【投稿日】 2022年10月7日 【最終更新日】 2022年10月25日
金銭の貸し借りを行う場合、たとえどんなに仲の良い間柄であったとしても、必ず借用書を作成することをおすすめします。
口約束でのお金の貸し借りをする事で、予想外のトラブルに発展したり、お金自体が返ってこないということもあり得ます。
そういったトラブルを避ける為にも、借用書の書き方や注意点、その効力範囲などを知っておきましょう。
SAT探偵事務所 京都本部の代表取締役社長。
浮気調査や人探しといった個人向けのメジャーな調査はもちろん、他所では受任できない難度の企業向けの調査(信用調査、与信調査、M&A時等におけるDD 等)や経営コンサルティング業務にも従事している。
借用書とは?
借用書とは、お金の借り手と、お金の貸し手の間に生じた、お金の貸し借りを証明する書類です。
これを発行することで、返済約束の証明にもなります。
借用書を発行しなくてもお金の返済義務は生じますが、内容を文章として残しておくと、双方の認識のずれなどが起こりにくく、円滑に返済が行えるでしょう。
借用書には、当事者が作成できる私文書と、公的機関が作成する公文書があります。
借用書を作成するメリット
借用書を作成するメリットとして挙げられるのは、「トラブル回避ができる」「返済を証明できる」「裁判で証拠になる」という3点です。
一つひとつメリットについて詳しく見ていきましょう。
メリット1:トラブルを回避できる
借用書のない、口約束での金銭の貸し借りは、「貸した、借りてない」といった「言った、言わない」のトラブルになってしまったり、金額や返済期間が食い違ったりするというトラブルが起こってしまいやすくなります。
そのリスクを避ける為に、書面として約束を残しておく必要があります。
たとえ親しい仲だったとしても、トラブルになりかねないため、借用書の作成は必要です。
メリット2:返済を証明できる
借主の中には借りたお金を踏み倒そうとする人もいます。
借りてないと言い張り、返済を拒否されないようにするためにも、証明として借用書の作成は大切になってきます。
メリット3:裁判で証拠となる
借主がお金を返済しないなどで裁判に発展した場合、借主が貸主から金銭の貸し借りを行ったことを証明する必要があります。
口約束やメモ程度の文章では証拠にならないため、万が一に備えて借用書の発行をしておくのが良いでしょう。
借用書を作成するデメリット
借用書の作成はメリットが多い反面、デメリットもあります。主に、「人間関係の悪化」「法的強制力がない」の2点です。
デメリットの詳細を一つひとつ見ていきましょう。
デメリット1:人間関係が悪化する
企業などの間での借用書の発行は当たり前とされていますが、個人間での借用書の発行は一般的ではないのが現状です。
借用書を発行するといったら、「そんなに自分は信用されていないのか!」と思う友人もいるかもしれません。
そういった点で人間関係の悪化の可能性がある為、デメリットといえるでしょう。
デメリット2:法的強制力がない
借用書自体は貸し借りの証拠にはなりますが、借用書だけで取り立てや差し押さえは出来ません。
借用書は法的な強制力ではなく、裁判での証拠として有効であるというだけなので、間違えないように注意しましょう。
借用書の法的効力は?
借用書は裁判で、当事者間で金銭の貸し借りがあったことの証拠とすることができ、契約書と同じ効力があります。
ただし、それは借用書に記載漏れがなく、きちんと正しい書き方をされている時のみになります。もし、裁判などになった場合に有効に使用するためにも正しく、かつ記入漏れに注意する必要があります。
借用書の法的効力は、公文書と借用書で少し違いがある!
私文書である借用書は、正しい方法で書いていても偽造を疑われてしまうことがあります。公正証書として公文書にしていれば、より強力な証拠として扱われます。
公文書の場合、裁判を起こすことなく、いきなり強制執行を行うことができ、取り立てや差し押さえが可能です。
私文書の場合は、法的な強制力を持たないので、裁判を起こし、そこでの証拠として扱うという形になるので注意しましょう。
借用書の書き方
借用書に法的効力を持たせるためにも、借用書は正しく記入漏れのなく作成する必要があります。
実際に借用書とはどのように書けばよいのでしょうか。借用書を書くうえで基本となるのが、次の14つの項目です。
借用書の基本14項目
借用書は、主に次の14項目から成り立っています。
- 作成日付
- 収入印紙
- タイトル
- 貸主の氏名
- 借用金額
- 借主がお金を受け取った内容
- お金を受け取った日付
- 利息
- 遅延損害金
- 返済期限
- 返済方法
- 期限の利益喪失約款
- 借主の住所氏名押印
- 連帯保証人の住所氏名押印
これらに漏れがないように記入していく必要があります。
では、14項目一つひとつについて、どのようなことを記入すべきかを見ていきましょう。
【1】作成日付
作成日付には、借用書を作成した日にちを入れます。
年は元号でも西暦でも問題ありません。
【2】収入印紙
記載金額が1万円を超える場合には、収入印紙を貼らなければなりません。
金額が1万円未満であれば、収入印紙は必要ありません。
また、印紙を貼らなくても借用書自体は有効ですが、納付しなかった印紙税と、過怠税として、納付しなかった印紙税の2倍の金額(本来納付しなければいけない印紙税の3倍の金額)を納めなければならなかったり、場合によっては懲役刑や罰金刑を科せられることがあります。
印紙の貼り忘れなどには、十分注意しましょう。
【3】タイトル
文書がどういったものなのかを表すために、タイトルを記入しましょう。次のように書くのが一般的です。
- 借用書
- 借用証明
- 金銭借用証書
【4】貸主の氏名
貸主の氏名をはっきり書いておきましょう。
貸主がはっきりわかるようにするために、フルネームで「〇〇△△ 殿」と書きます。
【5】借用金額
借主が貸主から借りた金額を書きます。
「金〇〇円也」と書くのが一般的です。
数字は漢数字でも数字でも問題ないとされています。
【6】借主がお金を受け取った内容
借用書には、借主が貸主からお金を借り受けた内容について書かなければなりません。
借用書における内容の書き方としては、借主が貸主から、お金を借りたことが分かれば問題ありません。
わかりやすく、お金をきちんと受け取ったことがわかる内容にすることを心掛けましょう。
【7】お金を受け取った日付
借用書には、借主が貸主と金銭の貸し借りを行った日付も書く必要があります。
この日付は、お金の貸し借り契約の成立日、借主の借金返済義務の発生日、利息計算の初日といった意味も持つので、記載が必要になります。
【8】利息
借用書には、利息が付くのか、利息はどのくらいなのか、を書く必要があります。
利息の有無や金額は、双方の話し合いによって取り決められるものです。
利息を支払うことになった場合、どのくらいの金額を払うのか、元金に対してどの割合で利息が付くかも決定しなければなりません。
以前は貸主が高い利率を押し付け、借主の返済が難しくなり、そこからトラブルに発展するということもありました。
近年では「利息制限法」という法律により、貸主側の利率に制限が出来たため、以下の基準を超える利率は無効となります。
利息制限法 第1条
金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は,その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは,その超過部分について,無効とする。
① 元本の額が十万円未満の場合 年二割
② 元本の額が十万円以上百万円未満の場合 年一割八分
③ 元本の額が百万円以上の場合 年一割五分
引用元: 利息制限法 第1条
利息がない場合には「利息 無し」、利息がある場合には「利息 年○%」という書き方になります。
利息の取り決めがない場合には、自動的に無利息となります。
また、利率の取り決めがない場合には法定利率(2021/4/1〜2024/3/31:年3%)が採用されます。2024/3/31以降は3年ごとに法定利率が見直されます。
この法定利率で良ければ、利率をあえて記載する必要はありません。
【9】遅延損害金
もし、借金が期限内に返済されない場合、貸主は不利益を被ってしまいます。そのため、期限内に返済されない場合の遅延損害金についても記載しておく必要があります。
遅延損害金とは、期限どおり借金が返済されない場合に発生する損害賠償金のことを指します。
話し合いを行い、なしという事にも出来ますが、期限通りに返済してもらいたい場合には支払いの取り決めを行う必要があるでしょう。
書き方としては、利息と同じく、「遅延損害金 無し」、「遅延損害金 年○%」という形式で書きます。
【10】返済期限
いつまでに返済してもらうか確実にするため、「返済期限」というものも設けておく必要があります。
返済期限とは、元金と利息の返済を全て完了する年月日のことを指します。
返済期限の書き方は、「返済期限 令和〇年〇月〇日」という形式で書きましょう。
【11】返済方法
借りたお金をどのように返済するのかを記載するのも大事になってきます。
返済方法には、一括返済と、分割返済(「割賦返済」とも言われます)の2種類があります。
一括返済は、元金と利息を一括で返す方法で、分割返済(割賦返済)は、元金と利息を数回に分けて返す方法です。
返済方法を記載することで、借主の返済意識を持たせる意味合いも持ちます。
口座に振り込むのか、現金を持参するのかも決めておく必要があります。
【12】期限の利益喪失約款
借主の返済の遅れがひどい場合には、「期限の利益喪失約款」というものを設けておく必要があります。
期限の利益喪失約款というのは、返済を指定回数以上連続で怠った場合、すぐに残額を一括支払いしてもらうというものになります。
【13】借主の住所氏名押印
借主の身元を明らかにするために、住所・氏名を書いたうえで押印しましょう。
氏名だけにすると、「同姓同名の人間が借りた」という言い訳が通用してしまいます。住所を記載することで、確実にその人が借りたという証明になります。
住所、氏名共に、本人に書いてもらいましょう。これも、別の人間が書いたという言い逃れを防ぐためです。
押印には、実印を使用し、印鑑登録証明書をつけてもらえばもっと安心です。
【14】連帯保証人の住所氏名押印
連帯保証人とは、借主からお金が返済されない時に、代わりに債務を負う人のことです。
借金の連帯保証人をつければ、借主がお金を返さない時に、代わりに連帯保証人に返済を請求することが可能です。
連帯保証人が返済の求めに応じなければ、初めから連帯保証人の財産を差し押さえることも可能になるため、連帯保証人の住所、氏名を控えておきましょう。
借用書を作る上での注意点
裁判などで有利になる借用書ですが、書くうえで注意したいことがいくつかあります。
借用書の書き方に関する注意点は、「犯罪行為など非常識な内容を含めない」「不当に借主や貸主に不利な内容にしない」「制限行為能力者との契約をしない」の3点です。
これらを守らなかった場合、借用書は無効とされ、お金の貸し借り自体もあやふやな扱いになってしまうので要注意です。それぞれの注意点について、詳しく見ていきましょう。
注意点1:犯罪行為など非常識な内容を含めない
当たり前ですが、犯罪行為などを示唆する内容・または犯罪行為自体を促す内容を含めてはいけません。
例えば、「期限内に借金を返済出来なかった場合、他人からお金を奪いとってでも返済する」や「臓器を売って返済する」という内容は記載した時点で無効という扱いになります。
このような内容で契約した場合、公序良俗違反(民法第90条)に該当してしまいます。
注意点2:借主または貸主に著しく不利な内容にしない
お金の貸し借りをすると、貸主が必然的に優位になりやすく「お金を貸すんだから、こっちの言うことを聞いてほしい」という気持ちになるでしょう。
しかし、全ての行為について貸主の言うとおりにするというような、借主にとって一方的に不利な文言を入れてしまうと、借用書自体が無効となってしまうため、書かないようにしましょう。
注意点3:制限行為能力者との契約をしない
制限行為能力者とは、法律行為を制限されている人のことを指します。
該当するのは次のような人です。
- 未成年者:成人していない人
- 成年被後見人:成人しているが、加齢や認知症、その他精神疾患などによって、十分な判断能力がないと判断された人
- 被保佐人:加齢や認知症、その他精神疾患などによって、一定の法律行為をする場合に、保佐人のサポートが必要と判断された人
- 被補助人:加齢や認知症、その他精神疾患などにより、補助人の補助が必要と判断された人
制限行為能力者との間で行われた金銭の貸し借りは、原則無効となります。
制限行為能力者とやり取りする場合には、成年後見人、保佐人、補助人いずれかの同意が必要不可欠です。
借用書を発行する前に、相手が制限行為能力者ではないか、確認しましょう。
どんな場合でも金銭の貸し借りの際に借用書の発行は必須!
どれだけ親しい間柄であっても、お金の貸し借りをする場合には借用書の発行をしておきましょう。
借用書は、双方の認識のずれを防ぎ、トラブルを防止する役割があります。
もしお金が返ってこなくなった場合には、証拠として有力なものになります。
借用書の発行自体は難しくなく、個人での作成も可能です。法的効力が強いものを求める場合には、裁判なしで返済を求められる、法的強制力を持つ公文書を作成しましょう。
お金を貸した相手に逃げられた、借金を踏み倒された場合には、探偵事務所SATまで!
いくら借用書を発行していたとしても、お金を貸した相手に逃げられてしまったり、借金を踏み倒されたりしてしまうことがあります。
そんな時には、裁判を起こすのが有効ですが、お金はない相手から回収することはできません。たとえ裁判に勝って強制執行を行ったとしても、相手側に借金を返済できるだけの資産が無い場合には、お金を回収することができません。
そのため、まずは裁判を起こす前に債務者がどこにいるのか、所在を確認し、資産調査を行うことが重要です。
また、こういった債権回収はスピード勝負です。相手が返済逃れのために資産を隠してしまう可能性も十分考えられます。
債務者からの連絡が途絶え、期限の利益を喪失しても一括返済などがされない場合などには、相手が財産を隠す前に所在をつきとめ、資産調査を行っておく必要があります。
資産調査は弁護士でも可能ですが、こういった隠し財産の有無などを調査ができるのは、探偵だけです。
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債権回収は時間が経つにつれて、調査が難しくなります。お金を貸した相手に逃げられてしまった、借金を踏み倒されたと思ったら、まずはメールやお電話にてご相談ください。
※探偵は調査が仕事になるので、債務者の所在調査や資産調査、隠し財産の調査などしか行えません。債権回収自体は行えませんのでご注意ください。
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