【投稿日】 2018年5月9日 【最終更新日】 2021年10月21日
いじめ問題を解決したいという思いは、いじめを受けたお子様やそのご両親・保護者だけではなく、関わった人たち全てが持つ共通の願いです。しかし、そこに至るまでの道のりでそれぞれが望む解決方法に食い違いが出ることが多く、結果として不本意な争いが発生してしまっているのが現状です。
特にいじめ問題に対しての学校側の対応に不満を持つ保護者は多く、その結果いじめが放置されてお子様が不登校になったり、最悪の場合お子様だけではなくご両親も心の病にかかることも少なくありません。
何故そのようなことが起こるのか、その原因を知ることで話し合いをする時に気をつけるポイントが見えてきます。
- 解決のための話し合いが食い違うのは何故?
- 理解して貰うために必要な項目とは
- 話し合いがもつれた時に取れる対処法について
実際にいじめ問題を経験した方々の例を挙げながら、学校に対する不信感の原因やその対処法について詳しく解説していきます。
SAT探偵事務所 京都本部の代表取締役社長。
浮気調査や人探しといった個人向けのメジャーな調査はもちろん、他所では受任できない難度の企業向けの調査(信用調査、与信調査、M&A時等におけるDD 等)や経営コンサルティング業務にも従事している。
学校がいじめを隠そうとする・対応しようとしない要因を解説
いじめを学校に相談した際、次のような言葉で問題をうやむやにされて苦しむ保護者の方々が多くいらっしゃいます。
- いじめではなくコミュニケーションの一つとして認識している
- 学校内ではそのような事実は確認されていない
- もう一度お子様と話し合われてみては?
学校を信頼して相談したご両親にとっては大きなショックなのですが、学校側が最初からいじめの事実を受け入れて話し合うことはほとんどありません。
なぜこのようなことが起こるのか、その要因を詳細にみてみましょう。
いじめがあるという事実が教師の評価を下げる
教師の評価がどのように行われているか、その方法を知る方はあまり多くありません。
実は学校の教師にも一般の会社の「ノルマ達成」のような「管理目標」というものがあり、これによって教師の評価が決められるのです。
- 教師が自らの目標を決めて、その達成度を書類に書き込んで自己申告する
- 提出された書類を教頭が評価
- 書類の内容について各学年の主任教師に聞き取り調査をして確認
- 各学校の校長が第二次評価
- 最終的に教育委員会へ提出された書類で評価が決定し、給与や待遇が決まる
自己申告と評価主義が一体となっている教師の世界では、いじめがあることやそれを解決できないという事実は受け入れがたいものです。その結果、いじめ問題を相談された担任の教師が事実を認めなかったり、自分の評価を下げないためにうやむやにしてしまうという状態が出来やすくなっているのです。
教師間の上下関係が影響している
では、担任の教師がいじめ問題に親身になってくれる場合は話し合いがスムーズになるのかというと、それも複雑な人間関係に阻まれることになります。
- 担任の教師が自分だけで解決しようとして時間が掛かりいじめ問題が悪化
- 学年主任に相談したが逆にいじめ問題に消極的で話が進まない
- 校長や教頭からいじめ自体を認めない返答がくる
- 各市町村の教育委員会がいじめ問題について回答しない
- 現場で起こっているいじめ問題を上層部に報告しない
これらの問題点から見えてくるのは、いじめ問題を最小限に抑えることだけに集中しているという現実です。先述した教師の評価制度はピラミッド型の力関係が強く、責任のある立場になればなるほど対応が鈍くなります。
さらに、教育委員会やそれに携わる各機関は一般的な行政とかけ離れている部分が多く、学校の持つ閉鎖的な雰囲気がより大きくなっています。こうなってくると、法律関係や警察、その他の第三者機関からの圧力がなければなかなか動かすことが出来ません。
教師が忙しすぎて余裕がない
現在の教育現場で問題となっているのが、教師の仕事が多過ぎてブラック企業化しているという点です。
- 部活動の早朝練習の指導や管理
- 日中の授業
- 教員の勉強会や学習指導の研究発表
- 翌日の授業に備えた準備やスケジュール作成
- 放課後の部活指導
- 土日に行われる対外試合の遠征
- 定期的に行われる学校と地域の交流会
- PTA関連の勉強会出席や学校行事の準備
このような例の他、年間を通して大小様々な仕事が入っている教育現場は大変忙しく、朝7時には出勤して夜の9時にやっと帰宅するという教師も少なくありません。いじめ問題にしっかりと取り組むことが出来ない余裕のなさも、学校の対応の悪さに関係していると考えられます。
学校にはいじめの基準がある?話し合いの前に行っておく準備とは
人間関係の複雑さや忙しい職場環境であっても、明らかないじめであるという認識が一致していれば、学校側もいじめ問題を無視することは出来ません。しかし、その基準が同じであるかどうかは話してみなければわからないことが多いのもまた事実です。
- 学校に相談したがいじめではないと言われた
- 子ども達同士の解決が望ましいと指摘された
- いじめの基準が一致せず話し合いにならなかった
実際に学校で相談された方々のこのような発言には、いじめの基準という難しい問題が隠れています。
話し合いに向けどのような準備を行なっておくと良いのか、時系列に添って解説していきます。
ご家族の考えるいじめの基準を明確にする
まず一番最初に行うのは、いじめを受けたお子様とそのご両親・保護者の持ついじめの基準を明確にするという作業です。
何をいじめと感じるのか、それはその人の主観に掛かってくるためどうしても曖昧になりがちです。その曖昧な部分を明確にすることで、学校側に訴えやすくなるというメリットがあります。
- 「死ね」「バカ」「殺す」というような具体的な悪口の例を書き出す
- コミュニケーションのボディタッチと暴力と思う境目がどこになるのか明確にする
- どのような行動が怖いのか詳細を把握する
- やめて欲しいことをリスト化しておく
- いじめを受けたお子様の精神状態のチェック
このような例を基準にしながら、お子様と話し合いをして安心感を持って貰うこともいじめ解決には重要な点となります。
話し合いの中でお子様が不眠を訴えたり、精神的なショックが強いと判断した場合には、小児科や心療内科等と受診してその診断書も取るようにしましょう。
必ず記録や証拠を取るようにしておく
いじめに関する発言やその証拠がある時には、出来るだけ詳細に記録したり証拠を残しておくようにします。
具体的な例としては、以下のようなものです。
- お子様からの報告を「いつ」「どこで」「だれに」「なにをされたか」という点を整理してまとめたメモ
- 足跡がついたり汚れている衣服やカバンなど
- 壊された所持品
- 暴言が書かれた手紙やSNSの内容
- 怪我や心因的症状を病院に診て貰った時の診断書
- 怪我の状態を記録した写真
特に暴力や暴言が絡んだいじめは、証拠があると警察にも相談しやすくなるというメリットがあります。いじめを隠しておきたいお子様が部屋に隠し持っていることもありますので、お子様の精神状態を考慮しながら可能な限り証拠を集めておきましょう。
いじめの証拠と思われる証言や物品を持参
学校での話し合いに出向く時には、いじめの証拠やいじめに関する証言をまとめたメモを持参していくようにしましょう。話す際には、証拠を提示しながらメモに添って話すとより問題点がわかりやすくなります。
証拠を持参する前には、次のような準備もしておきましょう。
- 病院の診断書は複数枚コピーをしておく
- 怪我の状態を記録した写真の焼き増し
- 証拠の物品は学校に預けず写真に撮って対応
- 記録したメモやノートのコピー
これは大変残念な実例なのですが、学校側に証拠を預けたら紛失されてしまい、いじめ問題がこじれてしまったというケースがあります。学校以外の機関に相談する際にも証拠は重要なアイテムとなりますので、証拠の原本は手渡さずコピーや画像の焼き増しなどで対応するようにしましょう。
いじめ問題解決の着地点を意識して話す
お子様やご両親が望むいじめの解決とはどのようなものなのか、具体的な内容を伝えるように話しを進めることも重要です。実際にいじめ問題の話し合いで出された解決方法の例としては、次のようなものが挙げられます。
- いじめた子どもとその両親や保護者からの謝罪
- 二度といじめを行わないという反省文や誓約書の作成
- 壊された物品の弁償
- 治療費の支払い
- いじめた子どもに対する学校側からの処分
- いじめに関する具体的な対応策の文書を学校から提出して貰う
いじめを受けたお子様やそのご両親・保護者の方にとって、心身ともに受けた苦痛はどのような謝罪も受け入れ難いのではないでしょうか。
しかし、その感情のままに話し合いをすると逆に学校側から指摘を受けたり、事態が思わぬ方向へ向かう可能性もあるのです。必要なのは、絶対に譲れない最終目標を作ることです。
- いじめを認めて謝罪して貰うこと
- いじめ再発防止に向けた対策を明確に文書化して貰うこと
- 子どもが安心して学校に通える環境を整えて貰うこと
学校側の持ついじめの基準がご家庭の基準とずれていたとしても、最終目的を明確にすることで解決へ向けて行動しやすくなります。上記の案を例にすると、いじめの謝罪はまだだがお子様の環境は整えて貰うことが出来た、というような解決へ向けた糸口を作り出すことが可能です。
第三者の同席やボイスレコーダーによる記録
学校側との話し合いがこじれる原因の一つに、「口頭での約束が守られておらずうやむやにされる」というものがあります。
- 確認したら連絡するといったのにまだ連絡がない
- いじめ問題の対策として自由登校で良いと言われたのに怒られた
- 反省文や誓約書の約束をしたがそのような事実はないと言われた
学校は組織で動いていますので、文書作成一つをとってもその場ですぐ行われることはほとんどありません。つまり、約束したという証拠は残っていないのです。
最悪の場合、口頭で約束をした教師が急に配置換えとなり、新しい担任の教師ではらちが明かないということにもなりかねません。
- 話し合いの場に町内会の世話役や弁護士などの第三者に同席して貰う
- 話し合いを全てボイスレコーダーに記録しておく
- スマホやタブレットの機能を利用した画像チャットで証言者を確保する
話し合いでは真摯に向き合って貰えたのに、後で手のひらを返されたような対応で傷付くお子様やご両親・保護者がいらっしゃるのもまた事実です。
学校側とのやり取りが詳細に残されていると、その他の機関に相談する時に証拠として役立てることも出来ますので、話し合いの内容は可能な限り記録したり証言者を確保しておくようにしましょう。
学校側の対応が悪い時の対処法
どれだけ頑張って準備をした上で話し合いをしても、学校側の対応が悪くなかなか解決に至らないケースもよくあります。学校に話せば大丈夫と信用しているお子様やご両親・保護者にとって、一番信用している場所が実はあてにならないとわかった時のショックは計り知れません。
いじめというカテゴリーだけで考えてしまうと、相談する先も限定されてそこから動き出せないという悪循環が生まれてしまいます。学校以外の相談場所を視野に入れておき、万が一の時の対処法として知識を身につけることも大切です。
人権問題として相談する
いじめは人としての尊厳を傷つける人権問題でもあります。どのような特殊な環境であっても侵害する権利はありません。
そこで、次のような場所にいじめを相談するという方法があります。悩みを抱え込まず、話せる部分から少しずつでも相談していくことが大切です。
法務局への相談
法務局では、人権の侵害という立ち位置からいじめ問題の相談を受け付けています。いじめを受けた人の状況から必要であれば救済手続きをとり、学校側への対策要請を出すといった具体的な対応を行いますので、学校に対する不信感がある場合には法務局へ相談してみましょう。
いじめ問題のNPO団体へ相談
いじめ問題の相談先として、NPO団体に相談するという方法もあります。弁護士・教育アドバイザー・心理カウンセラーといった分野で活躍する専門家の立場から、現在の状況や改善へ向けた打開策などのアドバイスを受けることも出来ます。いじめは大変デリケートな部分も多くご家族だけでは抱えきれない点もありますので、こうした活動を行なっている団体への相談も良い方法です。
刑事事件として相談する
暴行や器物破損、暴言や誹謗中傷を行うといった行為は明らかな犯罪です。実際にあったいじめの中には、万引き・恐喝・盗みを強要するといったかなり悪質なものもあり、学校の対応を待っていたのでは手遅れになる可能性も少なくありません。
- 犯罪の可能性がある時には証拠とともに警察へ相談する
- 命の危険性がある場合にはすぐに届け出を行う
- 状況によってはいじめを行った子どもの補導をお願いする
各都道府県の警察では、いじめ問題の相談窓口を設置しているところも多くありますので、緊急性を擁する時には躊躇せず相談するようにしましょう。
第三者機関へ相談する
弁護士や行政書士、探偵事務所の無料相談などを利用して、いじめの現状を客観的に捉えるお手伝いをして貰うのも有効な手段です。
- 行政書士による内容証明書の作成と送付
- いじめ問題に関わる慰謝料などの民事訴訟を弁護士に相談
- 確実な証拠を掴むためのアドバイスや調査を探偵事務所に依頼する
第三者機関の介入により、それまでの学校の隠蔽体質や対応が大きく変化することも少なくありません。ご家族だけで頑張っても思うように事態が進まないという時には、このような専門家の方の力を借りていじめ問題を解決するようにしましょう。
まとめ
学校のいじめ問題に対する隠蔽の原因やその対応法について、詳しく解説してきましたがいかがでしたでしょうか。最後にもう一度内容をまとめてみましょう。
- 学校はピラミッド型の組織で動いており、閉鎖的な環境から隠蔽しやすい状況である
- いじめ問題解決の目標を明確にして、証拠や証言を集めて冷静に説明を行う
- 話し合いの内容を記録しておくと学校以外の機関に相談する時に役立つ
- 第三者機関からの働きで事態が動くこともあるので、学校以外の相談先を視野に入れる
学校を信用している人であればあるほど、いじめ問題に対する学校の対応の悪さに苛立ちや悲しみを覚え、一度芽生えた不信感をなかなか拭うことが出来ません。お子様の気持ちを第一に考えて、より適切な相談先を選んで力を借りながら解決方法を模索していきましょう。
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