【投稿日】 2019年9月12日 【最終更新日】 2021年10月21日
ストーカー被害は長期化するほど被害の内容はひどくなり、かつ解決が難しくなるという特徴があります。
できるだけ早く解決しなくてはなりませんが、実際自分の身に起こってもすぐに適切な対策ができるものではありません。また被害者がはっきりストーカーされていると気づいたときには、すでに相手の中では引き返せない段階まで進んでしまっているケースも多いのです。
そんなとき、相手を法律で罰したり慰謝料をとったりすることもできますが、それでも相手がストーカー行為を繰り返すようであれば、本当の解決とはいえません。まだまだ被害が続く可能性があります。
では、ストーカーに完全に諦めさせ、ストーカー行為をやめさせるにはどうすればいいのでしょうか。
ただ断る、拒否する、無視するといった方法では簡単に解決しないストーカー問題。ストーカーに諦めさせるための正しい対処法と注意点を解説します。
SAT探偵事務所 京都本部の代表取締役社長。
浮気調査や人探しといった個人向けのメジャーな調査はもちろん、他所では受任できない難度の企業向けの調査(信用調査、与信調査、M&A時等におけるDD 等)や経営コンサルティング業務にも従事している。
「断る、拒否する、無視する」この方法でストーカーをやめさせる・諦めさせることはできるか
ストーカー被害に対して、最初は断る、拒否する、無視するといった方法をとることになります。しかしこれらの方法はあくまで効果的な対策ができるようになるまでのその場しのぎで、拒否や無視でストーカーが諦めることはまずありません。
それどころか、場合ややり方によってはストーカー行為をエスカレートさせることも多いのです。
その理由を理解し、充分に注意しつつ正しい方法で拒否・無視を行ってください
ストーカーの異常な心理状態
まずストーカーは正常な判断力を失った精神状態にあるということを理解してください。
ストーカーとは恋愛感情や恋愛に基づく恨みから、特定のターゲットにつきまとい等の迷惑行為を繰り返す人物のことをいいます。ストーカーたちは、交際相手にフラれた、好意を伝えた(告白した)のに受け入れてもらえなかったなどのつらい現実を認めようとしません。
現実を否定するためにストーカーは、自分勝手な理屈や妄想を作り上げます。よくあるのが、諦めずにアピールすれば気持ちが伝わるんじゃないか、相手も好きなのに素直になれないだけじゃないか、自分と付き合えば相手も幸せになれるはずなどの思い込みです。
そんな相手に、まともな理屈は通じません。拒否や無視をしても自分に都合のいいように解釈したり、思い通りにいかないことでもっと強引な方法に出たりしてしまうのです。
また、自分でもやめたいけれどやめ方がわからずにストーカー行為を続けてしまっているケースもあります。つい電話をかけてしまう、相手の家を見に行ってしまうなどです。自分の行動を制御できなくなっている状態で、拒否や無視では解決できません。
拒否・無視するときの注意点
ストーカーに有効な対策がとれるまでは無視するしかありませんし、ストーカー規制法で立件するためには被害者がストーカーを拒否したという事実が必要不可欠です。
話しかけられても無視し、手紙やメールには返信せず電話には出ない。その他、着信拒否や受信拒否、受け取り拒否などの方法もあります。またはっきりと「迷惑だ」「やめてほしい」と伝えなくては警察もストーカー被害として扱うことは難しいです。
しかし拒否も無視も、ストーカーを刺激する可能性があることは間違いありません。行う際は以下の注意点を必ず守ってください。
最初はきつい言葉を使わず誠実に対応する
ストーカーに優しくしてはいけませんが、最初からきつい言葉を吐くことも厳禁です。相手を刺激し、逆恨みや逆上を招きかねません。最初に相手のストーカー行為を拒否するときは、できるだけ誠実に対応しましょう。
面倒ですが本当に困っていること、やめてほしいことを根気よく伝えていく必要があります。
もちろん暴言や暴力をふるうのは絶対にやめてください。最悪こちらが訴えられることになります。
相手と1対1で話し合わない
密室で2人きりになって話し合うと、相手が暴力をふるってくる可能性もあり、しかもそうなったときに防ぎきれません。ストーカーが女性で被害者が男性の場合であれば、してもいない罪を着せられることがあります。
また2人だけの場の話し合いは後で言った言わないの争いも起こりやすく、味方がいなくては念書を書かせるのも大変です。つまり1対1の話し合いはあまり意味がないうえ危険すぎます。
そういった事態を防ぐため、ストーカーを拒否する話し合いは、ファミレスなどの人の多い場所で信用できる人物に立ち会ってもらって行ってください。
しかし立会人にもストーカー被害が及ぶ恐れがあるので、親や上司・教師などの相手が従いそうな成人男性か、できるなら弁護士や警察に頼んでください。あるいは1人に恨みが集中しないように、1人ではなく複数人に立ち会ってもらうとより危険度は下がります。
無視する前に話し合いをする
突然無視をしても、相手は何のことかわかりません。たまたま機嫌が悪かったのか、照れているんじゃないか、もっとアピールすればいいんじゃないかなど、勝手な妄想を膨らませてしまいがちです。
そのためまずははっきりと拒否し、今後は無視することを伝えてからにしてください。(当然ですが、ストーカーが誰なのかわからない場合は別です)
また無視をしてもそれで終わりではありません。ストーカー問題が完全に解決するまでは、注意を怠らないようにしてください。
無視すると宣言したら徹底的に無視を貫く
一度はっきりと拒否して無視をすると伝えたのに、それ以降も相手に話しかけたり目を合わせたりしていると、ストーカーはそれを都合のいいように解釈します。一度宣言したなら、徹底的に無視を貫きましょう。
ストーカーと職場・学校が同じであれば、周りの人間に話を通して接触の機会を減らしてもらえるようにしてください。
笑顔や優しい言葉だけでなく、ののしるような言葉や過剰に冷たい対応もNGです。相手を逆上させる危険があります。周りの人間にも、そのような対応はしないように伝えておきましょう。
繰り返すストーカーをやめさせる・諦めさせるための対応と注意点
第1段階の拒否・無視でも効果がなく、ストーカーが諦めずにストーカー行為を続けるケースでは、他の対策を講じなくてはいけません。
段階的なストーカー対策
- 拒否・無視をしつつストーカー行為の証拠を集める
- 警察・弁護士・探偵などに相談する
- 示談や民事・刑事裁判などの法的解決
- 引越しなどで物理的に接触不可能にする
あくまでこれは基本的な流れで、例えばストーカーが誰なのかわからない場合はまず探偵に犯人の特定を依頼しなくてはなりませんし、すぐにでも避難が必要な状況なら警察への相談が第一です。
段階的に対策を行わなければならないのは、ストーカー行為はいつ何がきっかけでエスカレートするかわからないからです。以下に挙げるどの対策も、注意点をしっかり踏まえたうえで実行してください。
証拠を残しておく
拒否や無視で諦めないストーカーは、示談や裁判などで解決しなくてはいけないケースも多いです。そのことを想定して、できる限り初期から証拠となるものは残すようにしましょう。
証拠となるもの
- 通話記録
- LINEやメールの履歴
- Twitterのスクリーンショット
- ストーカーが残していった手紙や贈り物など
- 被害・日時などの記録
証拠の集め方や保管方法については、関連記事も参照してください。
ストーカー行為にできるだけ反応しない
ストーカーの行動に反応すると、それがストーカーの“やり甲斐”になってしまいます。反応する様子をまた見たいと思って何度も繰り返し、そのうちにエスカレートしてしまうためできるだけ反応しないでください。
ストーカーがいるかもしれない場(たくさんの人がいる場所)でストーカー被害の話をするのも、ストーカーに反応を見られるかもしれないので要注意です。ほとんどのケースでストーカーはターゲットを監視しています。
「やめないなら〇〇する」など具体的な警告をする
拒否や無視でもストーカーが諦めない場合は、対策を次の段階に進めなくてはなりません。
この場合も突然対策をしても相手に伝わらなかったり、逆上させたりする危険があるため、拒否したときと同じくちゃんと話し合いの場を設けて警告しましょう。もちろん立会人も必要です。
警告は「やめないと上司に相談する」「やめないと警察に言う」「やめないと弁護士に相談する」のように具体的な形で伝えてください。具体的な内容の方が、ストーカーが現実を直視するきっかけになりやすいです。
しかし警告した行動を実際に行うつもりがなければ効果はありません。警告の際に伝えていいのは本当にする意思のあることだけです。
連絡手段を絶つ
相手がこちらに接触できないよう、着信拒否・受信拒否などを行います。荷物などが送られてくるなら受け取り拒否という方法があります。もちろんこちらから電話やメールをしてはいけません。
しかしこの方法も、やはり突然行うと相手を怒らせることがあるため、特に相手が知人やこちらの個人情報を握っている人物ならちゃんと準備をしてからにしてください。
連絡手段を断つ際の注意点
- 前もって電話やメールに応えないこと・こちらからも連絡しないことを通告する
- リベンジポルノなどに使えそうなデータを相手が持っていたら、先に警察や弁護士に相談
- SNSを通しての知り合いなら運営に通報する
- それまでのやり取りの記録を取っておく(録音・スクリーンショットなど)
完全につながりを絶つことができればストーカーは止むかもしれませんが、そうでない場合の方が多いです。先々のことも考えて証拠はしっかりとっておきましょう。
物理的に接触できないように引越して距離を置く
職場や学校などを知られている行動範囲をすべて変えて引越しする方法です。
法的手続きなどをとらずに諦めさせるための最終手段と言えます。刑事罰や民事裁判なども効かないストーカーには、物理的に接触不可能な状態をつくり、ストーカー行為をさせない以外の方法はありません。
引越しの際の注意点
- 相手に動きを知られないようにごくわずかな人間以外には知らせない
- 電話番号などもすべて変え、ストーカーの知人や元の職場の人間などには知らせない
- 完全に接触を断つと何をするかわからないので、相手の知っているメールアドレスを1つだけ残しておく
- 引越し業者にストーカー対策のための引っ越しであることを相談する
引越し業者はストーカーに知られないように便宜を図ったプランを用意している場合があります。アドバイスなども受けられるので、ぜひ利用しましょう。
しかし引越してもストーカーが諦めるとは限りません。ターゲットがいなくなれば探し回り、ストーカー行為を再開しようとするでしょう。そういったケースを想定して、引越し後のストーカーの動きを探偵に調査してもらうことも考えてみてください。
相手の動きがわかれば少しは安心できますし、再び危険が迫ったときにもいち早く対応できます。
ストーカーをやめさせる・諦めさせるための相談先と相談の方法
ストーカーを諦めさせるために、自分1人でできることは限られていますし、何より危険です。誰にでもというわけにはいきませんが、信用できる相手に相談して協力を仰ぎましょう。
家族に相談する
家族にもストーカー被害が及ぶ可能性は充分にあるため、早い段階で話をしておきましょう。家族は最も親身になってくれる相談相手です。
ただし過剰反応しそうな家族に相談する際は注意してください。前もって自分はどうしたいのか、どういう対応をするつもりなのかを明確にしておくと、比較的冷静に話すことができます。話しやすい相手から順に話すなどの工夫も大事です。
大家さん・管理人さんに相談する
賃貸住宅に住んでいるなら、大家さんや管理人さんにも相談しておく必要があります。
特に自宅周辺でのうろつきやポストへの手紙などの投函がある場合は、大家さんが張り紙や監視カメラなどの対策をしてくれることもあります。監視カメラの映像はすぐに消されてしまうことが多いので、閲覧できるなら早めに申請しましょう。
また自宅周辺で何かが起きたときには、管理人さんにあらかじめ話を通しておくと通報や警察への説明も迅速に進みやすいです。
同僚・友達に相談する
ストーカー被害について同僚や友達に相談する場合は、相手を慎重に選ばなくてはなりません。特にストーカーと同じ職場・学校・団体などに属している人物に相談すると、相手にそのつもりはなくともストーカーに余計な情報を与えてしまうケースもあります。
口が堅く軽率な行動に出ない人物を選ぶのは当然ですが、同時に以下の条件に当てはまる人物にはストーカー被害について知られないように気を付けましょう。
相談相手に適さない人物
- 被害者との信頼関係が薄い、関係性が浅い人物
- ストーカーと親しい、または知り合い、友人を介してつながっている人物
- 口が軽く秘密を守れない可能性がある人物
- 世話焼きで正義感が強すぎてすぐに行動に出るタイプ
- 人の話をちゃんと聞かないタイプ
また弁護士に伝手のある知り合いに紹介を頼む場合も、詳しい相談内容は伏せる方が無難です。
警察に相談する(警察による加害者への働きかけ)
ストーカー規制法が施行・改正され、ストーカーに対して警察ができることの範囲は広がりました。ストーカー規制法に則って刑事罰を与えることもできますが、「ストーカー行為をやめさせる・諦めさせる」ことが一番の目的であれば、別の方法もあります。
まずは交番ではなく警察署に行きましょう。そうすればストーカー対策について何もわからなくても、どういった対策や措置を取ればいいのかなどのより詳しいアドバイスを受けられます。
この項では、主に刑事告訴以外の方法について説明しますが、以下の関連記事には警察に相談する際の注意点、さらに刑事告訴の手順などもまとめてあるので、ぜひ参考にしてください。
警察からの警告
警察署本部長等がストーカー行為を行ってはならない旨を警告することです。警察が出ることで、ストーカーは自分のしている行為が犯罪であると認識しやすくなります。実際、警告によってストーカー行為をやめるケースは多いです。
警告を出してもらうためには、警告申告書の提出が必要です。
警察からの禁止命令
警察からストーカーに被害者への接触を禁止する命令を言い渡すことです。基本的にはストーカーが警告を無視してストーカー行為を繰り返した場合に発令されますが、特にそのような条件はありません。
すでにつきまとい等の行為が行われており、さらに繰り返し行われる恐れがあると認められればいつでも発令できます。
また通常のストーカー規制法違反の罰則が1年以下の懲役または100万円の罰金であるのに対し、禁止命令に従わなければ罰則は2年以上の懲役または200万円以下の罰金です。よってストーカーへのより強い抑止力となりえます。
避難先・支援団体などのあっせん
警告や禁止命令などを待つ余裕がなく、今すぐにストーカーとの接触を断ちたいというケースであれば、警察は一時的な避難先や支援団体をあっせんすることもあります。いわゆるシェルターのような避難所だけでなく、被害者・加害者両方を対象としたカウンセリングなども自治体によっては紹介できます。
ストーカーは心の病気だという説もあるほど、ストーカー本人にも制御できないケースが多いです。そのため現在では、カウンセリングで時間をかけて加害者(ストーカー)に働きかけることで解決しようという試みが進められています。
自治体などによってこういった施設は様々であり、警察はこれらの紹介窓口としての機能もあります。
弁護士に相談する
法律と交渉のプロである弁護士も、ストーカー被害に関して頼りになる相談先です。そして弁護士には警察と同じく、ストーカーに自分の行為を大ごとだと認識させる効果があります。
上で拒否や無視をするためには話し合いが必要だと説明しましたが、話し合いの際の立会人として最も適しているのが弁護士です。
被害者の知人が立ち会えばその人物にストーカーの恨みが向かう可能性がありますが、弁護士であればそのような心配がないうえ、交渉の場に慣れているため適切な対応ができます。また、さらに関係がこじれたときには弁護士の協力が不可欠です。
民事裁判のためではなくその前にストーカーに諦めさせるために、早めに弁護士に相談するのは賢明な選択といえます。
ストーカー対策を扱う探偵事務所に相談する
探偵は直接犯人に諦めさせるためにはたらきかけることはできません。しかし諦めさせるための準備段階では非常に役に立つ調査のプロです。
ストーカー行為をやめさせるためには、まず相手がどこの誰なのか特定しなくては、どんなはたらきかけもできません。かつ弁護士に依頼して交渉を進めるなら、相手がストーカー行為をしている証拠が必要です。さらに裁判に発展するようなら、精度の高い証拠でなくてはなりません。
そういった犯人の特定や証拠集めを専門としているのが探偵です。その他ストーカーの調査に関連するものでいえば、盗聴器発見調査なども行っています。盗聴器から犯人が特定できるケースも多いです。
証拠は多ければ多いほどいいので、探偵への相談も早い方がよいです。自分でできる証拠集めの方法もありますが、警察とは違った視点からの調査やアドバイスも受けられることが探偵を活用するメリットです。
ストーカー対策は早めかつ段階的に
ストーカーにターゲットのことを諦めさせるのはとても難しいです。比較的説得しやすい初期から対策を始められればいいのですが、それでも相手を刺激しないように、段階的に対処していく必要があります。
始めは拒否・無視。それでも止まなければ警察・探偵・弁護士などのプロの力を借りての対策。そして最終的には示談や民事・刑事裁判にまで発展することもあり得ます。本当の最終手段である引っ越しを迫られる前に、何としても解決しましょう。
ストーカー問題の解決のために大事なのは、自分1人で解決しようとせず、状況に応じて協力を仰ぐことです。
当事者同士の接触は、ストーカーを誤解させたり逆上させたりすることが非常に多いため、相手を諦めさせるどころか余計に関係をこじらせかねません。話し合いなどの際には必ず適切な第三者を挟んで対応してください。
そして話し合いの立会人としても、ストーカー被害全般の相談先としても、最も役に立つのが警察・弁護士・探偵といったトラブル解決のプロたちです。できるだけ早く相談して、こじれる前に解決しましょう。
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