【投稿日】 2022年10月11日 【最終更新日】 2022年10月25日

高齢者は認知症になってしまう可能性が高く、進行が進んでしまうと徘徊に至ってしまうことがあります。徘徊は危険が多く、最悪の場合、命に直結する症状です。

今回は、認知症となってしまった高齢者が引き起こす徘徊に対して、周囲の人間がどんな対策を取るべきか、また実際に徘徊で失踪・行方不明になってしまった時にどのように対処すれば良いか、について解説します。

認知症による徘徊の危険性とは?

認知症の人が徘徊すると、周りの誰ひとりとしてその状態を認識していないのであれば行方不明の状態となります。

本人は健常者と同じ正常な行動をしているつもりなので、ためらいなく好き勝手に動き待ってしまっているのです。

しかしながら、認識機能は本人の意識とは裏腹に低下しています。

例えば、それは自宅にいながらにして「家に帰りたい」と思い込んでしまいどこかに行ってしまうというような、目的も根拠もない行動となって表出することになります。

また、認識機能や身体機能が低下した状態で理由も目的もなくさまようことになってしまえば様々な事故や事件に巻き込まれてしまう可能性が高くなってしまうのです。

例えば、夏場であれば熱中症、冬なら凍死、さらに転倒・転落事故や車・電車による交通事故を起こしてしまう可能性があります。

たとえ、家の中であっても安心はできません。

以前なら転ばないはずの段差に転んでしまい、取り返しのつかない大怪我をしてしまうこともあるからです。

認知症が高齢者に特に多い病気である以上、当事者には多くの家族がいることが考えられます。

認知症患者の徘徊により、当人に痛ましい事故が起きたり、最悪の事態が起きてしまうと、家族の心的状態にも大きな影響を及ぼします。

当人を守ってあげられなかったという後悔や罪悪感、今後への不安や焦りなどは簡単に拭えるものではありません。

認知症の徘徊リスク〜年間17,000人もの行方不明者〜

警視庁が発表した「令和2年における行方不明者の状況」によると、令和2年の行方不明者のうち認知症における徘徊を理由とするケースは17,565人にも及んでいることがわかります。

引用元:警視庁「令和2年における行方不明者の状況

日本社会の高齢化が進むことにより、認知症を発症してしまう人の総数は今後より増えることが予想されます。

つまり、徘徊による行方不明者の数もまだ高止まりせず、増え続けることになるでしょう。

厚生労働省が公表している「平成29年版高齢社会白書」によれば、2025年(令和7年)には、認知症患者の数は、全高齢者の18.5%〜20.0%になると推計されています。

引用元:厚生労働省「平成29年版高齢社会白書

前期高齢者の徘徊に特に注意

前期高齢者が認知症を発症してしまい、徘徊に及ぶ場合はより深刻なケースが起こりがちです。

なぜなら、65~74歳の人が分類される前期高齢者は、まだ体力がそこそこある状態であるためです。

前期高齢者は場合によってはまだ職業を定年になったばかりであり、日常的に公共交通機関を利用して自ら何十キロと移動できる能力を持ち合わせています。

この状態で認知症による徘徊が起きた場合、長距離移動などもしてしまう可能性があるため、発見が大きく困難になります。

一方で、75歳以上が分類される後期高齢者は、体力の低下に伴い、徘徊の行方不明状態における発見率が高くなっています。

このように、認知症になってしまった高齢者の中でも特に前期高齢者による徘徊の可能性は、決して無視できない状況になっているといえるでしょう。

徘徊が起きてしまった時にできる4つの対策とは?〜公共機関・制度を使う手がある〜

徘徊が起きてしまった場合、探すべき場所は以下のとおりです。

  • 以前から馴染みある場所:知人・隣人の家、介護関係施設、以前住んでいた場所、思い出がある場所
  • 事故に関わる可能性が高く、結果的にそこで身動きがとれなくなりそうな場所:線路・踏切、河川、足場が悪い・見通しの悪い場所・交通量が多い道路
  • 家の中:押入れ、クローゼット、お風呂、トイレ、物置

自分で近所を探すことも無理のない範囲であれば行ってもいいかも知れませんが、基本的には各種機関を頼ることが必要です。

一般的に、徘徊で行方不明になった高齢者が見つかる可能性は99%とされていますが、100%ではありません。

また、徘徊の症状が起き、行方不明になった高齢者は警察への届け出が遅ければ遅いほど見つかる確率が低く、死亡する割合が高いという傾向が、桜美林大学の研究で明らかとなりました。

届出から当日~5日目となるに従い生存しての発見率は下がり、5日目以降の生存率は0%とされています。

また、行方不明となってからの時間が9時間を越えると発見率が非常に低下し、1日が経過すると死亡率は37%低下するとされています。

行方不明高齢者の死因は溺死や凍死であり、認知症の進行により自ら身を守る手段すらわからずにそのまま亡くなってしまう傾向があるようです。

生存している場合でも、保護先などで自分のパーソナル情報が伝えられずに行方不明のまま身元不明者とカウントされてしまうこともあります。

もし万が一、高齢者の徘徊が起きてしまった場合、最悪の状況を避けるために、まずは警察など公共機関を利用しましょう。

詳しい対策方法について、1つひとつ見ていきましょう。

【対策1】警察への届け出

もし認知症の高齢者が徘徊してしまい、行方不明になったら、まずは警察署へ捜査依頼を提出しましょう。

これまで見てきたように、行方不明である状態が起きてから時間が経過すればするほど徘徊している当人が見つかりづらくなります。

これは、警察の捜査上でも同じことがいえます。

なぜなら、時間がすぎるとともに、行方不明者はより多くの距離を進んでしまうからです。

同時に、これは警察の操作範囲が広がってしまうこと、より多くの人員を必要としてしまうことを意味します。

また、時間経過と生存率の関係も深いことがわかりました。時間が経たないうちに何らかの手をうつべきです。

これらを鑑みると、体裁などを気にして警察への届け出をためらうことは徘徊対策として一番やってはいけないことだとわかります。

徘徊による失踪や行方不明が分かった段階で、警察への届け出は速やかに行うべきです。

【対策2】地域包括支援センターへの相談

警察署への捜索願提出を終えたタイミングで、地域包括支援センターへ向かいましょう。

地域包括支援センターでは高齢者の認知症に関わる相談ができます。

自治体によっては見守りのための制度やネットワークもあります。

見守りネットワークは、単身世帯の高齢者や障害者、病弱者の支援をしてくれるネットワークのことです。

引用元:NPO法人ワークシェアリングこの指とまれ「高齢者等地域見守りネットワーク

見守りネットワークの中で、自治体・警察・町内会・宅配業者・不動産業者・タクシー業者などが連携して捜索をすることもあります。

見守り側に参加するには特に制約はなく、ボランティアとしての参加が基本です。

このような見守りネットワークにおける捜査も、行方不明者を早く見つけるための支援となります。

もし、自分の住む市町村に見守りネットワークがある場合、利用すべきです。

ただし、見守りネットワークを利用するためには、事前に個人情報(写真や住所など)を登録しなければならないことに注意しましょう。

あらかじめお住まいの自治体などの公式ホームページなどで見守りネットワークについて調べてみてください。

【対策3】厚生労働省の特設サイトを調べる

捜索が長引いた場合、厚生労働省のサイトをチェックしてみましょう。こちらでは身元不明な行方不明者が保護された場合に情報が公開されます。

引用元:厚生労働省「行方のわからない認知症高齢者等をお探しの方へ

県ごとに情報が分かれているため、関係がありそうな場所を調べてみましょう。

【対策4】探偵業に依頼する

探偵業者は人探しも得意としているため、実際に徘徊が起きてしまい、当人が行方不明になってしまった場合は依頼することも一つの手です。

探偵業は認知症徘徊者を捜索するためのノウハウを持っており、当人の住まいや持ち物、聞き取り調査により趣味嗜好や行動パターンを把握します。

さらには従業員を大量に投入することができ、広範囲での見回りや聞き取り調査、行方不明者の情報が記載されたちらしの配布なども可能です。

探偵への認知症患者捜索の相場は一週間で50~60万円(※調査内容や期間、難易度によって変動します)となっていますが、それだけに多数の施設や病院、駅、公共施設などあらゆる場所を捜索することができます。

個人でできる徘徊の事前予防策とは?

認知症の症状としての徘徊は完治の見込みがなく、一度防ぐことができてもまた同じことを引き起こしてしまいます。

このため、事前予防策を張り巡らすことが重要になってきます。

公共機関や制度以外に個人でも実行できる徘徊対策について1つひとつ見ていきましょう。

【予防策1】本人の持ち物や衣服にGPS(あるいは名札)を仕込む

対策の一つとしてGPS端末の利用があります。現代では社会における認知症患者の人口比率が増えた背景もあり、徘徊専用のGPS端末が市販されています。

GPSとは「Global Positioning System」の略語です。人工衛星と連動して、地球上における現在地などを正確に把握できるシステムです。

もし徘徊可能性がある高齢者に何らかの形でGPSを持たせることができれば、本当に徘徊に至ってしまった際にどこにいるかがかなり正確に判明するため、再発見できる可能性が高まります。

GPSを利用して徘徊者の居場所を知るためにはスマートフォンなどにそれぞれ専用のアプリをインストールする必要があります。

昨今のGPS端末の形は靴、ブレスレット、時計型などさまざまな形態があり、そこそこの大きさ重さがあるため、高齢者に持たせる場合は以下のような工夫が必要です。

  • GPS機能のある端末を衣服、靴に接着する。同機能を持つ衣服を調達して着させる、それ以外の服を捨ててしまう
  • 当人が常に持ち歩く物がはっきりしている場合、その鞄などに縫い付けたり貼り付けるなどして無理やり持たせる
  • 当人が気づいて捨ててしまう可能性がある場合は複数箇所に上記の工夫を施してみる

GPSを徘徊者に必ず付随させることができれば、いざ行方不明になってしまってからの捜索が非常に簡単になります。

ある程度長距離の移動をしてしまっている場合も、探す側の心の安定度合いが格段に違うと言えるでしょう。

GPSが使えない場合「名札」を仕込むなど、服に趣向を凝らす

精密機器が利用できない場合や、どうしてもGPSが本人に嫌がられてしまったり捨てられてしまうような場合の対策として、アナログな「名札をつける」手段があります。

これは持ち物に片っ端から名札をつけるという方法です。例えば、当人の衣服や履物すべてに、その他あらゆる持ち物に名前や住所などを書いた名札を縫い付けるというやり方が考えられます。

衣服は身に着けないわけにはいけないため、GPSよりも実現可能性が高い方法です。GPSが使えないと思ってあきらめないでください。

名札があることで、万が一徘徊して遠方に行ってしまった場合でも、保護した人が当人の名札に気づいてくれる可能性が高くなります。警察に保護されれば、身辺調査でほぼ間違いなく見つけてくれることでしょう。

名札はとにかく「絶対に纏わせる」ことが目的です。そのため、なくしてしまわないのであれば方法は何でも構いません。本人に違和感を持たれないのであれば縫い付ける方法は接着剤でさえOKです。最善の方法を考えてみてください。

また、他者から見つかりやすくするために、明るい服や蛍光色の服を本人に与えることも検討しましょう。

【予防策2】家の中で目的の場所がひと目でわかる張り紙をする

徘徊は家の中でも起こります。

これまで知っていた場所がどこかが認知機能の低下によりわからなくなっているためである可能性があるためです。

このため、もし家の中にあるトイレやお風呂など非常に常識的な場所だったとしても、わかりやすく大きな字で張り紙をしてあげることで理解できるようになる可能性があります。

この時、インテリアの質を下げられることが不服であるとして家の中に張り紙をすることをためらうケースもあるようです。

しかしながら、プライドにこだわってしまうあまりに、時には人命に直結する徘徊が防げるのであればどうするべきかなどよく考えてみてください。

トイレを探しての徘徊の場合、頻度で推し量れることもあります。このため適度に声掛けしてあげて付き添ってあげることも対策のひとつです。

【予防策3】そもそも徘徊者が家から出れないようにする

徘徊は家から出るから起こるのだとすれば、家から一歩も当人を出さなければ徘徊は起こりません。

このため、徘徊者がいる家屋内から、当人を一歩も外に出さない構造を持続させることが問題解決に直結すると言えるでしょう。

具体的には以下のような方法で家からの外出を防ぎましょう。

  • 外に出るための鍵を物理的に届かない位置に新設する
  • 玄関のドア鍵を新設し、内側からは簡単に開けられない構造にする
  • ドア鍵を開場されても、すぐには出ていけないような重り(土嚢など)を玄関の内側や外側に配置する
  • 誰の見守りもされていない、徘徊の可能性が高まる当該時刻内に「ドア鍵を開けられたら反応し、家人がわかるようなセンサーや警報機」を設置する
  • 窓の施錠も同様に簡単に開けられず、出られないように工夫する

徘徊してしまう人を、周りの人やデイサービス先の専門職の方が見守れば徘徊を防げますが、24時間続けることは不可能です。

特に深夜は、見守る側も寝なければならないため、自ずと徘徊者から目を離さざるを得ない状況が発生します。こうなると物理的に外に出れないようにするしか方法はありません。見守りは体力も精神力も大きく奪われてしまいます。

【予防策4】あらかじめ近所の人々、交番・警察などに相談しておく

これまでの対策からもわかるように、徘徊の可能性がある人がずっと家から出られないようにしたり、見守り続けることは難しいのが実状です。

場合によっては、見守り側だけでなく、認知症の当人の心身負担も増えてしまい、症状が悪化してしまうかも知れません。

そこで、あらかじめ身近な人々に対して、自分の身内に認知症で徘徊の可能性がある人がいるということを伝えておきましょう。

身近な人々とは近所の方や地元警察のことです。

身内の病気について、血縁関係のない第三者に話すことは心理的に難しいかも知れません。

しかしながら、これまで解説したように、徘徊とは身内だけで対処できる問題ではありません。自治体に依っては、地域における包括的な支援の仕組みさえあるほどです。

このため恥ずかしがったりとためらわず、自分たちの正確な情報を事前に伝えておきたいところです。

場合によっては顔写真や名前、年齢や見た目的な特徴などを伝えておき、いざという時にこちらへ連絡してもらったり関係機関に伝えていただけるように下準備してください。

少しでも早くの徘徊者発見や、被害の程度を抑えるために必要な対策です。

【予防策5】徘徊してしまったらいっそのこと続けさせる、疲れさせる

実際に徘徊が起きてしまった場合の対策とも重なりますが、徘徊してしまった当人をうまく保護できたら、そのままともに行動を続けてみることも対策として有効になります。

それは結局、目的も理由もない行動が徘徊であるため、「疲れる」というより大きく明確な理由ができれば当人がそこで徘徊を辞めてくれることにつながるためです。

同様に、この対策は事前対策としても応用できます。それは徘徊可能性がある当人を「疲れさせる」ために特化した行動をとらせることです。

認知症で徘徊の可能性がある人に対する、疲れてもらうための運動とは以下が挙げられます。

  • 庭の手入れ、草むしり(当人が認知症罹患前に行っていた行動であるとなお良い)
  • 洗濯物の取り込み、干し、畳み
  • 工具を使った簡単な日曜大工(怪我などアクシデントに要注意)

これらの行動は日常的に行うことで認知症の進行を遅らせることにも効果があります。日中に上記行動を取ることで太陽光を浴びることができ、体内で抗うつ物質であるセロトニンが生成されます。

セロトニンは、快眠を支援する物質であるメラトニンの生成を促してくれるため、認知症の方がきちんと睡眠をとってくれれば、深夜の徘徊リスクを限りなく減らすことができるのです。

このように、徘徊対策として日中の運動は非常に効果的です。

【予防策6】デイサービス利用

徘徊の可能性がある人を見守り続けるには心身ともに相当の負担が生じます。

さらに無茶な方法で高齢者を縛り付けてしまうと、こちらの心的負担も大きくなり症状の悪化を招くかも知れません。

このため専門職の方々が適切な見守り、保護をしてくれるデイサービスを利用することは理にかなった行動です。

デイサービスにおいては質の高い生活が保証されるだけではなく、イベントやレクリエーションなどによる他者とのコミュニケーションで認知症の進行を抑えてくれる施策もあります。

徘徊防止のために、介護職員がともに外出もしてくれるため、深夜はぐっすり寝てくれるかも知れません。

もし金銭的に余裕があれば検討してみてください。

徘徊対策は事前対策をしっかりと!行方不明者が出たら優先度はまず警察に連絡しよう!

今回は徘徊者に対する対策について解説しました。

基本的に、徘徊に対する対策の優先度というものは存在せず、事前対策から、実際に徘徊が起きてしまった時の対策、事後対応といった流れで順を追って進めるのが有効です。

つまり、徘徊を起こす可能性がある人が身近にいる場合、まず後半に紹介したような徘徊をさせないための対策をすべて取るべきです。

実際に徘徊による失踪や行方不明が起きてしまった場合には、まずは何より警察への届け出をすべき、といえるでしょう。

地元を知り尽くし、人探しに特化した捜査員たちが捜索にあたってくれます。

また、無事に当人が見つかった場合、感情のままにぶつかってしまうことは再発を引き起こしたり、より認知症が悪化したりと逆効果です。

できるだけ当人の気持ちに寄り添い、介護職員など専門家の意見を取り入れつつ再発防止に取り組んでみてください。

徘徊による失踪や行方不明なら、探偵事務所SATにお任せください!

実際に徘徊による失踪や行方不明が起きてしまった場合、まずは警察に届け出をすることが何より大切です。

また、発見確率をより高くするためにも、探偵事務所へこの段階で相談しておくのがおすすめです。

探偵事務所SATには、警察OBの探偵が在籍しており、探偵・警察という双方の視点から、探偵業法に基づくあらゆる手法を用いて失踪・行方不明者の捜索を行うことができます。

失踪や行方不明者の捜索はスピードが命です。失踪や行方不明が分かった時点で、警察だけではなく、探偵事務所SATにもご相談ください。

また、失踪や行方不明が判明してから時間が経ってしまった場合なども諦めず、メールやお電話にてまずはご相談ください。

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