ご近所トラブルや全く犯人に心当たりのない嫌がらせ・いたずらなどの被害を受けた場合、警察に相談しようと思う方も多いでしょう。しかし警察は必ずしも動いてくれるとは限りません。むしろ動いてくれない場合の方が多いのです。

ではそんな場合、どうすれば警察が動いてくれるのでしょうか。あるいは動いてくれない場合にどうやって嫌がらせ・イタズラを解決すればいいのでしょうか。警察への相談を視野に入れた対処法・解決法について説明します。

「嫌がらせ・いたずら被害」警察への相談・被害届・告訴の違い

自転車やポストが壊される、家の前にごみを放置される、悪いうわさや怪文書をまかれるなどの嫌がらせが起きた時、警察に協力を仰ぐにはいくつかの方法があります。まずはその主な3つについて説明します。

相談・警察相談専用電話#9110

言葉通り、警察署や交番への「相談」です。

現在の被害状況とその他のわかっている情報を伝え、どうすればいいか、何らかの罪に問えるかなどを相談します。被害届を出すことを目的に行うことが多いですが、被害に関する情報があいまいであったり、不法行為にあたるかどうかの判断が難しかったりすると、被害届の受理は渋られがちです。

また相談したからといって積極的に捜査してくれるということは稀です。しかし良い警察官にあたれば、パトロール回数を増やすなど何らかの対策を立ててくれることもあります。また「相談した」という実績を作っておけば、犯人との交渉の際にそれを伝えてけん制することもできるのです。

警察への相談は誰でもできますが、もし交番や警察署、100番通報などがためらわれるようなら、警察相談専用電話の#9110にかけてみてください。緊急性・事件性があるかどうかなどの質問に電話で答えてくれます。

警察に被害届

被害届は犯罪の被害を捜査機関(警察)に申告する書面で、管轄の警察署や交番で提出することができます。

被害届の提出に必要なもの

  • 身分証明書
  • 印鑑
被害届に記入する項目は以下の通りです。

  • 1. 被害者の住所・氏名・年齢・職業
  • 2. 被害のあった日時・場所
  • 3. 被害の状況と内容
  • 4. 盗まれた・壊されたものがあればその金額など
  • 5. 犯人の情報(心当たりのある人物、姿を見たならその特徴など)
  • 6. 遺留品・診断書などの証拠(あれば提出)

警察に教えてもらいながら書くので、わからなくても大丈夫です。とはいえ2~6の項目は詳細であるほどいいので、よく覚えている被害直後に届け出るか、しっかりとメモをとっておく必要があります。警察が受理してくれれば届け出は完了です。

しかし被害届が受理されても、警察には捜査などの義務は生じません。警察に捜査してもらうための方法は、この後で詳しく解説します。

刑事告訴・告発

刑事告訴も告発も、警察などの捜査機関に犯罪の事実を訴え処罰を求めることを指します。2つの大きな違いは、被害者本人が訴えるか、その他の人が訴えるかです。

嫌がらせは親告罪(被害者自身しか訴えられない罪)にあたる場合が多いため、主に告訴の形をとることとなります。

告訴を受理すれば、警察には事件処理の結果を通知する義務が生じるため、捜査を放置できないというのが、被害届提出の場合との大きな違いです。

告訴からの流れは、概ね以下のようになります。

  1. 口頭・あるいは書面(告訴状)で警察に告訴
  2. 警察が受理すれば捜査し、事件に関する調書を作成する
  3. 調書を証拠物などとともに検察官に送付
  4. 検察官が起訴する(裁判にする)か不起訴にするかを判断
  5. 検察官の決定が告訴した本人に伝えられる
  6. 起訴されれば裁判になる

告訴が受理されたとしても実際はここまでの流れにかなりの時間を要します。それ以前に告訴が受理されないことも非常に多く、かつ最終的に不起訴になればまた1からやり直しです。

嫌がらせ・いたずら被害では警察が動いてくれない理由

上で述べたように警察へ働きかける方法はあるものの、それが即解決に結びつくわけではありません。嫌がらせは警察には解決が難しく、なかなか積極的に捜査してはくれない案件なのです。

ここではその理由と、それを踏まえた対策について説明します。

警察は凶悪事件を優先する

警察は全国的に人手不足です。そのため小さな事件よりは大きな事件に、そしてより凶悪事件の方に人員を割かざるを得ません。

その対策の1つに、自分と同じような被害者同士で集まるという方法があります。そうすることで被害の大きさを訴えることができるので、警察が動いてくれる可能性も高まります。また警察が無理でも、市役所などが動いてくれる場合もあります。

しかしこの方法が使えるのは悪臭や騒音など、広範囲に被害が及んでいる場合に限られており、1人あるいは1軒をターゲットにした嫌がらせには無効です。

また、この方法をとる場合には弁護士などの法律の専門家に頼ることをおすすめします。大勢で戦うことは力にもなりますが、もめやすいという欠点もあります。そして弁護士に依頼するとなれば、やはり確実な証拠が必要です。

犯人を特定しづらい・証拠がない

嫌がらせは人目を忍んで行われることが多いため、犯人の特定と証拠集めが難しいです。犯人もわからず証拠もないという案件を解決するには、限られた警察の人員ではほぼ無理です。そのため警察は、被害届の受理自体を避ける傾向にあります。

また証拠がなくては被害が本当にあったことなのか警察も判断ができません。それを利用して交渉を有利に運ぶためだけに被害届を出す者もおり、それが警察の及び腰に拍車をかけているのです。

つまり警察に動いてもらうためにはあらかじめ相手を特定し、証拠を集めておくことが重要になります。この方法については、この後で詳しく説明します。

不法行為であるという証明が難しいパターン

不法行為とは、

「故意または過失によって他人の権利や法律上保護されるべき利益を侵害する行為」

のことで、不法行為による物理的・精神的被害に関しては犯人に損害賠償を求めることができます。

また不法行為には刑法に触れるものも多く、刑法に触れれば警察は最低限被害届は受理してくれるはずですが、問題はそれを不法行為と証明できるかどうかです。

これは先ほども挙げた、悪臭・騒音などの嫌がらせに当てはまりやすいです。どんなに周りが迷惑を感じていても、それが生活するうえで仕方のないものであったり、迷惑を感じて当然と言えるほどにひどいものであると証明できなかったりすると、それは不法行為とは認められません。


そしてそのような場合は、被害届も受理されません。

こういった判断の難しい被害を証明するには、以下の3つの方法があります。

  • 1. においや音を計測する特別な器具を用いる
  • 2. 医者に健康被害に関する診断書を書いてもらう
  • 3. 悪臭・騒音などを発生させている者の故意・過失を証明する

1は専門の業者を委託すれば、費用はかかりますが数値ではっきりと証明できます。2も医者の診察を受ければ書いてもらうことができ、1と併せて健康被害との因果関係の証明になります。

最も証明が難しいのは3で、犯人の行動調査(張り込みや尾行など)を探偵に依頼するのが最も確実です。行動調査はかなり難しい調査であり、素人にできるものではありません。被害者本人が行うと余計に犯人との関係がこじれたり、暴行を受けたりする可能性もあるので、絶対に自分での調査はしないでください。

告訴して冤罪だったという結果は避けたい

告訴を受理すれば警察は検察に調書や証拠などを送付すること、それによって裁判になるかならないかが決まることは上で述べました。

つまり警察が逮捕した犯人(被疑者)を被告として裁判を起こすのです。かりにそれが冤罪であったと後で判明すれば、警察の責任問題となります。警察としては、何としてもそんな事態は避けなくてはなりません。

それを考えれば、警察が告訴の受理を渋るのもある意味当然といえます。

嫌がらせ・いたずらの被害届を出して警察を動かすために必要な証拠

被害届は、警察はどんな場合であれ受理しなくてはならないとされている「犯罪捜査規範 第六十一条」があり、提出すること自体はそこまで難しくはありません。運悪く受理しない警察にあたった場合も、弁護士とともに出向けばまず大丈夫です。

しかし問題は、被害届を受理したところで捜査をしてくれるかどうかです。

被害届はあくまで犯罪の被害に遭ったことを申告する書類でしかなく、警察はその中から凶悪事件や解決できそうな事件を優先的に扱います。

嫌がらせは凶悪事件ではないので、警察もそこまで人員を割くことはできません。警察に積極的に捜査をしてもらうためには、解決につながるような証拠が必要となります。

被害届を出すためには「被害の証拠」を

まず被害を受けたことを証明する証拠は必須です。被害内容があいまいだと、警察も被害届を受理することができません。

具体的には、

  • 壊されたもの
  • 家の前・敷地内に放置されたもの

などが被害の証拠となります。

壊されたり放置されたりしたものはすぐに処理してしまいたくなりますが、犯人の指紋採取などのためにも捨てずにそのまま保管しましょう。そしていつどんな被害があったかを記録していてください。

またできるだけ早く被害届を出すことも大事です。証拠の保全のためもありますが、警察が公訴できる公訴時効を過ぎると、被害届を提出されても有罪に問えなくなるからです。

警察に捜査してもらうためには「相手の特定」が必須

上でも述べたとおり、警察は解決につながるような証拠がなければ積極的に捜査することはありません。中でも最も大事なのが、犯人の特定につながる証拠です。

物品で言えば、犯人の遺留品や足跡がそれにあたります。また犯人が触れたものからは指紋が採取できるので、できる限り現状維持に努めてください。

相手を特定する方法

警察を動かすには被害の証拠と犯人の特定からと書きましたが、実際被害者本人にできるのは、残念ながら証拠の保全と被害内容の記録くらいです。指紋を採取しても犯人に心当たりがなければ警察の捜査は進展しませんし、嫌がらせが解決する見込みはかなり薄いです。

どちらかといえば被害届を提出する目的は、犯人が判明したときに法的手段に訴えるためと考えておいてください。

相手の特定には、張り込みや尾行といった専門的な調査がどうしても必要になってきます。これらは素人には難しい調査ですが、被害者に命の危険が迫っている場合でもなくては、警察はそこまではやってくれません。そこで、探偵の出番となります。

探偵は調査のプロです。犯行現場の張り込みや、怪しい人物の尾行を行い、誰が・いつ・どこで・何をしたかという証拠を確実に集めます。必要に応じて専門の業者に依頼して指紋・筆跡・声紋などの鑑定を行うことも可能です。

探偵や民間業者の集めた証拠がそのまま採用されることはありませんが、警察はそれに基づいて捜査をし、解決につなげることができます。

嫌がらせ・いたずらで刑事告訴のために必要な証拠

刑事告訴は、犯人を刑事罰に処するように訴えることです。被害者本人が行うこともできますが、一般的には弁護士に依頼します。

ではまず、どのような行為が罪にあたり刑事罰に問えるのかについて説明します。

嫌がらせ・いたずらに関連する罪状

物質的な嫌がらせ・いたずらの案件で問える罪には、主に以下のようなものが考えられます。

  • 器物損壊罪:他人の所有物を壊す・傷つけるなどの罪
  • 窃盗罪:他人の所有物を盗む罪
  • 住居侵入罪・建造物侵入罪:他人の住居・邸宅・敷地内に許可なく侵入する罪

車や自転車、ポストなどを壊されたなら器物損壊罪、洗濯物や生活用品・手紙などを盗まれれば窃盗罪となる可能性が高いです。また嫌がらせを行うために住居などに侵入していれば、住居侵入罪・建造物侵入罪が適用されます。

また手紙や怪文書で脅したり悪いうわさを広めたりされた場合は、名誉毀損、侮辱罪、信用毀損罪、業務妨害罪、脅迫罪などにも問える可能性があります。

告訴のためには「有罪を証明する証拠」を

充分刑事罰に値する嫌がらせ行為ですが、告訴して警察に受理されるのは簡単ではありません。

本来は原告に刑事告訴のための証拠を集める法的な義務はありませんが、上で述べたような理由によって、警察は告訴の受理を避ける傾向にあります。そのため、警察を動かすだけの証拠が必要となるのです。

それが

  • 犯罪事実を特定する証拠
  • 確実に有罪を証明できる証拠

の2つです。

犯罪事実の特定とは、誰が・いつ、刑法に触れるどのような行為を行ったのかという事実関係をはっきりさせることです。告訴状の主な内容となるため、これがなくては話になりません。最悪これさえあれば、弁護士が粘り強く交渉することで告訴が受理される可能性は充分にあります。

そして告訴の受理をためらう警察を迅速に動かすためのものが、確実に有罪を証明できる証拠です。誰が・いつ、刑法に触れるどのような行為を行ったのかを証明するのです。

これは前述の「相手を特定する方法」でも説明したとおり、素人が集められるものではありません。写真や音声データ、場合によっては指紋などの鑑定結果などが必要となります。探偵に依頼し、確実な証拠を集めましょう。

これらの証拠は、仮に刑事告訴で不起訴となっても、民事訴訟を起こす場合や示談交渉の場でも充分に使えます。嫌がらせの解決のために決して無駄にはなりません。

警察では解決できない嫌がらせ・いたずらの対処法・解決法

警察を動かすためには、

  • 被害内容の証明
  • 犯人の特定
  • 有罪を証明できる証拠

が必要であることはわかっていただけたと思います。

しかしたとえ犯人を刑事罰に問えたとしても、嫌がらせが解決できるかどうかは別の問題です。なぜなら、器物損壊などの軽犯罪で課せられる罰はせいぜい10年以下の懲役か50万円以下の罰金であり、その程度では犯人の恨みを強くする結果になりかねないからです。

これでは嫌がらせがエスカレートすることも考えられます。

警察に訴える以外の対処法・解決法

被害届・刑事告訴などで嫌がらせが解決しなかった場合に考えられる他の解決法はいくつかあります。

  • 1. 示談交渉
  • 2. 調停・民事裁判
  • 3. 引っ越す、学校や会社を辞めるなどして犯人と物理的に接触を断つ

1は法的手段を取らず、相手と直接交渉する方法です。弁護士に間に立ってもらい、示談書や同意書などの書類を交わし、賠償などについても取り決めて解決とします。

2は示談では解決しなかった場合にとる方法で、調停は調停委員を挟んでの話し合い、民事裁判は裁判官による言い分の聞き取りと証拠の取り調べが行われます。その結果に応じてプロの執行業者による強制執行が可能となるため、損害賠償が支払われないといったトラブルを防げるのが最大のメリットです。

3はある意味最も完璧な解決法です。しかし被害者にとってはすっきりしない結果となります。そのため、この手段しかなくなる前に嫌がらせを上手く解決することが望ましいです。

被害届・刑事告訴は交渉材料にもなる

警察に訴えても嫌がらせの本当の解決になるとは限りませんが、被害届や刑事告訴にも充分に大きな意味があります。

被害届を出されたり刑事告訴をされたりすることは、誰でも避けたいと思うものです。そのため、それを示談の際の交渉材料として使うことができます。

相手が言い逃れできない証拠をそろえ、被害届を出す、あるいは刑事告訴も視野に入れているということを伝えれば相手も事の重大性を認識するので、交渉を有利に進められます。嫌がらせのような案件では、どちらかといえばこういった方法が有効です。

嫌がらせ・いたずら被害は、警察に訴えるばかりが解決法ではない

嫌がらせ・いたずらは証拠を集めづらく、解決が困難な案件の1つです。そのため警察が積極的に捜査することもあまり期待できませんし、刑事告訴することで相手との関係がこじれることもありえます。

よって警察の被害届などはあくまで解決のための手段の1つと考え、探偵や弁護士に依頼することを視野に入れてみてください。

探偵が集めた証拠はどんな解決法を選ぶにせよ役に立ちますし、交渉のプロである弁護士は警察への働きかけにも示談や民事訴訟にも心強い味方となります。