【投稿日】 2019年9月27日 【最終更新日】 2021年10月21日

会社の経理を任せている従業員には、絶大な信用を置いている経営者も多いことでしょう。毎日の少額なお金から巨額な契約金に至るまで、会社の経理を担当する社員には、常に重大な責任が掛かっています。

しかし、会社のお金を自由に扱っているという間違った認識から、残念なことに横領に手を染める社員も少なくありません。しかも経理はお金の流れを管理する立場にあるため、発覚した時にはすでに証拠もない、というケースもあるのです。

経理の社員が横領を行った場合、本当に解決するのは難しいのでしょうか。経理の横領の手口とその心理をご紹介しながら、経理担当社員の横領を解決する方法を探っていきましょう。

経理を担当する人が横領する心理とは

会社のお金と密接に関わっている経理は、大切な仕事であるという自覚がある反面、お金に対する意識が危うくなること少なくありません。では、経理を担当する人がどのような気持ちで横領をするのか、その心理について詳しくみていきましょう。

目の前に自分が扱えるお金があるという状況

経理の人は、会社のお金の流れを把握して動かす機会が多くあります。日常の売上金だけではなく、銀行口座に入っているお金の送金や引き出しなども、経理の人の重要な仕事です。

これは、経理担当であればどの会社でも当たり前の状況ですが、目の前に自分が扱えるお金があるという状況は、ともすればお金に対する所有者から預かっているという意識が薄くなるのです。

実際に経理や銀行でお金を扱った経験がある人の中には、大金を当たり前のように動かす状況に感覚が麻痺してしまったというケースもあります。普段は滅多に目にすることがない大金も、慣れてくるとそこにあるのが当たり前という感覚になるのです。

勿論、経理が扱うお金はすべて会社から預かっているお金です。しかし、目の前で日常的にまとまったお金を扱うことで、預かっているお金→自分が動かせるお金という認識に陥りやすくなります。このような感覚が芽生えると、経理の人は横領という意識が薄れて犯罪に手を染める可能性が高くなっていきます。

知識と経験からバレない自信が生まれる

経理の人は、いわば会社のお金を扱うプロです。どの会社から支払いがあったのか、口座にどのくらいのお金があるのか、場合によっては会社の口座の動きまで把握していることも少なくありません。

さらに、経理の人はお金の流れを管理することが仕事となりますので、どうすればバレないかという知識も持っています。請求書の処理やお金が下りるまでの一連の作業を経験しているので、バレないように誤魔化す方法もわかるのです。

経理のプロであるからこその信頼ですが、そのプロとしての知識と経験がバレない自信となってしまい、横領に手を出す結果となっています。

誰にも知られない環境が横領を後押しする

どれだけ知識と経験があったとしても、複数人で仕事をこなしている場合、簡単に経理が横領することはできません。経理の横領で一番多いケースは、誰にも知られずに横領することができたという環境です。

例えば、ある程度の人数が揃っている経理部署の場合、一連の処理をすべて1人の人が行うことはほとんどありません。払い戻しの請求書や会社の口座を扱う場合でも、一連の流れを複数人で分業します。これにより、お互いが監視出来る体制となるので、何かあった場合バレないというリスクは格段に低くなります。

しかし、中小企業で社員が少ない場合、経理の仕事をごく少数で回すことも珍しくありません。これはお金の流れをすべて1人の人が処理をすることになるため、もし横領をしても誰にも気づかれないのです。

いくらバレないという自信があっても、人の目がある以上手を出すことはできません。お金に関する信頼を会社から得ている状態で、誰にも知られずに横領できる環境が整っていることが、経理の人の横領を後押しする一番の原因と言えるでしょう。

実際に行われている経理担当の横領の手口とは

経理を任せるからには、お金に関して信頼のおける人にお願いする経営者も多いことと思います。中には、家族・親族経営で身内の人だからこそお願いしているという人もいらっしゃることでしょう。

しかしその信頼を逆手に取り、横領を行うケースが多いのもまた事実です。経理の人はどのように横領を行なっているのか、実際にあった横領事件の手口からその具体例をみていきましょう。

売り上げ金の小口の着服

売上金などの現金を確認する時、小口の金額を少しずつ着服する手口です。最初は千円、二千円といった「数え間違えてもおかしくない」金額を横領するため、経営者側が気がつくことはあまりありません。

ただし、何度も成功を繰り返すうちに大胆になり、数万円単位になったところで発見されることはあります。具体的な例としては、以下のような手口です。

  • 売上金から直接お金を着服し、違算金として報告する。
  • 預かったお金から小口の金額を着服し、帳簿上で帳尻合わせをする。
  • 買い出しに行った時のお釣りを誤魔化す。
  • インターネットでの買い物に詳しくない経営者に対し、ネット決済は領収書が出ないからと言って嘘の金額を報告し、差額のお金を着服する。
  • 預かったお金を着服した後、「盗まれた」といって騒ぐ。

中小企業で人間関係が近いと、その場で現金やり取りをすることもあるためさらに発見されにくく、勘違いや数え間違いなどで済ませることも少なくありません。わずかなサインを見逃さないよう、こまめに帳簿をチェックする必要があります。

会社の口座からの送金や不正出金

経理の立場を利用して、会社の口座から直接個人口座へ振り込んだり現金を引き出す手口です。特にオンラインの決済は、出入金の記録や手続きもすべてネット上で行われますので、経理の人がメインになっていると簡単に不正出金されてしまいます。オンライン決済でなかったとしても、口座の管理を特定の人に任せてしまうと横領の可能性が高くなります。

もし経理担当者に次のような行動が見られる時には、横領の可能性を考えて早めに対応することが大切です。

  • 通帳記入を他の人に任せることを嫌がる。
  • 大口のお金の振込を行う時、必ず特定の経理担当者だけが銀行へ出向く。
  • 会社の口座の通帳を見せたがらない。
  • 口座管理を1人だけでやりたがる。
  • 使用済みの通帳やキャッシュカードの処理を勝手に行う。

実際に、取引のある銀行員が上記のような行動に違和感を感じ、会社の上層部に報告してくれたことで横領が発覚したケースもあります。横領したお金を使い込まれると回収が難しくなりますので、上記のような行動に気がついた時には、銀行や探偵に相談して経理担当者の動向を把握するようにしましょう。

書類の偽造と印鑑の悪用

お金の出入金を決定する重要な書類の偽造や、出入金に必要な印鑑などの悪用も、経理の人による横領にはよくある手口です。信用されていることを逆に利用し、経理という立場から疑われにくいという状況にあるため、被害総額も巨額になることが少なくありません。具体的な例としては、次のような手口になります。

  • 上司から預かった印鑑を利用して、偽の精算書を作成しお金を横領した。
  • 資材購入の書類を偽造し、発注を多目に掛けて余った分を転売した。
  • 他の社員から提出された請求書に金額を上乗せした。
  • 会社の銀行印を勝手に使用してお金を引き出した。
  • 経理を一任されている立場を利用し、売掛金の額を操作して差額を横領していた。

お金を動かす決定権が1人に集約されている場合、経理担当者が大胆な書類の偽造や印鑑の悪用を行なっても、それに気がつくまで時間が掛かってしまいます。もし経理担当者の行動に違和感を覚えた時には、すぐに専門の知識がある第三者に相談することが重要です。

用意周到な経理の横領に対抗するには専門家が不可欠

経理担当の社員は、ある意味お金を扱うプロの立場でもあります。だからこそ、品行方正であることが求められますが、お金を扱っているうちに金銭感覚が狂ってしまい、横領に手を染めることも少なくありません。

経理による横領はバレないように用意周到に行われますので、その証拠を見つけるためには、経理の人に対抗出来るだけの知識と経験を持った専門家が必要です。具体的な例としては、次のような人達になります。

税理士に相談してチェックをしてもらう

顧問税理士がいるのであれば、一度帳簿やお金の流れを詳しく確認して貰いましょう。帳簿上で誤魔化している場合、本来支払うべき税金も払えてない可能性があります。申告漏れは一歩間違うと会社の経営自体を揺るがしかねませんので、おかしいと思った時には税理士に精査してもらう方が良いでしょう。

もし税理士による精査で問題があった時には、横領の証拠として指摘された部分を細かくまとめ、それを持って警察や弁護士に相談し、今後の対応を決めるようにしましょう。

取り引き銀行に申し出て履歴を確認する

会社の取引銀行に相談するのも、お金の流れを確認する上では大変有効です。実際に、経理担当の窓口での様子がおかしいという理由で、銀行員が履歴を調べて横領が発覚したというケースもあります。銀行からの証言を得ることも立派な証拠となりますので、会社の口座の動きが気になる時には、取引先の銀行に申し出て履歴などを確認してもらいましょう。

明らかにおかしな出入金の履歴があった場合には、必ず履歴を打ち出して貰い、銀行の証言を音声やメモに残して証拠とします。その証拠を持って弁護士や警察に相談に行き、横領した経理担当者への対応を決めるようにしましょう。

探偵に相談して横領した経理の身辺調査をする

経理担当者が用意周到の場合、横領の証拠を集めるのが困難なこともあります。また、横領した後に横領した経理担当が行方不明となるケースも多く、探すのが困難になることも少なくありません。

このような場合、経理担当者の居場所と証拠集めを探偵に相談し、必要な証拠集めをします。直接的な証拠がなくても、身辺調査をすることでお金の流れが見えてくることがありますので、まず探偵に相談した上で、今後の動きを決めていくのも良いでしょう。

経理担当の横領を調べる時の注意点

経理担当による横領の調査は、会社の口座や重要書類を預かっている立場上、他の社員の横領と比べるとさらに用心深く進めていかなければなりません。では、具体的にはどのような点に注意すれば良いのか、その内容についてご説明していきます。

社内での独自調査は行わない

まず一番に注意をしなければならないのは、事情を知っている人間を最小限にとどめ、社内での独自調査を行わないことです。横領という事実自体がショックで、つい社内での聞き込みなどを大々的にやりたくなってしまいますが、経理担当者はお金を通じて社内の人間と広く顔見知りなので、どこで情報が漏れるかわかりません。

もし事前に調査していることがバレてしまうと、まだ残っていた証拠を処分されてしまったり、帳簿上の辻褄合わせや逃亡するきっかけを与えてしまいます。横領事件は、犯人を捕まえなければ解決策が見出せませんので、横領の疑惑がある経理担当者にバレないよう、大々的な社内調査は行わないようにしましょう。

体制を整えて横領被害の拡大を防ぐ

横領の疑いがある経理担当をそのままにしておくと、横領の被害が拡大する可能性があります。かといって、いきなり担当を外してしまうと逆に疑われてしまい、場合によっては逃亡するかも知れません。

一番適切なのは、横領が出来ない体制を先に作っておくことです。例えば、それまで1人でやっていた経理の仕事を2人体制にしたり、社内の仕事体制の改善を理由に会計精査の方法を変えるなど、疑いのある経理担当者に気づかれないよう体制を整えるようにします。

これらの対応策を取ることで、経理担当者の行ってきた横領の流れが見えてくることもありますす。その時には、証拠として押さえながら疑いのある社員を逃がさないようにし、身辺調査などを行なってよりはっきりとした状況証拠を掴むようにしましょう。

早い段階で専門家に相談して証拠集めをする

経理担当による横領事件は、疑いのある社員に気づかれないうちに、どれだけ早く動けるかが解決への近道になります。つまり、証拠隠滅を防いで横領した社員を逃がさないことが大切になるのです。

横領という事実に対し、ショックでなかなか動けないという経営者も多いことと思いますが、大きな精神的負担があるからこそ必要となるのが専門家の力です。お金の流れを確認するために税理士や銀行に相談したり、証拠集めや身辺調査を探偵に任せることで、負担も和らぎ解決するための糸口を早急に探ることが出来ます。

社内で起こった問題に対し、公にはせず内々に済ませようとする経営者も少なくありません。しかし、経理担当者はお金を扱うプロなので、うまく言いくるめられたり行動を予想して先手を打たれてしまう可能性もあります。経理担当による横領が発覚した時には、可能な限り早い段階で専門家に相談し、速やかに解決できるよう心掛けましょう。

まとめ

経理担当の社員が横領する時の手口や心理について、具体的な対応策を交えて詳しく解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。最後にもう一度内容を振り返り、まとめていきましょう。

  • 経理担当の社員が横領に手を染める時の心理の裏には、には、目の前にお金があるという状況とお金の扱いに関する自信、誰にも知られない状況というさまざまな要因がある。
  • 実際にあった経理担当の社員による横領の手口には、預かった現金を小口で横領したり、経理の立場を利用して会社の口座からの出入金、書類の偽造や預かっている印鑑を悪用した横領といったものがある。
  • 経理担当の社員による横領は用意周到なケースが多いので、税理士や取引先の銀行、探偵などの専門家に相談して、早い段階から証拠集めや身辺調査を行うようにする。
  • 経理担当の社員に横領の疑いがある時には、大々的な社内調査はせず疑っていることを相手に気づかれないようにする。
  • 経理担当の社員による横領の疑いがわかった時には、これ以上被害が拡大しないように会社のお金の管理体制を立て直し、予防をしつつ証拠集めを行う。

会社のお金を預かるという大切な仕事を任せているだけに、経理担当による横領は特に精神的なダメージが大きくなります。

しかし、早い段階から手を打たなければ被害金額が拡大したり、疑いのある社員に逃げられるかも知れません。経営者の負担軽減や横領事件の早期解決のためにも、専門家の力を借りて適切な対応を取れるように動いてみましょう。

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