【投稿日】 2018年8月2日 【最終更新日】 2021年10月21日

家の前にごみなどを撒かれる、車や自転車に傷をつけられる、郵便物や洗濯物を盗まれる、根も葉もない噂を流される…。そんな陰湿な嫌がらせは犯人を特定しづらく、かつ証拠がない場合や民事の問題になる場合が多いため、警察もなかなか動いてくれません。

どんな嫌がらせであれ、まずは証拠を集めるのが第一ですが、その証拠を用いての解決法は目的や場合によって様々です。

この記事では、嫌がらせの解決法のパターンと、効果的な対処法についてまとめました。嫌がらせを受けたとき犯人に対してどうしたいのかを決めるためにも、読んでいただきたいと思います。

素人には嫌がらせを解決できない理由

嫌がらせは素人にはとても解決しづらい問題です。まずはその理由を説明します。

相手の特定が難しい

嫌がらせは知人や顔見知りによる恨みによるものもあれば、ターゲットは誰でもよかったという愉快犯や憂さ晴らし的なもの、一方的な片想いに端を発するものなど、犯人も目的も様々です。そのため、犯人を特定すること自体が難しいという問題があります。

「おそらくあの人ではないか…」と、嫌がらせの犯人に心当たりのある場合もありますが、そのような思い込みだけで動くのは非常に危険です。確実にその人物が犯人であるという証拠がなければ、罪に問えないどころか、逆に自分が誹謗中傷の加害者になってしまう可能性もあります。

人間関係の問題

犯人を特定することが難しいことは先ほど述べました。

しかし例えば現場を目撃するなどして犯人を特定できたとしても、やはり簡単に解決には至りません。犯人が全く知らない人物だった場合、相手についてさらに詳しく調査する必要があり、具体的な対処法はその後になります。

また犯人が知っている人物だった場合は、強い恨みが背景にあることも考えられますし、共通の知り合いとの関係にも支障が出てきます。

そのため知らない相手よりも問題がより複雑になりやすいです。知人間の嫌がらせ問題は、当事者同士の話し合いでは解決できず、余計にこじれてしまうことが多いのです。

そうならないためにも犯行の確たる証拠をつかみ、第三者を挟むなどして、慎重な対応をとらなくてはなりません。

重い刑事罰に問えない

後で詳しく述べますが、嫌がらせの中には刑法に触れるものも多いです。しかしそのほとんどが仮に実刑を受けたとしても、せいぜい数年の懲役しか科せられず、下手をすれば犯人により強い恨みを抱かせることにもなりかねません。

そのため、どこに落としどころを持っていくかをよく考えて的確な対処しなくてはならないのです。そしてどんな方法をとるにせよ、やはり確たる証拠が必要となってきます。

相手に罪を認めさせるためにも、示談で賠償金や慰謝料を取るためにも、裁判で勝つためにも、何より大事なのは証拠です。

後で詳しく述べますが、有効な証拠というのは素人に簡単に集められるものではありません。そういった側面からも、ここからは探偵に依頼することを視野に入れた対処法について説明します。

とはいえその前段階でできることもありますし、短期間で嫌がらせが止んだのなら即探偵に依頼する必要はありません。その場合の必要最低限の対処法も説明しますので、それも参考にしてください。

やめさせる・罰を受けさせる…嫌がらせの様々な解決法と対処法

嫌がらせの対処法・解決法は1つではありません。探偵に依頼するにせよしないにせよ、「何をもって解決とするか」を決めなくては、時間も費用も無駄につぎ込むこととなります。

ここではどういった方法があるのかと、それぞれのメリット・デメリットについて説明します。自分が望むのはどの方法なのか、考えつつ読んでください。

無視する・相手にしない

これは最も簡単な対処法といえます。しかしこれで嫌がらせが止むことはごくまれであり、無視することでよりエスカレートしていく可能性の方が高いです。

嫌がらせをやめさせる

解決の最低条件として挙げられるのが、嫌がらせをやめさせることです。

嫌がらせを受けると精神的に大きなダメージを受けるとともに、健康に異常をきたす場合もあります。そのため相手への罰や慰謝料などは望まないから、とにかく現在の状況を脱せられればいいという、現実的な着地点です。

この解決パターンは、相手に不利益を与えないため、こじれる可能性が低いというメリットがあります。また費用が抑えられ、スピード解決も見込めます。

謝罪してほしい

嫌がらせにより生じた精神的被害を少しでも晴らすために、犯人に謝罪を求める被害者の方も多くいらっしゃいます。しかし犯人が自発的に謝罪を行うことはまれであり、やはり弁護士などの第三者をはさんでの対処が必要です。

また謝罪したとしてもその後、嫌がらせが再発しないともいえず、ある意味最も実現しづらい解決法かもしれません。

法的責任を追求したい(刑事罰)

犯人を法的に裁いてしかるべき罰を与えてほしいというのは、被害者としては至極まっとうな要求です。

上でも述べましたが、嫌がらせに類する事案の中には、以下のような刑法に触れるものがあります。証拠さえあれば、これらの罪に問うことは十分可能です。

器物損壊罪

自動車・自転車・ポストなど、他人の所有物を壊したり傷をつけたりする行為がこれにあたります。法定刑は3年以下の懲役又は30万円以下の罰金です。

また不法行為であることから、壊した物に対する弁償責任も負うことになり、被害者は賠償金などで損害の補填を請求することができます。

窃盗罪

洗濯物やその他の日用品など、他人の所有物を盗んだ場合に適用されるのが窃盗罪です。手紙を盗まれた際はこれに加えて親書秘匿罪・器物損壊罪に触れる可能性もあります。

窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。また未遂罪といって、窃盗が未遂に終わっても処罰の対象となります。

住居侵入罪・建造物侵入罪

犯人が嫌がらせのために他人の住居や邸宅(空き家も含む)・敷地に侵入すれば、住居侵入罪あるいは建造物侵入罪に問うこともできます。法定刑は3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。未遂罪も処罰の対象となります。

住居侵入罪と建造物侵入罪は軽犯罪ながら、広い範囲に適用される罪です。

民事で賠償金・慰謝料をとりたい

犯人が不法行為をはたらいていれば、民事で賠償金や慰謝料をとることももちろんできます。

賠償金と慰謝料の違い

まずは賠償金と慰謝料の違いについて説明します。

  • 賠償金:加害者が不法行為により被害者に与えた損害を補償するためのお金
  • 慰謝料:精神的な損害に対する賠償金

つまり慰謝料は賠償金の一種です。

不法行為とは

嫌がらせに関わってくる一般不法行為については民法第709条にこう定められています。

「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」

この文から不法行為を成立させる要点を挙げると、

  • 犯人の故意・または過失による行為に基づくこと
  • 権利または法律上保護される利益を侵害したこと
  • その行為によって予見可能な損害が生じたこと
  • 不法行為を犯した者に責任能力があること

となります。

「権利または法律上保護される利益」は示す範囲の広い言葉ですが、何かを所有したり普通の社会生活を送ったりする権利などを指します。

嫌がらせ行為はこの権利を侵害するものがほとんどです。盗まれたものや壊されたものの補填、さらに精神的な苦痛に対する慰謝料などの賠償を請求することができます。

嫌がらせを解決するためにやるべきこと

嫌がらせの解決パターンのことはわかっていただけたと思います。ではそのために何をすればいいのでしょうか。

犯行の記録をとる

嫌がらせの被害を受けたときに真っ先にすべきことは、嫌がらせの内容と犯行の日時の記録です。壊されたものなどがあれば保存し、被害状況の写真も撮っておきましょう。

記録をつけるうちに犯人について思い当たることがあるかもしれませんし、証拠品や写真を残しておかなくては、後で犯人が分かったとしても打てる手立てがありません。今は無視できるレベルの嫌がらせであっても、今後エスカレートする可能性もあるのです。

また探偵に依頼する場合には、それらの記録が多いほど費用や解決までにかかる時間がおさえられます。

犯人を特定する

どの解決策を選ぶにしても、犯人を特定しないことには話になりません。

嫌がらせは誰かを雇うなどしてやらせることは稀であるため、現場を押さえられれば簡単に相手を特定し、証拠を集めることができます。

探偵は調査・証拠集めのプロフェッショナルです。探偵に依頼した場合の具体的な調査の内容は、概ね以下のようになります。

  • 定点撮影・張り込みなどで相手の犯行をとらえる
  • 犯人が知らない人物であれば、犯人の素性を調査する

その他、嫌がらせのパターンに応じて盗聴器の発見や筆跡・指紋・声紋鑑定なども行います。

素人が特定に乗り出すのは非常に危険です。張り込みや撮影などは技術が必要であり、もし失敗すれば相手を逆上させ、危害を加えられる可能性もあります。また相手は知人で、あなたの行動を把握しているかもしれません。そうなるとあなたが張り込みをしても成功する確率は非常に低いです。

証拠を集める

相手に嫌がらせをやめさせる・制裁を加えるためには、充分な証拠が必須です。警察は証拠がなくては動きませんし、弁護士に依頼して裁判や慰謝料請求をする場合には裁判で通用する証拠が必要となります。

犯人を罪に問う場合には、それだけで有罪判決を見込める証拠がなくてはなりません。そうでなくては警察が告訴状を受理しない可能性が高いからです。

どうしても告訴を受理してほしいなら弁護士に依頼することになりますが、弁護士もやはり十分な根拠がなければ請け負ってくれません。民事訴訟の場合も同様で、証拠不十分で裁判を起こすことは、弁護士にとってリスクが高すぎるのです。

訴訟に使えるような証拠は、素人にはまず集められません。そもそもどんな証拠が有用なのかもわからないのではないでしょうか。探偵に依頼する意味は、ここにもあります。

弁護士と連携して犯人に働きかける

証拠が充分にそろえば、ようやく犯人に直接働きかけられます。この際は探偵と依頼人(被害者)だけでなく、弁護士にも協力を仰ぐことが多いです。

示談で済ませるにせよ法に訴えるにせよ、交渉のプロである弁護士ほど心強い味方はいません。探偵は弁護士ともパイプを持っているので、是非依頼の際にそのことも含めてご相談ください。

嫌がらせの解決法による証拠の使い方・必要となる証拠

では証拠を使って具体的に、どんな方法で解決に向かうのか。具体的に説明します。

やめさせる・相手と直接交渉する

この場合に必要となるのは、相手が言い逃れできないような証拠です。犯行の瞬間をとらえた写真などが有効です。もちろんその時だけだと言い逃れできないように、何回かの犯行の写真がなくてはなりません。

しかし証拠を突きつけても相手が認めない・嫌がらせをやめない場合もあります。その場合は法的手段をとることも考えていると伝えなくてはなりません。裁判や刑事事件になれば相手は社会的信用を失います。それと引き換えに、嫌がらせをやめさせる、あるいは謝罪させるという方法です。

内容証明郵便を送付する

「内容証明とは、いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって当社が証明する制度です。」

つまり郵便局が内容をコピーし、配達日時とともに保存しておいてくれる手紙です。1行当たりの字数や1枚当たりの行数、使用できる文字などが決まっていますが文書の内容は自由で、誰でも送ることができます。

内容証明自体に法的な効力はありませんが、以下のような効果と目的があります。

  • トラブルの内容をはっきりさせる
  • 対応の期限を設け、話し合いの場に来させる
  • 法的措置を辞さないという意思を見せる

内容証明を送ったからといって必ずしも訴訟を起こすわけではありません。相手にこちらを無視できないようにさせることが最大の目的です。

第三者(日本郵便株式会社)に内容を保証されるということは、そこに書かれたトラブルの内容に嘘があっては、差し出した側がその点を責められることになります。そのためにはトラブルを証明する証拠が必要ですし、相手を話し合いの場に来させても証拠がなくては話になりません。

ちなみに内容証明自体は上にも書いたように、弁護士でなくとも誰でも送ることができます。書式の決まりも日本郵便株式会社のサイトに掲載されていますし、現在はオンラインのサービス(e-内容証明)もあるので、証拠とやる気さえあればそう難しいことではありません。

相手に損害賠償を求める

損害賠償を求めるためには、いくつかの方法があります。先ほど述べた内容証明もその1つですが、それだけで賠償が支払われることは稀で、さらに以下のどれかの方法をとることになるのが一般的です。

示談交渉

つまり当事者間での話し合いですが、往々にして素人同士ではスムーズには話が進みません。

弁護士に依頼すると、話し合いがスムーズに進むだけでなく、以下の書類を作成して後のトラブルにも対応できます。

  • 示談書:示談の内容の証明となる文書
  • 公正証書:法務大臣に任命された公証人が作成する、法的拘束力のある文書
  • 和解書(合意書):両者が和解したことを証明する文書

これらを作成することによって、支払いがなされない場合にも手続きを踏めば給与・財産の差し押さえができます。また言った言わないでもめることもなく、適切な対応をとれるのです。

民事裁判・調停

民事訴訟を起こし裁判に持ち込むのは、法的には最終的な手続きといえます。そして証拠が最も大きな働きをする解決法でもあります。証拠が不十分であれば、原告の訴えは認められず、もちろん賠償もなされません。

裁判を起こす場合、賠償金の支払いまでの大まかな流れは以下の通りです。

  1. 原告・またはその弁護士が裁判所に訴状を提出
  2. 裁判で裁判官が双方の答弁を聞き、証拠を調べる
  3. 判決を下す/和解する
  4. 判決または和解書に従って賠償金が支払われる
  5. 支払いがなされなければ強制執行が行われる

2で提出される証拠は、加害行為・損害の発生・加害行為と損害の因果関係のすべてを証明するものでなくてはなりません。原告(訴えた側)には、それらの証明義務があります。

裁判による解決の最大のメリットは、プロの執行業者による強制執行ができる点です。しかし裁判には膨大な費用と時間がかかるため、途中で和解を提案することも多いです。

調停委員が間に立って双方の和解を図る調停もありますが、こちらも賠償金の支払いまでの流れはおおむね同じです。ただし調停はあくまで話し合いであり、合意に至らなければそれまでとなります。

嫌がらせの対処法の注意点まとめ

ここまで読んで、嫌がらせの対処法についてそのパターンや大まかな流れをご理解いただけたと思います。それでは最後に、注意点をまとめておきます。

  • 何より大事なのは犯人の特定と証拠
  • 素人による調査は危険なので絶対にしない
  • 犯行の時刻や内容など、写真なども残して詳細に記録する
  • 解決法はいくつかあるので、自分にとって最善の策を選ぶ
  • 解決には探偵や弁護士などのプロの手を借りるのがベター

これだけ並べると大変だと思うかもしれませんが、あなたは1人ではありません。全力で協力いたしますので、安心して依頼してください!

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