社にとって必要かつ有効な手段を見極めなければなりません。

資金調達の方法は大別して6種類あり、それぞれさらに額や審査面において差異がある内容に分かれています。

そこで今回は、経営者やマネジメント層ならばいざというときのために知っておきたい資金調達の方法について、メリットやデメリットを交えながら解説します。

生活費を切り崩して事業の運営資金を捻出するような事態を避けるためにもぜひ、自分に適した資金調達の方法を探してみてください。

資金調達が必要になるケースとは?

資金調達は新規事業を始める際に行いますが、資金調達の目的は、次のように様々です。

  • 会社を設立・創業するため
  • 会社を運転するため
  • 新しく取り扱う商品を調達するため
  • 新商品の生産/開発のため(設備、土地、建物、機械など)
  • 土木作業等の着手から実際に相手から入金されるまでの人件費・材料費のため
  • つなぎのため
  • 税金のため

内容によっては資金調達をせずとも、手形や掛け金で対応することも可能です。

特に創業時、創業後は人件費、仕入れ、設備投資などで費用がかかりがちです。

さらには突発的に顧客が倒産・破産したりしてしまうと「つなぎ」の資金が必要となる場面も現れます。

資金調達の6つの方法について、具体的なメリット・デメリットを交えて解説!

「実際の資金調達のためにはどんな方法を取るべきか?」について、メリットとデメリットも交えた上で解説します。

資金調達の方法を大きく分類すると以下のように3つに分かれます。

  • 出資(増資・自己資金)
  • 融資(銀行・金融機関からの借り入れ・補助金・助成金)
  • その他(クラウドファンディング、M&A、社債)

実際にはクラウドファンディングの手段の一つに融資と告示してる内容の調達方法があったりと区分が曖昧な部分もありますので、細かく見ていきましょう。

また、金融機関からの融資や借入など負債を増やすことをデッドファイナンス、株式により出資を得るエクイティファイナンス、有形・無形資産売却によるアセットファイナンスと呼ぶこともあります。

方法1:出資・増資・自己資金

出資とは外部からお金を提供してもらうことです。返さなくてよいものの、出資した人は経営権を持つことになり、その人に配当金という形で還元する義務も得ることになります。

自己資金を投入する形で起業時に出資する方法もメジャーです。自分のお金ではないため借入金でもなければ金利を考える必要もありません。使途も自由です。この自己資金として用意できる額が、その後の資金調達方法として何を選択すべきかに直結することが多くあります。

また、自己資金額は融資を受ける際の査定において融資額の上限を決めるためにも参照されることがあります。

株式上場している企業は、第三者割当増資など増資を公募する形で幅広く依頼できますが、起業したてであれば額は個人に左右されるもののエンジェル投資家、ベンチャーキャピタル、知人・友人・親族などに依頼するなどの方法が考えられます。

出資のメリットとデメリットは以下の通りです。

出資のメリット ・返済しなくていい
・自己負担なく、外部のお金に頼れる
出資のデメリット ・出資者は経営権を持つことになる。自分たちは自由に経営できなくなる可能性がある
・自己資金による出資には限界がある
・企業経営に係るビジョン、戦略が打ち出せていなければ出資者を満足させられない
・第三者割当増資の場合、経営権が株主に握られるだけでなく、収益に応じて配当金を支払わねばならない

方法2:融資(銀行・金融機関からの借り入れ・補助金・助成金)

融資は出資と違い、外部からお金を調達する方法でありつつ返済する義務を負うものです。

企業の場合、一般的には銀行・信用金庫から融資を受けることが多くなります。

銀行からの融資

銀行から直接資金を受ける融資はプロパー融資と呼ばれ、審査が必要になります。

銀行からの融資に必要な書類は以下の通りです。審査により格付けされ、金利・返済期間・返済方法も決まります。

  • 登記簿謄本
  • 印鑑証明書
  • 納税証明書
  • 決算書(損益計算書、貸借対照表) ※2-3期分を求められることも
  • 確定申告書
  • 資金繰り表
  • 事業計画書
  • 試算表
  • 借入状況一覧
  • 手持工事明細表(建設業の場合などに限る)
  • 納税証明書

銀行からはビジネスローンも受けられます。こちらは融資に比べると審査に必要な書類数が少ないため、資金供給が素早くなります。しかしながら金利が高くなるというデメリットもあります。

個人事業であれば、知人・親族間における借り入れという形で融資を受けることも考えられます。

ほか、商工会議所による推薦で受けられるマル経融資は、一年以上の事業実績が必要ですが融資方法の中では最も金利が低いことが特徴です。

日本政策金融公庫、自治体による融資・助成金

ほか、新創業融資制度がある日本政策金融公庫や地方自治体による無担保・無保証の融資もあります。自治体は「制度融資」を行っており、地元金融機関などと連携して低金利かつ長期の借入ができ、審査ハードルも低い内容となっていることが多いです。

日本政策金融公庫には「創業支援」「新事業育成支援」「海外展開支援」「ソーシャルビジネス支援」「事業再生支援」「新事業育成資金」「セーフティネット貸付」「新型コロナウイルス感染症特別貸付」といった融資が用意されています。

特に「新創業融資制度」は創業したての企業でも受けられる融資として知られています。

新創業融資制度を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。

創業要件 ・事業を新たに始める
・事業を始めてから、税務申告が2期分過ぎていない
雇用創出に関わる要件 ・雇用を新たに生む事業を始める
・工夫された技術・サービスを展開し多様なニーズを生む
雇用創出に関わる要件 ・創業時、創業に関わる資金総額の1/10を自分で確保できる
自己資金に関する要件 ・創業時、創業に関わる資金総額の1/10を自分で確保できる
資金の使い途 ・売上増加のあとに必要な資金として(次回転のための十分な資金が確保できていない場合。単なる黒字では展開できないことがあることも)
・季節資金/運転資金:創業資金や創業直後の設備投資や運転資金に
返済期間 ・当該融資制度における決められた期間内
金利 ・1.06%〜2.85%
融資上限(限度額) ・3,000万円(内、運転資金1500万円)
担保および保証人 ・(原則)不要

国や地方自治体による補助金・助成金としては創業補助金が有名です。助成限度額が300万円前後、経費の2/3までなど制約はありますが人件費や賃料、広告費などに利用できます。

ほか、ものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金は小規模な団体でも利用できる補助金として知られています。

補助金・助成金による融資は細かい手続きが必要です。場合によっては中小企業診断士の手を借りるべきかもしれません。雇用や市場の活性化など経済への貢献が目的ではあるものの、各種助成金は採択率が15~20%とされており、必ずしも受けられるわけではないことに注意が必要と言えます。

最後に、融資のメリットとデメリットは以下の通りです。

融資のメリット ・起業前後という早期から資金調達しやすい
・銀行は支店が多く、時間や場所にとらわれず融資を受けやすい
・銀行融資は限度額が大きく、金利が低い
・補助金や助成金は創業前後どちらの時期でも申請できる
・補助金や助成金は信用がなくても申請可能、返済不要
・行政が利子補給できるケースもある
融資のデメリット ・銀行の場合、審査などプロセスに時間がかかる(厳しい審査を通過すれば信用ある会社である証明ができるメリットあり)
・金利負担が発生する
・創業したての場合、借りられない機関もある
・個人間でのお金の貸し借りは、以後の信用問題に直結する
・補助金と助成金の申請には手続きが必要であり、内容が複雑である場合が多い
・各種申請は、中小企業診断士に依頼するコストがかかることも
・補助金と助成金は募集期間が定められている
・補助金や助成金はほぼ抽選状態であるため、受けられないことも
・補助金は後払い

方法3:クラウドファンディング

クラウドファンディングとは、主にインターネット上のサービスやプラットフォームを通じて複数名の出資者から資金を募る方法です。

主に寄付/購入型、融資型、投資型と区別されます。

寄付/購入型は、商品を買ってもらうという形で出資者から資金を集める方法で、返済義務がないことが特徴です。出資のリターンとなる特典が商品となっているケースが多く見られます。

融資型は、金融機関ではなく個人からの融資を幅広く募る方法です。信用がない状態でも募集でき、金利は高くなりがちという特徴があります。

出資型は、未公開株と引き換えに個人投資家から出資してもらう方法です。返済の必要がない部分が増資と似ています。

クラウドファンディングのメリットとデメリットは以下の通りです。

クラウドファンディングのメリット ・インターネットを介したデジタルプラットフォーム上で手続きが済ませられる(スマートフォンひとつあれば手続き可能なことも)
・複数名の出資者を対象にすることになるため、資金を集めやすい
・自己ビジネスのPR方法、見せ方で出資者を納得させられれば予想外の出資が集まる
クラウドファンディングのデメリット ・融資型の場合、銀行などを相手にした通常の融資よりも金利が高くなることもある
・必ずしも合計出資額が目標達成額に届くわけではない
・お金の使い道が、ある限定された内容にのみ可能となることがある

方法4:M&A(事業の譲渡・株式)

M&Aとは自己の事業を譲ったり売り払ったりしてしまうものですが、売却益により確実に資金が手に入る方法となっています。

例えばいくつかの部署が編成されており、多数の事業や企画を持っている場合、そのどれかを他者に売却するという手段が考えられます。

M&Aに選ばれる事業は、メインストリームではなかったり、今後の利益が望み薄であるものとされることが多くなります。もちろん買い手側にとっては、既に安定しており将来性のあるメインの事業が魅力に映るはずなので、交渉力が試されます。

事業や企業を売却したくない場合は出資における注意事項と同様、株式の設計が必要になります。株式のうち普通株式では持ち株数に応じて経営権が付与されるため、種類株式にあたる配当優先株式(配当金の配分が多くなる代わりに経営権が生じない)を発行することで対策するという方法があります。

M&Aのメリットとデメリットは以下の通りです。

M&Aのメリット ・現在必要としていない、将来性が見込めない事業でも意外と他社にとっては魅力的に映り売却できることがある
・手放した事業にかける今後一切のコストを削減できる
・やることは売却、譲渡なので調達できた資金には返済義務がない
M&Aのデメリット ・都合よく自社の事業に興味を持ってくれる企業がすぐ見つかるとは限らないため、売却までに時間を要する
・当該事業に関わる社内外のステークホルダーを納得させる必要がある
・有効な競業避止義務契約を交わした場合、売却側は譲渡済みビジネスと類似の事業ができない

方法5:社債の発行

社債とは借入金を受ける行為のひとつです。担保や保証人が必要な借入金、新株予約権付社債、普通社債などが挙げられます。

金融機関ではなく投資家に対し金銭の融資、借り入れを希望する企業が決められた額面の社債を発行し、買ってもらうことで資金調達します。社債のうち、新株予約権付社債や転換社債と言われるものはある期間内であれば株式に転換できるようになっています。

社債には返還期日である償還日が設定されますが、永久債であれば償還日が定められることはありません。

社債には、クーポンと呼ばれる金利を支払う義務が生じます。金利は市場の変動の影響を受けたり、利率が決まっていたりと場合により異なります。

社債を発行するメリットとデメリットは以下の通りです。

社債のメリット ・投資家さえ集められれば多くの相手から資金を調達できる
・投資家との交渉次第で返済・金利条件を有利に設定できる
・融資に失敗した企業が次に選択できる手段として有効
・大企業、知名度のある企業は投資家市場に向けて多くの社債を発行しやすく、資金が集まりやすい
社債のデメリット ・知名度のない中小企業は、私募債という社債発行方法しかできないことがある
・社債発行後に金利その他の返済条件を変える必要がある場合、全ての投資家に対して対処しなければならないため時間的コストがかかる
・金利によっては融資なども含めた他の資金調達方法のどれよりも金額的負担が高くなる可能性がある

方法6:その他の資金調達方法

本章では上記以外の資金調達方法、主に何かを売却する方法について紹介します。いずれもこれまでに挙げた方法よりは大きな調達額は望みづらくなりますが、どうしてもという場合に残された方法の一つとなります。

不動産売却

不動産売却とは、事業継続に差し支えない不動産を売却して資産にする方法です。不動産として社宅や保養所、有価証券が挙げられます。

商標権売却

商標権の売却とは、ブランドなど無形の資産の所有権を売却することです。

ファクタリング

ファクタリングとは請求書などを元に回収期限前の売掛金をファクタリング仲介業者、ファクタリングサービス企業に売却して、手数料が差し引かれた代金をもらい資金調達する方法です。

ファクタリングでは売掛先が審査の対象であるため、利用者は創業したて、赤字決算、税金滞納、債務超過状態でも問題ありません。

ファクタリングのメリットは入金タイミングを手早くすることです。デメリットは高額な手数料に当たってしまうと大した額が確保できないことです。

リースバック

リースバックとは不動産や設備、事務機器、車両などをリース会社へ売ってしまい、それらの物品をリース契約して引き続き使い続けるという方法です。

リース契約の代金が発生し続けることには注意が必要ですが、少額ながらすぐにまとまったお金が手に入ります。

流動資産担保融資保証制度

流動資産担保融資とは、流動資産である売掛債権・棚卸資産を担保として、金融機関から融資を受ける方法です。

保証限度額は2億円となっており、借入限度額は2億5千万円、保証割合は80%です。

「根保証」という、一定の借入限度額および期間を定め、当該範囲内で反復・継続する保証形式と、1回の借入ごとに保証する「個別保証」があります。

再就職手当

再就職手当とは、離職したサラリーマンなど雇用保険受給資格者が創業する場合などに受けることができる手当です。再就職という単語の意味には起業や創業も含まれています。

申請資格は前職の退職日から一年以内に起業することです。期間内であればいつでも受給可能です。起業日の翌日から一ヶ月以内に申請する必要があります。

ハローワークや社労士に問い合わせることで手続き可能です。自己都合退職の場合、待機期間満了後一ヶ月の経過を待って起業しなければ対象とならないことに注意が必要です。

クレジットカード

クレジットカードを利用して仕入れなどを行えば、支払い期日を先延ばしできるため、足元の資金を確保できるというメリットがあります。

クレジットカードのデメリットは、意図せずに使いすぎたり、年会費がかかったり、支払い方法によって手数料がかかること、近年では不正利用への対策も必要となるといった部分です。

自分にあった資金調達方法を精査しよう!出資やM&A、資産売却などによる資金調達についてはしっかりと事前調査を!

会社経営や事業運営を続ける上では、創業時を始めとして至るところで資金繰りに頭を悩ます場面に遭遇します。

そんな場合には資金調達をする必要があります。資金調達の方法は大別すると6つに分かれると解説しました。

融資やクラウドファンディングひとつとってみても、審査のハードルや限度額に差がある場合がほとんどです。

方法によっては、見過ごせない犠牲を払って資金に変える手段もあるため、自社に合う方法を慎重に精査し、過大・過小な結果をもたらさないように検討してみてください。

ただし、M&Aや第三者による出資、資産売却など、リスクが高い方法で資金調達を行う場合には、しっかりと相手先の個人、企業について素性や経歴、反社会的勢力とのつながりなどを精査しておかないと、思わぬ損失や詐欺被害に遭ってしまう可能性があります。

銀行からの借り入れやクラウドファンディング、自己資金による増資などは問題ありませんが、第三者から出資されたり、M&Aなどにより不動産や事業など資産を売却する場合など、素性の知れない相手が絡む場合や、こちら側の損失リスクや騙されるリスクが多少でも絡んでいる場合には、しっかりと相手先を調査してから行うようにしましょう。

探偵事務所SATでは、素性の知れない第三者へのM&Aによる資産売却や、出資元の個人、企業などに対する素性・信用調査を行っています。

「いい話だけれども、ちょっと怪しいな、リスクがあるな」と感じたら、まずはメール・お電話にてご相談ください。

警察OBに直接相談できる探偵事務所

受付時間/10:00~20:00

※LINE相談は友達登録をして送られてくるメッセージに返信することで行えます。