【投稿日】 2023年1月11日 【最終更新日】 2023年6月25日

会社を経営していくのに欠かせない資金繰りの問題。

この資金繰りの問題をそのまま放置してしまうと、会社の経営がうまくいかず、倒産してしまうというリスクもあります。

資金繰りがうまくいかないまま状況を打破できず、倒産していく企業が近年では増えているようです。

会社の資金繰りがうまくいかない原因の一つが、不良債権の問題です。

なぜなら、売掛金の回収がうまくいかなくなると、自社でのお金が回らなくなってしまうからです。

この不良債権の問題を解決する方法の1つが、債権譲渡です。

今回は、債権譲渡について、メリットデメリット、必要な手続きなどを含めて詳しく解説していきます。

債権譲渡とは?

債権譲渡とは、債券の内容を変えることなくその権利を移転するという行為になります。

取引先などに、売掛金の支払いを催促したところ、手持ちのお金がない、もう少し待っていて欲しいなどと言われることがあります。

長年取引している、信頼のある相手先であれば自社判断で待つことも良いでしょう。

しかし、自社の資金に余裕がなかったり、相手方とそこまで信頼関係が築けていない場合には相手の言うとおりに待っていると自社の金利に問題が出てしまいます。

自社の存続を第一に考えた場合、債権回収を行うなどの対応が必要です。

こういった事態に陥ってしまったとき、相手方から「債権譲渡」を提案される場合があります。

債権譲渡は、相手方が現金化できる資産を持っていない場合でも債権自体を保有していることがあります。(顧客との取引などがあり、まだ入金がされていない取引が残っている場合にはそれも債権として扱われます)

この債権を譲渡してもらう、またはこちらが譲渡する場合を債権譲渡といいます。

現在支払う資金はないけれど、今後支払われるお金の権利を譲渡すること、と言い換えても良いでしょう。

債権を譲渡された場合には、債権を回収する権利が移行するため、これからお金を払う人から直接お金を回収することができます。

債権譲渡のメリット

債権譲渡のメリットは主に、「債権回収の選択肢が増える」「自分で第三債務者から債権回収ができるようになる」「担保の設定と優先的な弁済を受けられる」などです。

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

メリット1:債権回収の選択肢・可能性が増える

債権回収を行うためには、まず、内容証明郵便で請求書を送付し、話し合いを行うことからスタートします。

解決できない場合には訴訟を起こし、裁判所の判決に基づいて強制執行をとると言うが一般的な流れです。

しかし、債権譲渡を選択する事により、金銭以外でも弁済を受けられる土地や自動車、会社の設備なども債権回収の対象物として加えることができます。

債権自体は金融機関の担保に設定されていることは少なく、債権回収の可能性が高まるのも事実です。

相手方の経済状況が酷く悪化していない場合には、速やかに債権回収を行うことができます。

メリット2:自分で第三債務者から債権回収できるようになる

債権譲渡を行うことで、支払いのタイムラグをなくせるのもメリットの1つです。

相手方が「支払いを待って欲しい」といってきたとしても、債権譲渡を行ってしまえば第三債務者(相手方の取引先など)から直接債権を回収できるようになります。

これにより請求がスムーズに通り、スピーディに資金不足の解消ができます。

メリット3:担保の設定と優先的な弁済を受けられる

相手先の企業が倒産しそうになった場合でも、他の債務者よりも有利に債権回収を行うことができるのが債権譲渡のメリットです。

例えば、他の債務者が差し押さえを行おうとしても、担保に入っているなどの理由から、回収しきれないというケースも十分に考えられます。

しかし、債権であれば相手先の経営状態や資産状態などに関係なく回収できる見込みがあります。

債権譲渡の際に、担保契約を行っておくことにより、経営が困難になった場合や差し押さえが必要になったときに優先的に弁済を受けることができるのです。

このような事態も想定して、債権譲渡の際には譲渡担保契約を同時に締結しておくことが大切です。

このように、債権譲渡を行うことで、債権回収の幅が広がります。

相手側が資金に困っている場合には、第三者債務者に期待して、債権譲渡を積極的に活用していきましょう。

債権譲渡のデメリット

債権回収の幅が広がるという意味で、メリットが大きいように思える債権譲渡ですが、一方でいくつかのデメリットも存在します。

デメリットとしては「満額の回収が出来ない可能性がある」「債務者の支払い能力が未知数である」ことなどが挙げられます。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

デメリット1:満額の回収ができない可能性がある

債権譲渡を行って譲り受けた債権がそもそも回収したい債権と同じ額であるとは限りません。

50万円の債権回収のために譲り受けた債権が、30万円である可能性もあります。

この場合だと、全額回収しても20万円の損失です。

思わぬ損失を出さないためにも、債権譲渡を行う前に譲り受ける債権の金額をあらかじめ調べておくことが重要になります。

デメリット2:第三者債務者の支払い能力や経済状況が未知数である

たとえ債権譲渡で債権を譲ってもらったとしても、第三者債務者は直接取引したことのない企業や個人であることがほとんどです。

そのため、支払い能力がどの程度あるかが不明瞭です。

第三者債務者も経済的に困窮していた場合、債権回収が難しい可能性があるのも事実です。

債権譲渡を行う前には、第三者債務者の状況もある程度調べておく必要があります。

債権譲渡の注意点

債権譲渡の後に債権回収をするためには、いくつか注意しなければならないことがあります。

主に「既に譲渡されていないか」「時効は迫っていないか」「譲渡禁止特約ではないか」などの5点です。

債権譲渡をする際にはこれらのことに気を付けながら行わなければなりません。

注意点1:債権譲渡が既に行われていないか

債権譲渡が二重で行われていた場合、先に譲渡した方が優先されてしまいます。

ただし、対抗要件によっては、二重譲渡が行われていたとしても権利が勝る可能性があります。

時には、相手方が二重譲渡だと分かったうえで債権譲渡を行い、不当に免除されようとする場合もありますので注意が必要です。

債権の譲渡に関しては、法務局で管理されている登記事項概要証明書や概要記録時効証明書を取得しておく必要があります。

注意点2:第三債務者は支払いに応じてくれるか

第三者債務者が支払いに応じてくれるかは非常に大事なポイントになります。

相手方の不払いがあるのに、その取引先を無条件に信頼するのは難しいと言えるでしょう。

債権譲渡を行う前に、まずは第三者債務者が支払い可能かどうか、経済状態はどの程度のものなのかを調査しておかなければなりません。

第三者債務者が、相手方から既に弁済している債権を掴まされている場合もありますので、お互いに注意しておく必要があります。

注意点3:債権の時効は迫っていないか

債権の消滅時効は3年とされています。

時効が迫っている債権を譲渡されたことによって、こちらからの行動を早く起こさなければ権利を失い、損失が出るという可能性もあります。

必ず時効を確認し、時効が迫っている場合には内容証明郵便で申告しましょう。

申告を行えば時効を6か月間ストップすることができます。

注意点4:譲渡禁止特約に当たらないか

債権には、譲渡禁止特約がかけられている場合があります。

譲渡が禁止されている債権を受け取ってしまうと、契約は無効です。

しかし、無過失である場合や、第三者債務者が承諾している場合には、無効にならないケースがあります。

債権譲渡を行う前に、必ずリサーチを行うことが必要です。

注意点5:詐害行為にあたらないか

担保権を設定するにあたり、確認が必要なのが、「詐欺行為にならないかどうか」です。

もし、債権に対して譲渡担保契約をすることが他の債権者の権利を害する行為なら詐害行為として訴えられ、取り消されてしまうこともあるのです。

例えば、相手先の会社が倒産目前で、売掛金だけを頼りにしている場合、それを担保として設定するのは詐害行為として認められてしまいます。

また、複数人の債権者がいるのにもかかわらず、自分だけ債権譲渡を無断で受けるのも詐害行為だとみなされてしまう可能性が高いと言えます。

詐害行為は、財産権を目的とし、相手方の損害があることを分かった上で譲渡を無理に行うと成り立ちます。

詐害行為取消権を行使することでその債権譲渡を取り消すことも可能です。

詐害行為取消権の判断基準は難しい為、弁護士などに相談する必要があります。

債権譲渡手続きの流れ

債権譲渡の手続きは主に次のSTEP1〜STEP3の流れで行われます。

STEP1:契約

まずは相手方と債権譲渡契約を結びます。

契約書のテンプレートはインターネット上で見つけることができますが、あまりおすすめしません。

債権譲渡契約は、譲渡の対象となるものやその性質を見極めながら締結するのが理想ですので、必ず弁護士と相談しながら行うようにしてください。

契約書に記載し、契約で必ず決めておかなければならない項目は以下の通りです。

  • 担保に取る債権の詳しい情報
  • 債権譲渡禁止特約の有無
  • 対抗要件の取得方法
  • 取立権限消滅日

これらを必ず相手方と相談したうえで明記しておきましょう。

口頭約束などにしてしまうと、あとからトラブルに発展しかねません。

STEP2:対抗要件の設定

債権譲渡の手続きを行うにあたり、対抗要件というものを設定しなければなりません。

対抗要件とは、債権譲渡を行った後、その効力を持たせるのに必要なものになります。

対抗要件には2種類あり、「債務者への対抗要件」と、「第三者への対抗要件」に分けられます。

【1】債務者への対抗要件

債務者に対して、債権が有効であるということを主張するための条件を債務者への対抗要件といいます。

債権譲渡契約は受取人と譲渡人の間の契約であり、債務者は無関係になります。

債務者が債権者になったということを認識してもらわなければなりません。

債務者への対抗要件を取得するためには、「債務者の承諾を得る方法」と「債務者に通知をする方法」の2通りに分けられます。

通知を行う場合には、債権が譲渡されましたという内容の書状を郵便で送付するだけで済みます。債務者の数が多い時なども郵送で問題ありません。

しかし、受取を確認出来ないとトラブルに発展する場合があるので、必ず内容証明郵便で送付するようにしましょう。

【2】第三者対抗要件

債権譲渡契約に必ず必要になるのが第三者対抗要件の取得です。

第三者への対抗要件というのは、受取人、譲渡人、債務者のどれにも該当しない第三者に対して、受取人が債券を有しているということを主張するものです。

第三者対抗要件を取得することで、債権の二重譲渡が行われていた場合に自信の権利を主張することができます。

第三者対抗要件を取得するためには、自分がその債権の債権者であることが確定になった日にちである「確定日付」を取得する必要があり、取得方法は次の2つです。

  • 通知または承諾について公証人役場にて確定日付を交付してもらう
  • 債務者への内容証明郵便による通知の送付日付

内容証明郵便を使用することで対抗要件を取得したということになりますので、必ず相手側に書類を送付する際には内容証明郵便を使用するようにしましょう。

STEP3:金銭の授受

受取日に債権を回収します。

この時も、弁護士などと相談しながら債権の回収を慎重に行いましょう。

債権譲渡は債権回収の実行力を高める手段!

債権譲渡は、財産があまり多くない債務者から債権を回収するのに有効な手段の1つといえます。

債務者の収入源を抑えることができるので、未回収を減らすことができますし、一般的な差し押さえよりも手続きが簡単です。

ただし、無理に行使してしまうと詐害行為とみなされてしまったり、こちら側に損失が産まれてしまったりしますので注意が必要です。

手続き次第では譲渡契約自体が無効になってしまうため、しっかりと弁護士と相談したうえで勧めていくことが重要になります。

債権譲渡に関わる、第三者債権者の資産調査なら探偵事務所SATまで!

債権譲渡をしたとしても、第三者債権者の支払い能力などがなければ、大きな損失に繋がってしまいます。

債権譲渡を行う前には、債権者と第三者債権者の保有資産や支払い能力などを、探偵など民間の調査機関を通じてしっかりと調査しておくことが何より重要です。

探偵事務所SATでは、債務者はもちろんの事、その先の第三者債権者の保有資産や支払い能力を含めた調査を行うことが可能です。

探偵事務所SATでは、これまで数多くの企業や個人の資産調査を行ってきており、隠し財産なども含め、くまなく調査することができます。

債権回収は、相手に返済に当てるだけの資産がなければどうしようもありません。そのため、債権譲渡の場合でも第三者債権者を含む債権者の資産調査が何より重要です。

特に相手が資産を隠しているケースも十分考えられるので、債権譲渡を含む債権回収を検討されている方は、お電話、メールにてまずはご相談ください。

※探偵事務所では調査のみを承っております。資産・財産調査以外の手続きや申請の代行、債権回収の実行などはできません。

警察OBに直接相談できる探偵事務所

受付時間/10:00~20:00

※LINE相談は友達登録をして送られてくるメッセージに返信することで行えます。