【投稿日】 2022年7月28日 【最終更新日】 2022年8月26日

M&Aにおける企業のデューデリジェンスとは、売り手企業の事業活動やそれらに関わるリスクの調査をすることを意味します。

こうしたデューデリジェンスは、いくつもの種類に分かれており、それによって依頼先が変わります。

デューデリジェンスをコンサルティングファームに依頼する場合、そのコンサルティングファームによって、依頼できる内容や費用相場はかなり変わってくると言えるでしょう。

そこで本記事では、デューデリジェンスの種類と依頼先、デューデリジェンスを依頼できるコンサルティングファームとその費用相場、コンサルティングファームの自社に合った選び方を解説していきます。

デューデリジェンスの種類と依頼先

デューデリジェンスの代表的なものは、以下の9種類です。

まずは、それぞれについて、概要と主な依頼先を見ていきます。

財務デューデリジェンス

対象企業の財務・会計情報に関する調査です。

対象企業の決算書その他の財務・会計に関する情報などが適正か、内部統制のシステムが適切に構築されているか、それらに関するリスクがないか、などについて調査します。

財務デューデリジェンスは、数々のデューデリジェンスの中でも主流になるもので、コンサルティングファームに依頼する際も、この調査が主になります。

ビジネスデューデリジェンス

対象企業のビジネスに関する調査です。

ビジネスの仕組みや強み・弱み、ビジネスの機会、脅威、経営管理の状況などの分析を通じて、対象企業とその企業を取り巻く内外の状況について詳細に調査を行います。

事業計画の検討を中心として、事業の将来性やシナジーについても調査するものであり、主に戦略系コンサルティングファームが得意とする調査です。

人事・労務デューデリジェンス

対象企業の人事や労務に関する調査です。

就業規則や給与規定、退職金規定等の制度の整備状況や、運用状況について、詳細な調査を行います。

主に社会保険労務士等が調査にあたります。

法務デューデリジェンス

対象企業の法務に関する調査です。

契約や取引行為に著しく不利なものはないか、法的に遵守され、適切に実施されているかどうか、などを調査します。

組織が適切に構築され、運営されているか、株式が適切に所有されているか、などについても調査するものです。

主に弁護士による調査になります。

税務デューデリジェンス

対象企業の税務に関する調査です。

法人税や消費税等の税金が、適正に申告納税されているかを調査し、行っている取引に、税務上のリスクがないかを調査します。

税理士が請け負うことが多い調査です。

不動産デューデリジェンス

対象企業が所有している不動産に関する調査です。

土地や建物、設備などの状況を調査する物理的調査、権利関係や賃貸契約、占有関係等を調査する法的調査、市場分析や不動産経営について調査する経済的調査の3つの調査項目があります。

ITデューデリジェンス

対象企業が利用(または構築)しているITシステムに関する調査です。

情報システムの構築状況や、組織・管理・業務フローなどを評価して、その後の運用やシステム統合などを行う上で、重要な項目について調査します。

IT系コンサルティングファームが得意とする調査です。

知的財産デューデリジェンス

対象企業が所有している知的財産に関する調査です。

特許権、工場所有権、意匠権、著作権などの無形の知的財産について、その所有権が実際に対象企業に存在しているか、その価値はどれくらいか、などを調査します。

弁理士等が調査にあたります。

環境デューデリジェンス

対象企業を取り巻く環境問題に関する調査です。

所有している工場や研究開発施設、及びその跡地などが、従業員等の人員や環境に負荷をかける状況になっていないか、また、そうした問題を発生するリスクがどれくらいあるか、などを調査します。

デューデリジェンスが依頼できるコンサルティングファーム

デューデリジェンスには、主に9種類ありましたが、これらのうち、どのデューデリジェンスを依頼できるかは、それぞれのコンサルティングファームによって違います。

デューデリジェンスを依頼できるコンサルティングファームは、以下の7つです。

  1. 戦略コンサルティングファーム
  2. 総合系コンサルティングファーム
  3. IT系コンサルティングファーム
  4. 財務アドバイザリー系コンサルティングファーム
  5. 組織・人事系コンサルティングファーム
  6. 日系・国内独立系コンサルティングファーム
  7. 業務・業界特化系コンサルティングファーム

ここでは、一つひとつについて見ていきます。

①戦略コンサルティングファーム

主に外資系戦略コンサルティングファームが担うことの多いデューデリジェンスは、「ビジネスデューデリジェンス」がメインです。

戦略コンサルティングファームは、買収もしくは売却を検討している事業の成長性・競合環境・事業計画分析(主に損益計算書を中心にトップラインを検討)・市場でのポジショニング等をゼロベースで案件に応じて仮説を作成し、綿密なリサーチと分析を経て、レポートを作成します。

ビジネスデューデリジェンスでは、買収を検討する企業の属する業界の成長可能性はどうか、将来的な事業の動向はどうか、競合環境を勘案して対象企業の事業計画の妥当性はどうか、という点を総合的に検討するところがポイントです。

②総合系コンサルティングファーム

総合系コンサルティングファームは、元々は旧会計系ファームが主体となっており、デューデリジェンスの全てを担当することができます。

専属の公認会計士や弁護士を抱えており、M&Aにおけるデューデリジェンスの経験や実績も豊富なところが多いです。

全ての専門家が揃っているため、最短5営業日という短期納品が可能で、デューデリジェンス以外のM&Aアドバイザリーにも対応しています。

それぞれ別の専門家に依頼するよりも安価で済むというメリットもあります。

また、多くのファームでは、他メンバーファームやグローバルオフィスとの連携により、1ファームでは成し得ないプロジェクトを協働できるのが強みです。

③IT系コンサルティングファーム

IT系コンサルティングファームは、独自の強みを生かして、大企業だけでなく、中堅~中小・ベンチャー企業へのIT戦略策定や業務改革支援等、比較的上流フェーズのコンサルティングを手がけており、ITデューデリジェンスに対応しています。

④財務アドバイザリー系コンサルティングファーム

財務アドバイザリー系コンサルティングファームは、M&Aアドバイザリー、財務を中心としたデューデリジェンス、バリュエーション、フォレンジックなどのサービスを展開しています。

M&A関連の業務に関しては、クロスボーダー案件が多くなってきており、いわゆるFAS系コンサルティングファームが活躍しています。

⑤組織・人事系コンサルティングファーム

企業の組織ビジョン・人事戦略の策定から人事制度構築・導入等、各種人事に関する問題解決を手掛けており、人事・労務デューデリジェンスに対応しています。

有名ファームにおいては外資系が多いですが、国内においても、日本独特の人事風土を理解したファームも多く、大手企業を中心に活動しています。

⑥日系・国内独立系コンサルティングファーム

戦後、高度経済成長をきっかけに設立されたファームが多く、主に中小企業を対象としたコンサルティング業務を軸としています。

全国各地にオフィスを構えるファームが多く、地域に特化したデューデリジェンスや、小規模店舗から千人規模の企業まで、多種多様なコンサルティングを手掛けています。

⑦業務・業界特化系コンサルティングファーム

激化するグローバル競争への対応を求められる業界において、多種多様な業界・業種に特化した専門家プロフェッショナルファームが登場しています。

業界特有の知見やノウハウが大きな武器であり、より深く入り込んだコンサルティングを提供できることが強みです。

コンサルティングファームの依頼費用相場

前項で紹介したコンサルティングファームは、総合系コンサルティングファーム以外、デューデリジェンスの種類ごとに費用がかかることが多いです。

そこでこの項では、主にコンサルティングファームが担う3つのデューデリジェンス(ビジネスデューデリジェンス、財務デューデリジェンス、人事・労務デューデリジェンス)のそれぞれの費用相場と、総合系コンサルティングファームの複数のデューデリジェンスの費用相場を見ていきます。

ビジネスデューデリジェンスの依頼費用相場

ビジネスデューデリジェンスの主な調査項目は、企業概要や事業内容、財務内容、過去の大規模なリストラや大型訴訟歴、新製品や他社との業務提携等です。

主な委託先は、戦略コンサルティングファーム、リサーチファーム、会計系ファームとなります。

費用相場は、それぞれ委託先によって得意分野や費用感や力量などが違ってきますし、またどこまでのデューデリジェンスを行うかでも違ってきますが、中小企業に対するデューデリジェンスであれば、数十万円~数百万円程度、大手企業や海外企業に対するデューデリジェンスであれば、数百万円~数千万円程度かかると言われています。

財務デューデリジェンスの依頼費用相場

財務デューデリジェンスの主な調査項目は、買収・合併先企業の財務諸表です。

財務デューデリジェンスの委託先は、大手コンサルティングファーム、元会計系の総合系コンサルティングファーム、監査法人などになります。

費用相場は、大手コンサルティングファームや監査法人系の専門家に依頼するほど高く、中小になればなるほど安くなり、大手に依頼した場合で500万円以上、中小に依頼した場合で100万円以上が一般的です。

人事・労務デューデリジェンスの依頼費用相場

人事・労務デューデリジェンスは、主に買収・合併先企業の人事や労務など「人」に関して、ビジネス・財務・法務の3つの面から調査していきます。

そのため、財務デューデリジェンス、法務デューデリジェンス、ビジネスデューデリジェンスでそれぞれ人事・労務デューデリジェンスの財務面、法務面、ビジネス面を一緒に行うケースもあります。

費用相場は、財務・法務・ビジネスデューデリジェンスと一緒に行う場合はそこに加算、独自で行う場合は、大手コンサルティングファームで数百万円、中小で100万円程度です。

複数のデューデリジェンスの依頼費用相場

総合系コンサルティングファームでは、複数のデューデリジェンスを一括で請け負う場合もあります。

その場合は、複数のデューデリジェンスで一括精算になるところもあります。

費用相場は、財務・税務デューデリジェンスで80万円以上、財務・税務・法務デューデリジェンスで150万円以上、財務・税務・労務デューデリジェンスで120万円以上などとなっているようです。

コンサルティングファームの自社に合った選び方

コンサルティングファームに依頼する内容と費用相場がわかったところで、どのようなコンサルティングファームが自社に合ったところなのか、それを選ぶ基準を見ていきましょう。

基準は以下の6つです。

  • 基準1:自社と同規模・同業種のM&Aの実績が豊富かどうか
  • 基準2:M&Aに精通した知識がある専門家がいるか
  • 基準3:コンサルティングファームの強みが自社の求めるものと合っているか
  • 基準4:M&Aの買収価格とコンサルティングファームへの報酬とのバランス
  • 基準5:アドバイザーへの信頼感
  • 基準6:デューデリジェンスを一つの会社にまとめたいかどうか

それぞれ重要ですので、詳しく見ていきましょう。

基準1:自社と同規模・同業種のM&Aの実績が豊富かどうか

依頼するコンサルティングファームが、どのようなM&A(デューデリジェンス)の実績を持っているかは、まず確認すべき点です。

その際、どういう規模や業種のM&Aを取り扱った経験があるのかも重要です。

M&Aの実績が豊富でも、自社と全然違う業種だったり、規模が合わなかったりすれば、それは自社にとっては実績とはなりません。

買収・合併先の企業と同業種或いは似た業種、そして同規模のM&Aの経験があれば、それは信頼できる実績となるでしょう。

また、コンサルティングファームの規模によっては、大企業を中心にサポートしているところ、もしくは中小企業をメインの顧客としているところも見られます。

この場合、自社と異なる規模のM&Aを専門としている業者には、サポートを断られてしまうかもしれません。

さらに、業界や業種によって、デューデリジェンスの際に押さえるべきポイントも違います。

したがって、自社と同じ業種に豊富なコネクションやネットワークがあり、経験もあるコンサルティングファームならば、注意すべき点により気づきやすく、押さえるべき点はきちんと押さえるなど、より手厚いサポートが受けられるため、安心して任せられるでしょう。

基準2:M&Aに精通した知識がある専門家がいるか

コンサルティングファームは、M&A以外の案件も取り扱っています。

したがって、そのコンサルティングファームに、M&Aに精通した知識のある専門家がいるかどうかは、必ず確認しておく必要があります。

M&Aに関する法規制や税制は、度々改正されており、最新の法規制・税制を専門家が正確に把握しているとは限りません。

また、業界のM&A動向も常に変動しているため、この点を理解しているかどうかも重要なポイントです。

そのため、コンサルティングファームを選ぶ際は、M&Aにどれほど精通した知識のある専門家がいるかということをチェックしておきましょう。

基準3:コンサルティングファームの強みが自社の求めるものと合っているか

コンサルティングファームには、それぞれ強みや得意分野があります。

大手のコンサルティングファームであれば、大規模な案件や海外企業との案件などに豊富な実績があるでしょうし、中小のコンサルティングファームであれば、小規模な案件の実績が豊富でしょう。

また、財務デューデリジェンスに強いところもあれば、ITデューデリジェンスに強いところもあります。

自社が、どのようなデューデリジェンスを優先したいか、或いは重要視したいかということが、そのコンサルティングファームの強みと合っているかどうかを確認しましょう。

もちろんその際、先に述べたように、自社と同じ業種・領域に強みを持っているかどうかも、同時に確認すると良いでしょう。

基準4:M&Aの買収価格とコンサルティングファームへの報酬とのバランス

M&Aの買収価格が安い場合、コンサルティングファームに報酬を支払ったら、ほぼ倍の価格になってしまった、というようなことも有り得ない話ではありません。

逆に、M&Aの規模が大きければ、その分コンサルティングファームへの報酬も高くなり、買収価格が一気に膨らんでしまいます。

デューデリジェンス費用は、大企業には痛くない費用でも、中小企業にとってはかなり痛い出費になってしまうこともあるため、自社のM&Aの買収価格と、コンサルティングファームに支払う報酬のバランスを考えて、依頼するコンサルティングファームの規模や、デューデリジェンスの内容を決めた方が良いでしょう。

基準5:アドバイザーへの信頼感

コンサルティングファームとしてはM&Aの豊富な実績があっても、担当するアドバイザーに経験があるとは限りません。

例えば、大手のコンサルティングファームは、多数のアドバイザーを抱えています。

しかし、若手のアドバイザーは営業経験しかなく、リーダーのもとで補佐的な役割をしていても、それが経験となっているとは言えない場合もあり、適切なアドバイスができるとは限らないのです。

そのため、担当するアドバイザー本人に、どのような経験があるのかを確認する必要があります。

M&Aアドバイザーにも得意・不得意があり、中には知ったかぶりやできる振りをする人もいるので、注意が必要です。

また、経験以外の人柄についてもよく見極めるようにしましょう。

M&Aは会社の今後に関わる重要な場面になり得るため、経営者の今後の経営計画や、抱えている苦悩なども話せる相手であるかどうかは重要です。

誠実な態度で話を聞いてくれ、自社の利益を最優先に考えてくれるようなアドバイザーであれば、信頼して任せられます。

人対人の相性もありますので、必ず実際に担当するアドバイザーと対面で会って話したうえで、サポートを依頼すると良いでしょう。

基準6:デューデリジェンスを一つの会社にまとめたいかどうか

最後に、コンサルティングファームを選ぶ一つの基準になるのが、デューデリジェンスを依頼する先を一つにまとめたいかどうかです。

それぞれのデューデリジェンスを個別の専門家に依頼したいのであれば、ビジネスデューデリジェンスのみを戦略コンサルティングファームに任せて、法務デューデリジェンスは弁護士、税務デューデリジェンスは税理士に任せるなどの方法があります。

一方、同じところに一貫して任せたいというのであれば、総合系コンサルティングファームに依頼するのが良いでしょう。

それぞれの専門家に依頼するメリットは、専門性の高さにありますが、個別に依頼するとなると、費用がかさむ恐れがあります。

それに対して、総合系コンサルティングファームであれば、まとめて精算してくれるので、比較的安価になりやすいというメリットがあるでしょう。

コンサルティングファームの実績や得意分野を見極めることが成功の鍵!

コンサルティングファームにデューデリジェンスを依頼する場合の、依頼できるコンサルティングファームとその費用相場、依頼するコンサルティングファームの選び方を解説してきました。

コンサルティングファームは多数ありますが、その中で、いかに自社の求める規模や目的に合ったコンサルティングファームを選べるかということが重要です。

コンサルティングファームはそれぞれ取り扱っている規模や得意とする領域が異なるため、自社と同規模・同業種の実績が豊富かどうか、という点と、そのコンサルティングファームの得意分野が、自社の求めるデューデリジェンスの目的や重要視したい分野と合致しているかどうか、という点を見極めて選ぶようにすると良いでしょう。

今後は代表的なデューデリジェンスに加えて、犯罪デューデリジェンスを検討しよう!

基本的なM&A前のデューデリジェンスであれば、コンサルティングファームなどで対応できますが、M&Aに際して「なんだかM&Aの相手先の素性がしれない」「デューデリジェンスでは特に問題があがらなかったが、相手側の社長や役員がなんか信用できない」など、少しでもM&A相手側に違和感を感じた時には、一般的なデューデリジェンスに加えて、探偵事務所が行う犯罪デューデリジェンスを検討しましょう。

犯罪デューデリジェンスは、具体的には、M&Aの相手側の代表者や役員、または企業自体の不法・違法行為、前科(逮捕歴)、紛争・訴訟歴、反社会的勢力との繋がり、簿外債務や簿外資産などを調査します。

例えば、M&A後にこれまで企業の中で反社会的勢力との繋がりがあったとすれば、ブランドイメージなどの損失に大きく関わってきてしまいます。

また、資料的には問題なかったが、実際にM&Aしてみると実態は資料と大きくかけ離れていたり、後々大きなトラブルになるのを防ぐためにも相手側の代表者や役員などはしっかりと素性を調べておくことが大切です。

半グレなど見た目では分からない反社会的勢力の台頭や、詐欺の巧妙化が進む昨今。一般的なデューデリジェンスでは表に出てきづらいような内容を探偵事務所では調査が可能です。

ぜひ、M&Aに際して探偵事務所による犯罪デューデリジェンスも合わせて検討してみてはいかがでしょうか。

探偵事務所SATでは、これまで数多くの企業や個人の信用調査などを実施した実績があり、こういったM&Aなどに当たっての相手側の経歴など素性を調査可能です。

まずは、お気軽にご相談から。

警察OBに直接相談できる探偵事務所

受付時間/10:00~20:00 ※LINE相談は友達登録をして送られてくるメッセージに返信することで行えます。